私という一頁の物語
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東くんに言われて、彼女はここへやって来た。
雨取千佳さん。人を撃てない狙撃手。
それなのに、先日人を撃ってしまったらしい。
「はじめまして、雨取さん。私は、現海砂子。呼ぶ時は砂子でいいよ」
「はじめまして。よろしくお願いします。砂子先生」
「先生なんて付けなくていい」
鳩原さんのことを思い出した。
「はい」
「人を撃ってしまったんだって?」
「そうです…………」
「それで、どう思ったの?」
雨取さんは、自分を抱き締めるような仕草をする。
「人に責められたら、どうしようって思いました」
「……そう」
他人に責められるのが怖い、か。
「それなら君は、今後、どうしたい?」
「仲間のために撃つ、と思います」
「撃てないんじゃないんだね。撃たないでいたんだ?」
「はい」
鳩原さんとは違うなぁ。彼女が誤射した時は、吐いたと聞いているし。雨取さんは、今は落ち着いているように見える。
「砂子さん」
「なに?」
「誰かに、おまえのせいでって言われたら、どうしますか?」
「うーん。私の過失なら、謝る。謝って済むことじゃないなら、謝らない。ひとりで落ち込むかもしれない」
雨取さんは、私を静かに見つめた。そして、お茶を一口飲む。
「どうして、謝らないんですか?」
「謝るのって、赦しを乞うのと同じだから。赦さない権利を奪うことは出来ない」
「そういう考えもあるんですね……」
「もちろん、雨取さんは、したいようにすればいいよ。私の個人的な思いに過ぎないし」
その後、雨取さんは、過去の話をしてくれた。トリオン兵に追いかけられたこと。友達が拐われてしまったこと。
「自罰的になり過ぎない方がいい。それの行き着く先は、何かを害することになるから」
「何かを害する?」
「自分か、他人か。身近な誰かになることが多いかな」
「分かりました。気を付けます」
素直に頷く雨取さんは、真剣な表情をしていた。
自分を赦せないと、自傷に走ったり、他人を傷付けたりするケースがある。私は、そんなことをしてほしくはない。
「信頼出来る人に、ちゃんと頼るんだよ?」
「はい」
そう。別に私でなくてもいい。家族でも友人でも、誰か頼れる人と対話することは重要だ。
親族の中の異端者。友人はいない。そんな自分を少し省みて、どの口が言ってるんだと自嘲する。
「そろそろ、時間だね。さ、食べて食べて」
私は、ウサギを模した和菓子を勧めた。
「いただきます」
彼女が和菓子を食べ終えてから、私はいつもの台詞を言う。
「お疲れ様。何かあったら、いつでもおいで」
「はい。ありがとうございました」
退室を見送り、一息ついた。
自罰感情、か。私に欠けているものかもしれないな。でも、持たなきゃいけないものでもない。
持たずに済むなら、持たないよ、そんなもの。
雨取千佳さん。人を撃てない狙撃手。
それなのに、先日人を撃ってしまったらしい。
「はじめまして、雨取さん。私は、現海砂子。呼ぶ時は砂子でいいよ」
「はじめまして。よろしくお願いします。砂子先生」
「先生なんて付けなくていい」
鳩原さんのことを思い出した。
「はい」
「人を撃ってしまったんだって?」
「そうです…………」
「それで、どう思ったの?」
雨取さんは、自分を抱き締めるような仕草をする。
「人に責められたら、どうしようって思いました」
「……そう」
他人に責められるのが怖い、か。
「それなら君は、今後、どうしたい?」
「仲間のために撃つ、と思います」
「撃てないんじゃないんだね。撃たないでいたんだ?」
「はい」
鳩原さんとは違うなぁ。彼女が誤射した時は、吐いたと聞いているし。雨取さんは、今は落ち着いているように見える。
「砂子さん」
「なに?」
「誰かに、おまえのせいでって言われたら、どうしますか?」
「うーん。私の過失なら、謝る。謝って済むことじゃないなら、謝らない。ひとりで落ち込むかもしれない」
雨取さんは、私を静かに見つめた。そして、お茶を一口飲む。
「どうして、謝らないんですか?」
「謝るのって、赦しを乞うのと同じだから。赦さない権利を奪うことは出来ない」
「そういう考えもあるんですね……」
「もちろん、雨取さんは、したいようにすればいいよ。私の個人的な思いに過ぎないし」
その後、雨取さんは、過去の話をしてくれた。トリオン兵に追いかけられたこと。友達が拐われてしまったこと。
「自罰的になり過ぎない方がいい。それの行き着く先は、何かを害することになるから」
「何かを害する?」
「自分か、他人か。身近な誰かになることが多いかな」
「分かりました。気を付けます」
素直に頷く雨取さんは、真剣な表情をしていた。
自分を赦せないと、自傷に走ったり、他人を傷付けたりするケースがある。私は、そんなことをしてほしくはない。
「信頼出来る人に、ちゃんと頼るんだよ?」
「はい」
そう。別に私でなくてもいい。家族でも友人でも、誰か頼れる人と対話することは重要だ。
親族の中の異端者。友人はいない。そんな自分を少し省みて、どの口が言ってるんだと自嘲する。
「そろそろ、時間だね。さ、食べて食べて」
私は、ウサギを模した和菓子を勧めた。
「いただきます」
彼女が和菓子を食べ終えてから、私はいつもの台詞を言う。
「お疲れ様。何かあったら、いつでもおいで」
「はい。ありがとうございました」
退室を見送り、一息ついた。
自罰感情、か。私に欠けているものかもしれないな。でも、持たなきゃいけないものでもない。
持たずに済むなら、持たないよ、そんなもの。