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機を見ている。
僕は、ずっと機会を窺っていた。
そして、それはついに訪れた。
陽照ニコが、好きな人にフラれたのである。
それは、雨の降る公園でのこと。雨雫に濡れながら、彼女はブランコに座っていた。
「ニコちゃん、どうしたの?」
彼女に傘を差す。
「私、振られちゃったんだ……」
「そう。辛いね」
片想いの相手に、恋人が出来たらしい。
「それじゃあ、僕が、君だけの神様になってあげる」
「神様? どういうこと?」
「神様は凄いんだよ。いつでも君を絶対助けてあげられるんだから」
「そっか。神様か……」
「ニコちゃん、僕と付き合って?」
「……うん」
傷心の彼女を手中に収めるのは、容易いことだった。
「僕、家まで送るよ」
「じゃあ、付き合ってる者同士、一緒に帰ろうか」
あはは。君は本当に可愛いね。
うん。ニコちゃんをゴミみたいに捨てた奴なんて、殺してあげるね。
その後。
初デートの日。
「お待たせ」
「待ってないよ。大丈夫」
僕は、ニコちゃんに微笑んだ。
「ニコちゃん、手ぇ繋ごう」
「あ、うん……」
ふたりで、カフェに向かう。
僕は、紅茶とケーキを注文した。
「葉苗くんは、なんで私と付き合ってくれたの? 同情、とか?」
他人に同情? 僕には、そんな感性はない。
「前から、ニコちゃんのことが好きだったんだよね」
「そうなんだ。気付かなくて、ごめんね」
「ううん。仕方ないよ」
だって、時が来るまで隠してたんだから。
「でも私なんて、女の子としての魅力ないし……」
「女の子としての魅力とかは、僕としてはどうでもよくて」
比較しなくては分からない数値の多い少ないに興味はない。
「僕は、ニコちゃんがニコちゃんだから好きなんだよね」
ニコちゃんは、不思議そうな顔をしている。
「表面的な見た目がーとか、中身がーとかじゃなくて、ニコちゃんっていう存在が僕にとっては特別なんだよね」
「そんなに好きだったんだ……」
驚いた様子の彼女。
「私、葉苗くんの告白も、疑ってたんだよね」
「まあ、仕方がないよね。突然のことだったから」
そんな話をしていると、新たに来店する客があった。
ああ。ニコちゃんを不幸にしてくれた君たちか。
彼女を傷付けたふたりの情報を探る。
「ハナエさん、今度ダブルデートしましょうよ!」
「するなら、このメンツの家の中間地点がいいんじゃない?」
「確かに!」
彼氏、アイトと連絡先を交換する。
アイトと恋人のハナを殺そう。
ゴミクズたちが去った後、僕はニコちゃんに尋ねた。
「ニコちゃん、大丈夫?」
「あー、やっぱ、気付いちゃった?」
「うん」
「私、アイトくんとの年賀状取っておいてて。未練がましいよね……」
「別にいいんじゃない? あ、僕が年賀状を見てみようか? 客観的にいい思い出かどうか見てみる、みたいな」
その年賀状を見れば、アイトの住所が分かるな。
店の外。突然の雨。
「こっからなら、私の家の方が近いし、雨宿りする?」
「ニコちゃんがいいなら、寄らせてもらうよ」
彼女の家にお邪魔する。
「葉苗くん、シャワー浴びて」
「ニコちゃんが先にシャワー浴びな?」
「いいの?」
「その間に年賀状見せてもらおうかな。あ、濡らさないように気を付けるから」
「風邪引かないでね」
「大丈夫だよ」
ニコちゃんの部屋を探り、アイトの住所を入手。
彼女の日記を読んだり、SNSを見たりもした。
しばらくして。ニコちゃんとシャワーを交代した。
それから。
「今日、嵐になるって」
「そうなんだ」
「だから、私の家に泊まってって」
「うん。ありがとう」
「……あなたがしてるのは、ただのゴミ拾いだよ」
ニコちゃんが卑屈な顔をするのが見えた。
「ニコちゃん?」
ソファーに引き倒されて、唇と唇が触れる。
「私、葉苗くんのことを利用してる……」
