クロスオーバー
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海底に沈み、貝のようになりたかった。
貝瀬直は、喋り過ぎてしまう男である。
今日は、ボーダーのカウンセリングルームへ行き、カウンセラーの現海砂子と話している。
「好きな奴がいるんです。オレの月明かりなんですよ」
「そう。それは、いいね」
「よくないです。オレは、世界で一番好きな奴を祟ってるんですから」
祟ってる。オレと一緒に末代になってくれなきゃ、嫌だ。
「祟りとは、災厄のことだ。人である君に、なにが出来る?」
「人をひとり殺せます」
「なるほど。君は、そういう役割だと言ってたもんね」
貝瀬は、いつも犯人で、想い人は探偵だった。
そして、砂子もまた、探偵である。
「オレを、解体してください。遠慮はいりません」
「君は、自罰感情が強く、自己嫌悪している。こんな自分が好かれるはずがないと思いながら、相手からの好意が欲しくて堪らない。その一方的な恋は、身を滅ぼすよ」
砂子は、貝瀬に容赦のない言葉を浴びせた。
「砂子さんって、恋愛で苦しむことなんかないんでしょうね」
「今のところはね。友人も恋人もいないし」
「そうやって孤高の存在になれたらよかったのに…………」
「貝瀬くんには向いてないよ。君は、愛されて育ったんだから」
愛。その言葉が、貝瀬に重くのしかかる。
「愛を受けてきたのに、愛を持てないのは何故なんですか?」
「君がそう思ってるから」
要するに、自身の定義付けのせい。
「諏訪を愛せたらいいのに…………」
「愛せるよ。いつかは」
「そうですかね?」
「そうだよ」
君が望むなら、いずれは叶うよ。
砂子は、貝瀬を励ました。
「砂子さんは、他人を愛したことがありますか?」
「ないかな。私は、自分が大好きで、普通の奴だと思ってる」
「オレも、そうなれたらな」
「それなら、自分を肯定してあげなきゃ。ダメでもいい。ろくでもなくてもいい。自分をゆるしてあげて」
「赦せないですよ、こんな社会不適合者」
「社会に出られてるのに?」
「上っ面だけです」
まともになりたい。大人になりたい。普通になりたい。
貝瀬の願いは、自己否定の産物。
20歳の彼は、迷子のように不安そうな顔をした。
貝瀬の両親は、行方不明のまま。彼は、年齢だけは大人になってしまった。
祖父母が、両親の分も祝ってくれたけれど、やはり空席は埋まらないから、辛いままだ。
「みんな、結構上っ面で生きてるけどね」
「もっと上手く生きたいです」
「君の上っ面は、嘘ではないから。そのままでいいよ」
砂子は、バームクーヘンを食べて、紅茶を飲んだ。
ふたりは甘党である。
今だけは、全てを忘れて、甘いものを食べよう。
貝瀬直は、バームクーヘンを手に取った。
貝瀬直は、喋り過ぎてしまう男である。
今日は、ボーダーのカウンセリングルームへ行き、カウンセラーの現海砂子と話している。
「好きな奴がいるんです。オレの月明かりなんですよ」
「そう。それは、いいね」
「よくないです。オレは、世界で一番好きな奴を祟ってるんですから」
祟ってる。オレと一緒に末代になってくれなきゃ、嫌だ。
「祟りとは、災厄のことだ。人である君に、なにが出来る?」
「人をひとり殺せます」
「なるほど。君は、そういう役割だと言ってたもんね」
貝瀬は、いつも犯人で、想い人は探偵だった。
そして、砂子もまた、探偵である。
「オレを、解体してください。遠慮はいりません」
「君は、自罰感情が強く、自己嫌悪している。こんな自分が好かれるはずがないと思いながら、相手からの好意が欲しくて堪らない。その一方的な恋は、身を滅ぼすよ」
砂子は、貝瀬に容赦のない言葉を浴びせた。
「砂子さんって、恋愛で苦しむことなんかないんでしょうね」
「今のところはね。友人も恋人もいないし」
「そうやって孤高の存在になれたらよかったのに…………」
「貝瀬くんには向いてないよ。君は、愛されて育ったんだから」
愛。その言葉が、貝瀬に重くのしかかる。
「愛を受けてきたのに、愛を持てないのは何故なんですか?」
「君がそう思ってるから」
要するに、自身の定義付けのせい。
「諏訪を愛せたらいいのに…………」
「愛せるよ。いつかは」
「そうですかね?」
「そうだよ」
君が望むなら、いずれは叶うよ。
砂子は、貝瀬を励ました。
「砂子さんは、他人を愛したことがありますか?」
「ないかな。私は、自分が大好きで、普通の奴だと思ってる」
「オレも、そうなれたらな」
「それなら、自分を肯定してあげなきゃ。ダメでもいい。ろくでもなくてもいい。自分をゆるしてあげて」
「赦せないですよ、こんな社会不適合者」
「社会に出られてるのに?」
「上っ面だけです」
まともになりたい。大人になりたい。普通になりたい。
貝瀬の願いは、自己否定の産物。
20歳の彼は、迷子のように不安そうな顔をした。
貝瀬の両親は、行方不明のまま。彼は、年齢だけは大人になってしまった。
祖父母が、両親の分も祝ってくれたけれど、やはり空席は埋まらないから、辛いままだ。
「みんな、結構上っ面で生きてるけどね」
「もっと上手く生きたいです」
「君の上っ面は、嘘ではないから。そのままでいいよ」
砂子は、バームクーヘンを食べて、紅茶を飲んだ。
ふたりは甘党である。
今だけは、全てを忘れて、甘いものを食べよう。
貝瀬直は、バームクーヘンを手に取った。