一頁のおまけ

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 延びに延びたデートは、2月が終わりになりそうになった頃になった。
 猫カフェの前で、砂子さんを待つ。

「お待たせ、当真くん」

 現れた砂子さんは、地味めでカジュアルな服を着て、彼女の小柄な体には大きなバッグを肩にかけていた。

「わりと、お久し振り?」
「そうだね。久し振り。元気そうでよかった」
「あんたは、元気ねーな」
「え? そんなことないよ?」

 気付いてねーのか?

「だって、元気なかったら、外出られないし」
「へぇ。じゃ、行きますか」
「うん」

 ふたりで店内に入った。

「いらっしゃいませ。2名様ですね?」
「はい。当真くん、猫がいっぱいいる……」
「そりゃそうだろ」

 砂子さんは、無意識なのか、俺の服の袖を指先で握ってる。どこか、怯えているようにも見えた。

「砂子さん? 大丈夫か?」
「大丈夫…………」

 砂子さんは、動き回る猫たちを見ている。
 ふたりで席に着いて、ドリンクを注文した。

「…………」

 おいおい。ちっとも楽しそうじゃねーな?
 砂子さんは、近くに寄って来た黒猫を観察しているようだった。でも、表情が硬い。あんた、生き物全般好きって言ってたじゃねーか。それが、好きなもんを見る顔かよ。
 ふたりで飲み物を飲んでいると、店員が、「今から、おやつタイムです。ぜひ、猫ちゃんたちにおやつをあげてください」と告げた。

「行こうぜ」
「うん……」

 相変わらず硬い表情のまま、砂子さんは頷く。
 俺たちは、店員からカリカリの餌を受け取った。
 俺は、しゃがんで、サビ猫に手から餌をやる。砂子さんは、それを見てしゃがみ、黒猫の前に餌を入れた器を差し出した。黒猫は、スゲー勢いで餌を食う。
 砂子さんは、ほんの少しビクッとした。

「砂子さん」
「ん?」
「あんた、もしかして、生き物と触れ合うの苦手なのか?」
「……実は、そう。なんか、私が傷付けてしまいそうで」

 人の命を預かれないと言う癖に、カウンセラーをしている。生き物が好きな癖に、命は預かれないし、自分が関わるのも苦手。ちぐはぐだ。

「思ってたより、不器用なんだな」
「面目ない」
「おもしれー」

 それじゃあ、なんで猫カフェに来たんだよ?

「今日、なにしに来たんですか?」
「猫カフェを体験しに」
「体験ねぇ」
「体験が好きなんだ。物語鑑賞も体験だと思ってるし」
「へぇ」

 まあ、それならいいか。この体験、生涯忘れずにいろよな。

「当真くん」
「はい」
「ありがとう。きっと、ひとりじゃ来れなかった」
「……どういたしまして」

 アレ? なんか予定とちげーな?
 なんで、俺がこんなことで嬉しくならねぇといけねぇんだよ。
 でも、あんたが元気になったみたいでよかった。
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