秋津隊おまけ
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オペレーターの冷泉冬樹のことを、心ない者は「死神」と呼んだ。
遠征先で、彼の所属していた秋津隊が全滅したからである。生き残りの冬樹は、精神に深い傷を負った。
毎晩、悪夢を見る。
“豊さん!? チクショー! 行くぞ、恭一!”
“はい!”
“香介! 援護しろ!”
“了解”
“豊さん、待ってろ! 冷泉! 敵はどこだ?!”
四季さん。敵は……敵は見えない…………!
カメレオン使いなんてものではなかった。まるで、幽霊のような敵。
始めに、切り込み隊長の豊久がやられた。ベイルアウトしたのに、首元から血が吹き出る。
次に、豊久の代理でリーダーを務めた四季がベイルアウトし、首から鮮血を流す。その次が、香介。首を切られた体が、遠征艇に戻される。最後に残った恭一は、幽霊を捉えて散弾銃を撃ったが、やはり首を切られて殺された。
オペレーターの冬樹が見た、4人の死体。
いくら前髪で目を覆っていても、焼き付いた光景は剥がれない。
「はっ……! はぁ……はぁ…………!」
深夜、目覚めると、両目から涙が溢れている。そして、上手く息が出来ない。
あれから、落語の死神も楽しめなくなってしまった。全ての“死”が、冬樹には受け付けられないでいる。
4回、葬式に出た。涙を堪える秋津家の男たちを見た。茫然自失している澪川家の者たちを見た。抱き合って泣く夏海夫妻と、唇を噛み締める夏海麗佳を見た。嗚咽を漏らす春日井夫妻を見た。
全てを、見ていることしか出来なかった冬樹は、己の無力さを呪う。
冬樹の家族は、ただ側にいてくれた。“いつも通り”をしてくれた。
でも、心に空いた穴は埋まらない。
親友の水上敏志は、冬樹を気遣い、出来る限り共にいてくれた。
それでも、喪失は埋まらない。
ある日、冬樹のストレスは限界を超えた。
鋏を片手に、鏡の前へ行く。
自身の長い黒髪を、ざくざくと乱雑に切る。
「もう、いらない」
しゃきしゃき。ざくり。
長い前髪はそのままに、冬樹は鋏を動かした。
そして、鋏を喉元に突き付ける。
「みんな死んだ……」
冬樹が流す涙を、他人が見ることはない。
豊久の好きな舞台も、四季の好きなアイドルのライブも、恭一の好きなアニメやマジックショーを見ることも、香介の好きな映画を見ることも、もうない。
秋津隊のみんなに、落語を見てもらうこともない。秋津隊は、もうないのだ。
あの宝石みたいな日々の記憶が、冬樹を苛む。ひとりだけ生き残った罪悪感が、冬樹を蝕む。
愛してたのに。
もう会えないの?
冷泉冬樹は、大切な居場所を失くしてしまった。
遠征先で、彼の所属していた秋津隊が全滅したからである。生き残りの冬樹は、精神に深い傷を負った。
毎晩、悪夢を見る。
“豊さん!? チクショー! 行くぞ、恭一!”
“はい!”
“香介! 援護しろ!”
“了解”
“豊さん、待ってろ! 冷泉! 敵はどこだ?!”
四季さん。敵は……敵は見えない…………!
カメレオン使いなんてものではなかった。まるで、幽霊のような敵。
始めに、切り込み隊長の豊久がやられた。ベイルアウトしたのに、首元から血が吹き出る。
次に、豊久の代理でリーダーを務めた四季がベイルアウトし、首から鮮血を流す。その次が、香介。首を切られた体が、遠征艇に戻される。最後に残った恭一は、幽霊を捉えて散弾銃を撃ったが、やはり首を切られて殺された。
オペレーターの冬樹が見た、4人の死体。
いくら前髪で目を覆っていても、焼き付いた光景は剥がれない。
「はっ……! はぁ……はぁ…………!」
深夜、目覚めると、両目から涙が溢れている。そして、上手く息が出来ない。
あれから、落語の死神も楽しめなくなってしまった。全ての“死”が、冬樹には受け付けられないでいる。
4回、葬式に出た。涙を堪える秋津家の男たちを見た。茫然自失している澪川家の者たちを見た。抱き合って泣く夏海夫妻と、唇を噛み締める夏海麗佳を見た。嗚咽を漏らす春日井夫妻を見た。
全てを、見ていることしか出来なかった冬樹は、己の無力さを呪う。
冬樹の家族は、ただ側にいてくれた。“いつも通り”をしてくれた。
でも、心に空いた穴は埋まらない。
親友の水上敏志は、冬樹を気遣い、出来る限り共にいてくれた。
それでも、喪失は埋まらない。
ある日、冬樹のストレスは限界を超えた。
鋏を片手に、鏡の前へ行く。
自身の長い黒髪を、ざくざくと乱雑に切る。
「もう、いらない」
しゃきしゃき。ざくり。
長い前髪はそのままに、冬樹は鋏を動かした。
そして、鋏を喉元に突き付ける。
「みんな死んだ……」
冬樹が流す涙を、他人が見ることはない。
豊久の好きな舞台も、四季の好きなアイドルのライブも、恭一の好きなアニメやマジックショーを見ることも、香介の好きな映画を見ることも、もうない。
秋津隊のみんなに、落語を見てもらうこともない。秋津隊は、もうないのだ。
あの宝石みたいな日々の記憶が、冬樹を苛む。ひとりだけ生き残った罪悪感が、冬樹を蝕む。
愛してたのに。
もう会えないの?
冷泉冬樹は、大切な居場所を失くしてしまった。