私という一頁の物語
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君は子供なんだから、本来は守られてしかるべきなんだよ。
「諏訪くん、君は一丁の銃なんかじゃないんだ。それを忘れないで」
「……はい」
私の城であるカウンセリングルームへとやって来た諏訪洸太郎くんは、最近ボーダーに入隊し、トリガーを持つに至った少年である。
「私は、君たちの精神を守る義務がある。また、いつでもおいで」
「ありがとうございます、砂子さん」
「それじゃあ、またね」
軽く手を振ると、諏訪くんは一礼して部屋を出て言った。
「あーあ…………」
“俺は、武器としてここにいるんだって。そう思って…………”
彼の言葉を思い出す。
違う。違うよ。違うんだよ。
君たち子供に、その役を押し付けている私たちが、悪いんだ。
デスクからマグカップを手に取り、すっかり冷めた紅茶を飲む。
トリガーを使えば、驚くほどの戦力になる君たちを、私は庇護したい。何者も磨り潰されてはならない。
現海砂子 は、しがないカウンセラーである。全ての人の心を守りたいと考えるなんて、大それたことだ。
それでも、私は、この両の手が届くところには、手を差しのべたい。
美しくなんてない、ただの私という人間の生命。小さな存在。その存在意義を、毎日問われている気がする。
「バカみたい」と、呟いた。
私は、神様でも救世主でも英雄でもないし、兵士にすらなれなかったけれど、役割は果たす。かつて、自分にそう誓ったんだ。
さて。定時上がりと行きますか。
帰路、たまにすれ違う人たちに挨拶をしながら、自宅へと向かう。
「ただいま」
「おかえり」
帰宅すると、今日は仕事が休みだった弟がいた。
「俺は、疲れたよ」
素の一人称である“俺”を使い、率直に話す。
「へー。俺はずっとゲームしてた」
このひとつ下の弟は、可愛げがない。しかし、私の唯一の家族である。だから、まあ、なんやかんやで仲は良い。
病院勤めの弟。ボーダー所属のカウンセラーの私。成人済みの姉弟が、ふたり暮らしをしているのは珍しいようで、よく驚かれる。
身支度を済ませてから、ソファーに寝転び、寛いでいると、メッセージアプリの通知がきた。
『今日は、ありがとうございました』
『気が楽になりました』
『というか、気を張ってたことにも気付いてなかったです』
『助かりました』
アプリを起動して見ると、諏訪くんからだった。
『それなら、よかった』
『また、紅茶でも飲みに来るといいよ』
『お菓子も出そう』
『いつも、お疲れ様』
と、返信をする。
『それは、こっちの台詞ですよ』と、すぐさま返されて、苦笑した。私がもがいてることくらい、君には分かるんだろうね。
今日も一日、生き延びた。明日もまた、生き抜いてやろうじゃないか。
「諏訪くん、君は一丁の銃なんかじゃないんだ。それを忘れないで」
「……はい」
私の城であるカウンセリングルームへとやって来た諏訪洸太郎くんは、最近ボーダーに入隊し、トリガーを持つに至った少年である。
「私は、君たちの精神を守る義務がある。また、いつでもおいで」
「ありがとうございます、砂子さん」
「それじゃあ、またね」
軽く手を振ると、諏訪くんは一礼して部屋を出て言った。
「あーあ…………」
“俺は、武器としてここにいるんだって。そう思って…………”
彼の言葉を思い出す。
違う。違うよ。違うんだよ。
君たち子供に、その役を押し付けている私たちが、悪いんだ。
デスクからマグカップを手に取り、すっかり冷めた紅茶を飲む。
トリガーを使えば、驚くほどの戦力になる君たちを、私は庇護したい。何者も磨り潰されてはならない。
それでも、私は、この両の手が届くところには、手を差しのべたい。
美しくなんてない、ただの私という人間の生命。小さな存在。その存在意義を、毎日問われている気がする。
「バカみたい」と、呟いた。
私は、神様でも救世主でも英雄でもないし、兵士にすらなれなかったけれど、役割は果たす。かつて、自分にそう誓ったんだ。
さて。定時上がりと行きますか。
帰路、たまにすれ違う人たちに挨拶をしながら、自宅へと向かう。
「ただいま」
「おかえり」
帰宅すると、今日は仕事が休みだった弟がいた。
「俺は、疲れたよ」
素の一人称である“俺”を使い、率直に話す。
「へー。俺はずっとゲームしてた」
このひとつ下の弟は、可愛げがない。しかし、私の唯一の家族である。だから、まあ、なんやかんやで仲は良い。
病院勤めの弟。ボーダー所属のカウンセラーの私。成人済みの姉弟が、ふたり暮らしをしているのは珍しいようで、よく驚かれる。
身支度を済ませてから、ソファーに寝転び、寛いでいると、メッセージアプリの通知がきた。
『今日は、ありがとうございました』
『気が楽になりました』
『というか、気を張ってたことにも気付いてなかったです』
『助かりました』
アプリを起動して見ると、諏訪くんからだった。
『それなら、よかった』
『また、紅茶でも飲みに来るといいよ』
『お菓子も出そう』
『いつも、お疲れ様』
と、返信をする。
『それは、こっちの台詞ですよ』と、すぐさま返されて、苦笑した。私がもがいてることくらい、君には分かるんだろうね。
今日も一日、生き延びた。明日もまた、生き抜いてやろうじゃないか。