「僕は、ニコちゃんの神様だからね。好きなだけ利用していいんだよ?」
彼女の頭を撫でた。
「ニコちゃんのふわふわの髪、好きだなぁ」
「ありがとう……」
夜。一緒に寝ていると、「捨てないで……傍にいて…………」と寝言が聴こえた。
「傍にいるよ」と、囁く。
さて。今のうちにSNSを探ろう。
こういう時の複数アカウントだもんね。
ハナの投稿から、アイトの病について探る。
大した情報はない。
女の子を装ってるアカウントで、ニコちゃんをフォローする。猫のルミちゃん目当てのふりをした。
本アカでは、ちゃんと断ってからフォローしよう。
翌日。
「昨日はごめんね、恥ずかしいところを見せて」
「僕は、一応彼氏だからね。どんなニコちゃんを見せても大丈夫だよ」
「うん。またね」
「またね」
ニコちゃんに手を振り、別れた。
アイトの家に下見に行こう。
サムターン回しは出来なそうだった。
色々と探し、鉢植えの下に合鍵があったので持ち出す。
深夜。アイトの家に侵入し、寝室へ行く。
寝ているふたりを紐で縛り上げたが、起きてしまった。
急いで、ガムテープで口を塞ぐ。
ハナの荷物を漁ったところ。アイトって、やっぱり普通の人間じゃないらしい。
目の前でハナを殺して、絶望してもらおう。そうしたら、殺せるようになる。
僕は、ハナに囁いた。
「君には恨みはない。むしろ感謝してあげてもいいけど、アイトを絶望させたいから殺すね」
肉切り包丁でハナを切る。
絶叫を喉を裂いて消す。
気に食わない眼差しを残して、ハナは死んだ。
そして。アイトを肉切り包丁で刺し続けていると、ニコちゃんがやって来た。
「葉苗くん、なんで……?」
うーん。バレちゃったか。
「ああ、そっか。私のため、か……」
ニコちゃんが、傘でアイトを刺す。
刺して、刺して、刺し続けて。
「葉苗くんって、私の神様なんだよね? 神様を守るのはいいことだよね?」
「そうだね」
僕は、ハナを食肉に加工する。
アイトは人間じゃないから、上手く出来なかった。
ニコちゃんの車で、ふたりの死体を運ぶ。
ハナの肉は、実家の精肉屋の地下に保存した。
「それ、食べるの?」
「食べようかなと思ってる」
「美味しいの?」
「分かんない。食べたことないから」
「一緒に食べようか」
「うん、いいよ」
「そっちのなんにもならないゴミは、捨てに行こう」
アイトの死体を、ゴミ山へ運ぶ。
「スコップ持って来たし、埋めようか」
「そうだね」
ふたりで、ゴミを埋めていった。
「葉苗くんのその気持ちは、ゴミにしないで。私が、ちゃんと大切にするから」
「うん」
ニコちゃん、僕との思い出を忘れないでね。
ゴミ山から帰った後。
ニコちゃんに後ろから抱き締められた。
「ニコちゃん?」
「こういうことは、ちゃんと相談して」
「ごめん」
僕は、素直に謝る。
「選ばれる幸せを教えてくれたのは、葉苗くんだからさ」
そうだよね。僕は、君を選んだんだから、君は僕を選ばないとね。
「これからもよろしく、私の神様」
「名前で呼んでほしいなぁ」
「……愛実くん」
さあ。ハナの肉を食べよう。
「ハンバーグにしない? うち、ミンチにする機械あるし」
「じゃあ、作るね」
「うん」
ニコちゃんは、料理が上手い。
「いただきまぁす」
やっぱり、食べると排除したって実感が湧くなぁ。
食後。
皿洗いするニコちゃんに話しかける。
「ねぇ、ニコちゃん」
「なに?」
「そういえば言ってなかったなって」
「え?」
「僕ね、ニコちゃんに会うまで人を好きになったことなかったんだよ」
「えへへ。嬉しい。私が初めてなんだ」
可愛い笑顔。
「何が言いたいかっていうと、僕にとってニコちゃんって本当に特別なんだよ」
目を細めて、彼女を見つめる。
「あの時は、本当に愛実くんが神様みたいに思えて。だから、私にとっても、愛実くんは大切な……特別な、人……」
「うん。ありがとう」
僕らは、特別な恋人同士だね。
