クロスオーバー
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おまえのことが一番嫌いだったよ。
貝瀬直は、諏訪洸太郎と談笑している女を見て、そう思った。
女の名前は、夏海麗佳。同じ大学の三年生。
貝瀬が知っている諏訪の元カノの中で、一番苦手だった。容姿端麗で、文武両道で、豪放磊落な性格。貝瀬にとって、最悪の女。
羨ましかった。妬ましかった。何度も呪った。
「貝瀬、あんたはどう思う?」
「洸太郎に賛成」
「ほらな」
「あんたら、付き合ってるからって組むなよな!」
夏海は、特に怒るでもなく、苦笑している。
そういう、過去を過去と割り切れるところも、嫌いだった。
「私、次、講義だわ。じゃあな~」
「おう、またな」
「じゃあねー」
夏海を見送り、こっそりと溜め息をつく。
「元カノって、どういう存在なワケ?」
「元カノっつーか、麗佳は麗佳だろ。アイツと付き合ってたの、一ヶ月だけだしよ」
その一ヶ月、地獄だったんですけど?
貝瀬は、喉元まで出かかった言葉を呑み込んだ。
夏海が、おまえにライターを贈っていたから、オレも、ライターを贈ったんだぜ? 前のライター、捨ててくんねぇかなって。
「直、どうかしたか?」
「いーや。大したことじゃない」
夏海麗佳は、いい奴だと思う。竹を割ったような性格で、からっとしている。
太陽みたいな奴だ。だから、苦手なんだよ。
貝瀬は、じめじめしていて、彼女のようにはなれない。
まだ、あの雨の日に取り残されてんのかなぁ?
◆◆◆
夏海麗佳は、貝瀬直のことを羨ましく思っている。
というか、貝瀬と諏訪の関係性が輝いて見えた。
私には築けないものだ、あれは。
そう思う。
諏訪と夏海は、何故か、別れてからの方が仲が良くなっている。
正直なところ、付き合ったのは酒の勢いだったし、一ヶ月続いたのは、たまたまだろう。
夏海には、未練はない。それは、諏訪もそうだ。
ただ、貝瀬だけが、在りし日の影を見ている。
夏海から言わせれば、「私のことなんて、気にすんなよ!」といったところだが。
貝瀬が返すなら、「それが出来るおまえは、強いんだろうな」である。
けれど、“愛する”ことが分かってからの貝瀬は、もう夏海麗佳を見ても、自分を卑下しない。
いつかの、なんでもない日に、ふたりは話した。
「貝瀬~」
「なんだ?」
「お幸せに!」
「ああ。幸せにするし、幸せにしてもらうよ」
夏海麗佳は、太陽みたいに笑う。その光に照らされても、貝瀬直は、もう焼かれなかった。
目も潰れないし、自身の影が濃くなったとも思わない。
太陽と月を見て、生きていく。
貝瀬直は、諏訪洸太郎と談笑している女を見て、そう思った。
女の名前は、夏海麗佳。同じ大学の三年生。
貝瀬が知っている諏訪の元カノの中で、一番苦手だった。容姿端麗で、文武両道で、豪放磊落な性格。貝瀬にとって、最悪の女。
羨ましかった。妬ましかった。何度も呪った。
「貝瀬、あんたはどう思う?」
「洸太郎に賛成」
「ほらな」
「あんたら、付き合ってるからって組むなよな!」
夏海は、特に怒るでもなく、苦笑している。
そういう、過去を過去と割り切れるところも、嫌いだった。
「私、次、講義だわ。じゃあな~」
「おう、またな」
「じゃあねー」
夏海を見送り、こっそりと溜め息をつく。
「元カノって、どういう存在なワケ?」
「元カノっつーか、麗佳は麗佳だろ。アイツと付き合ってたの、一ヶ月だけだしよ」
その一ヶ月、地獄だったんですけど?
貝瀬は、喉元まで出かかった言葉を呑み込んだ。
夏海が、おまえにライターを贈っていたから、オレも、ライターを贈ったんだぜ? 前のライター、捨ててくんねぇかなって。
「直、どうかしたか?」
「いーや。大したことじゃない」
夏海麗佳は、いい奴だと思う。竹を割ったような性格で、からっとしている。
太陽みたいな奴だ。だから、苦手なんだよ。
貝瀬は、じめじめしていて、彼女のようにはなれない。
まだ、あの雨の日に取り残されてんのかなぁ?
◆◆◆
夏海麗佳は、貝瀬直のことを羨ましく思っている。
というか、貝瀬と諏訪の関係性が輝いて見えた。
私には築けないものだ、あれは。
そう思う。
諏訪と夏海は、何故か、別れてからの方が仲が良くなっている。
正直なところ、付き合ったのは酒の勢いだったし、一ヶ月続いたのは、たまたまだろう。
夏海には、未練はない。それは、諏訪もそうだ。
ただ、貝瀬だけが、在りし日の影を見ている。
夏海から言わせれば、「私のことなんて、気にすんなよ!」といったところだが。
貝瀬が返すなら、「それが出来るおまえは、強いんだろうな」である。
けれど、“愛する”ことが分かってからの貝瀬は、もう夏海麗佳を見ても、自分を卑下しない。
いつかの、なんでもない日に、ふたりは話した。
「貝瀬~」
「なんだ?」
「お幸せに!」
「ああ。幸せにするし、幸せにしてもらうよ」
夏海麗佳は、太陽みたいに笑う。その光に照らされても、貝瀬直は、もう焼かれなかった。
目も潰れないし、自身の影が濃くなったとも思わない。
太陽と月を見て、生きていく。