ずっと一緒だよ。
僕は、絶対に君を離さないから。
僕のニコちゃん。
僕は、ずっと機会を窺っていた。
そして、それはついに訪れた。
陽照ニコが、好きな人にフラれたのである。
それは、雨の降る公園でのこと。雨雫に濡れながら、彼女はブランコに座っていた。
「ニコちゃん、どうしたの?」
彼女に傘を差す。
「私、振られちゃったんだ……」
「そう。辛いね」
片想いの相手に、恋人が出来たらしい。
「それじゃあ、僕が、君だけの神様になってあげる」
「神様? どういうこと?」
「神様は凄いんだよ。いつでも君を絶対助けてあげられるんだから」
「そっか。神様か……」
「ニコちゃん、僕と付き合って?」
「……うん」
傷心の彼女を手中に収めるのは、容易いことだった。
「僕、家まで送るよ」
「じゃあ、付き合ってる者同士、一緒に帰ろうか」
あはは。君は本当に可愛いね。
うん。ニコちゃんをゴミみたいに捨てた奴なんて、殺してあげるね。
その後。
初デートの日。
「お待たせ」
「待ってないよ。大丈夫」
僕は、ニコちゃんに微笑んだ。
「ニコちゃん、手ぇ繋ごう」
「あ、うん……」
ふたりで、カフェに向かう。
僕は、紅茶とケーキを注文した。
「葉苗くんは、なんで私と付き合ってくれたの? 同情、とか?」
他人に同情? 僕には、そんな感性はない。
「前から、ニコちゃんのことが好きだったんだよね」
「そうなんだ。気付かなくて、ごめんね」
「ううん。仕方ないよ」
だって、時が来るまで隠してたんだから。
「でも私なんて、女の子としての魅力ないし……」
「女の子としての魅力とかは、僕としてはどうでもよくて」
比較しなくては分からない数値の多い少ないに興味はない。
「僕は、ニコちゃんがニコちゃんだから好きなんだよね」
ニコちゃんは、不思議そうな顔をしている。
「表面的な見た目がーとか、中身がーとかじゃなくて、ニコちゃんっていう存在が僕にとっては特別なんだよね」
「そんなに好きだったんだ……」
驚いた様子の彼女。
「私、葉苗くんの告白も、疑ってたんだよね」
「まあ、仕方がないよね。突然のことだったから」
そんな話をしていると、新たに来店する客があった。
ああ。ニコちゃんを不幸にしてくれた君たちか。
彼女を傷付けたふたりの情報を探る。
「ハナエさん、今度ダブルデートしましょうよ!」
「するなら、このメンツの家の中間地点がいいんじゃない?」
「確かに!」
彼氏、アイトと連絡先を交換する。
アイトと恋人のハナを殺そう。
ゴミクズたちが去った後、僕はニコちゃんに尋ねた。
「ニコちゃん、大丈夫?」
「あー、やっぱ、気付いちゃった?」
「うん」
「私、アイトくんとの年賀状取っておいてて。未練がましいよね……」
「別にいいんじゃない? あ、僕が年賀状を見てみようか? 客観的にいい思い出かどうか見てみる、みたいな」
その年賀状を見れば、アイトの住所が分かるな。
店の外。突然の雨。
「こっからなら、私の家の方が近いし、雨宿りする?」
「ニコちゃんがいいなら、寄らせてもらうよ」
彼女の家にお邪魔する。
「葉苗くん、シャワー浴びて」
「ニコちゃんが先にシャワー浴びな?」
「いいの?」
「その間に年賀状見せてもらおうかな。あ、濡らさないように気を付けるから」
「風邪引かないでね」
「大丈夫だよ」
ニコちゃんの部屋を探り、アイトの住所を入手。
彼女の日記を読んだり、SNSを見たりもした。
しばらくして。ニコちゃんとシャワーを交代した。
それから。
「今日、嵐になるって」
「そうなんだ」
「だから、私の家に泊まってって」
「うん。ありがとう」
「……あなたがしてるのは、ただのゴミ拾いだよ」
ニコちゃんが卑屈な顔をするのが見えた。
「ニコちゃん?」
ソファーに引き倒されて、唇と唇が触れる。
「私、葉苗くんのことを利用してる……」
「僕は、ニコちゃんの神様だからね。好きなだけ利用していいんだよ?」
彼女の頭を撫でた。
「ニコちゃんのふわふわの髪、好きだなぁ」
「ありがとう……」
夜。一緒に寝ていると、「捨てないで……傍にいて…………」と寝言が聴こえた。
「傍にいるよ」と、囁く。
さて。今のうちにSNSを探ろう。
こういう時の複数アカウントだもんね。
ハナの投稿から、アイトの病について探る。
大した情報はない。
女の子を装ってるアカウントで、ニコちゃんをフォローする。猫のルミちゃん目当てのふりをした。
本アカでは、ちゃんと断ってからフォローしよう。
翌日。
「昨日はごめんね、恥ずかしいところを見せて」
「僕は、一応彼氏だからね。どんなニコちゃんを見せても大丈夫だよ」
「うん。またね」
「またね」
ニコちゃんに手を振り、別れた。
アイトの家に下見に行こう。
サムターン回しは出来なそうだった。
色々と探し、鉢植えの下に合鍵があったので持ち出す。
深夜。アイトの家に侵入し、寝室へ行く。
寝ているふたりを紐で縛り上げたが、起きてしまった。
急いで、ガムテープで口を塞ぐ。
ハナの荷物を漁ったところ。アイトって、やっぱり普通の人間じゃないらしい。
目の前でハナを殺して、絶望してもらおう。そうしたら、殺せるようになる。
僕は、ハナに囁いた。
「君には恨みはない。むしろ感謝してあげてもいいけど、アイトを絶望させたいから殺すね」
肉切り包丁でハナを切る。
絶叫を喉を裂いて消す。
気に食わない眼差しを残して、ハナは死んだ。
そして。アイトを肉切り包丁で刺し続けていると、ニコちゃんがやって来た。
「葉苗くん、なんで……?」
うーん。バレちゃったか。
「ああ、そっか。私のため、か……」
ニコちゃんが、傘でアイトを刺す。
刺して、刺して、刺し続けて。
「葉苗くんって、私の神様なんだよね? 神様を守るのはいいことだよね?」
「そうだね」
僕は、ハナを食肉に加工する。
アイトは人間じゃないから、上手く出来なかった。
ニコちゃんの車で、ふたりの死体を運ぶ。
ハナの肉は、実家の精肉屋の地下に保存した。
「それ、食べるの?」
「食べようかなと思ってる」
「美味しいの?」
「分かんない。食べたことないから」
「一緒に食べようか」
「うん、いいよ」
「そっちのなんにもならないゴミは、捨てに行こう」
アイトの死体を、ゴミ山へ運ぶ。
「スコップ持って来たし、埋めようか」
「そうだね」
ふたりで、ゴミを埋めていった。
「葉苗くんのその気持ちは、ゴミにしないで。私が、ちゃんと大切にするから」
「うん」
ニコちゃん、僕との思い出を忘れないでね。
ゴミ山から帰った後。
ニコちゃんに後ろから抱き締められた。
「ニコちゃん?」
「こういうことは、ちゃんと相談して」
「ごめん」
僕は、素直に謝る。
「選ばれる幸せを教えてくれたのは、葉苗くんだからさ」
そうだよね。僕は、君を選んだんだから、君は僕を選ばないとね。
「これからもよろしく、私の神様」
「名前で呼んでほしいなぁ」
「……愛実くん」
さあ。ハナの肉を食べよう。
「ハンバーグにしない? うち、ミンチにする機械あるし」
「じゃあ、作るね」
「うん」
ニコちゃんは、料理が上手い。
「いただきまぁす」
やっぱり、食べると排除したって実感が湧くなぁ。
食後。
皿洗いするニコちゃんに話しかける。
「ねぇ、ニコちゃん」
「なに?」
「そういえば言ってなかったなって」
「え?」
「僕ね、ニコちゃんに会うまで人を好きになったことなかったんだよ」
「えへへ。嬉しい。私が初めてなんだ」
可愛い笑顔。
「何が言いたいかっていうと、僕にとってニコちゃんって本当に特別なんだよ」
目を細めて、彼女を見つめる。
「あの時は、本当に愛実くんが神様みたいに思えて。だから、私にとっても、愛実くんは大切な……特別な、人……」
「うん。ありがとう」
僕らは、特別な恋人同士だね。
ずっと一緒だよ。
僕は、絶対に君を離さないから。
僕のニコちゃん。
