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誰が好きとか誰かに恋とか、縁がなかった。
そういったものは、物語の中だけでしか知らない。
遠い世界のお話。熊崎悠大には関係ないもの。
自分の両親の馴れ初めさえ、どこか現実感がなかった。
俺は、ずっとオカルトのことばかり考えて生きてきたから。
俺は昔、怪異と呼ばれるであろうものに襲われたことがある。
そいつから逃げ切れたのは、俺が“走れる”人間だったからだ。
そんなことがあってから、俺は、高校のオカルト研究部の部員たちに、「怪異に襲われた時に生き延びるために必要なのは、鍛えられた肉体だ」と説き、裏では、体育会系オカルト研究部部長なんて呼ばれている。
でも、そんな日々の研鑽に意味はあったのだろうか?
俺は、あいつを救えなかった。
计龍昊。龍は、俺の未来の恋人だった。らしい。
らしい、としか言えないのだが、俺はもう本気でそうなんだと考えている。
きっと、これが恋なんだろう。
龍は、俺を命懸けで助けてくれた。
命だけじゃない。たくさんのものを犠牲にしたのだろう。磨り減る精神。痛む心。たくさんのもの。
思えば、彼はずっと優しかった。
そりゃあ、殴られて誘拐はされたけど。気味の悪いこともあったけど。
俺のために作ってくれたクリームシチューの美味しさとか、俺の頬に触れた指先とか。
忘れられない。忘れられるはずがない。
俺は、そんな彼のために、もう何も返せない。“あの”龍は、炎の中に消えてしまったのだから。
屋敷から飛び出して倒れた俺を起こしたのは、“あの”龍じゃない。分かってる。
俺のことを、愛しそうに「ユウ」と呼んでいた彼は、もういない。分かってる。
それでも、俺は。俺は、龍を離したくない。
俺は、間違いなく龍のことが好きだ。
俺の初恋が叶う日は来るのだろうか?
なあ、龍。俺の初恋を叶えてくれないか?
ふたつの指輪が、物思いに沈む俺の手のひらの上で、きらりと光った。
「クマ~」
「ん?」
クラスメイトが、教室の椅子に座る俺を呼ぶ。
「それなに?」
指輪を指差された。
「俺の宝物」
「指輪が? クマのイメージじゃないなー」
「そうだろうな。初めての恋だから」
「恋!?」
クラスメイトは、驚きを隠しもしない。
「クマが、恋ねぇ。やっとお年頃になったか」
「バカにしてんだろ」
「してないよー。お赤飯炊く?」
「バカにしてんじゃねぇか」
クラスメイトが、けらけら笑う。
「で、なに? いきなりプロポーズでもすんの?」
「そうもいかないから困ってんだよ」
「だよねー。相手、どんな人?」
「……優しい人」
あの優しい声を、腕を、彼を返してほしい。
俺は、指輪を布の袋にしまい、鞄に入れた。
いつか、この指輪を龍に渡す時が来ればいいのに。
そういったものは、物語の中だけでしか知らない。
遠い世界のお話。熊崎悠大には関係ないもの。
自分の両親の馴れ初めさえ、どこか現実感がなかった。
俺は、ずっとオカルトのことばかり考えて生きてきたから。
俺は昔、怪異と呼ばれるであろうものに襲われたことがある。
そいつから逃げ切れたのは、俺が“走れる”人間だったからだ。
そんなことがあってから、俺は、高校のオカルト研究部の部員たちに、「怪異に襲われた時に生き延びるために必要なのは、鍛えられた肉体だ」と説き、裏では、体育会系オカルト研究部部長なんて呼ばれている。
でも、そんな日々の研鑽に意味はあったのだろうか?
俺は、あいつを救えなかった。
计龍昊。龍は、俺の未来の恋人だった。らしい。
らしい、としか言えないのだが、俺はもう本気でそうなんだと考えている。
きっと、これが恋なんだろう。
龍は、俺を命懸けで助けてくれた。
命だけじゃない。たくさんのものを犠牲にしたのだろう。磨り減る精神。痛む心。たくさんのもの。
思えば、彼はずっと優しかった。
そりゃあ、殴られて誘拐はされたけど。気味の悪いこともあったけど。
俺のために作ってくれたクリームシチューの美味しさとか、俺の頬に触れた指先とか。
忘れられない。忘れられるはずがない。
俺は、そんな彼のために、もう何も返せない。“あの”龍は、炎の中に消えてしまったのだから。
屋敷から飛び出して倒れた俺を起こしたのは、“あの”龍じゃない。分かってる。
俺のことを、愛しそうに「ユウ」と呼んでいた彼は、もういない。分かってる。
それでも、俺は。俺は、龍を離したくない。
俺は、間違いなく龍のことが好きだ。
俺の初恋が叶う日は来るのだろうか?
なあ、龍。俺の初恋を叶えてくれないか?
ふたつの指輪が、物思いに沈む俺の手のひらの上で、きらりと光った。
「クマ~」
「ん?」
クラスメイトが、教室の椅子に座る俺を呼ぶ。
「それなに?」
指輪を指差された。
「俺の宝物」
「指輪が? クマのイメージじゃないなー」
「そうだろうな。初めての恋だから」
「恋!?」
クラスメイトは、驚きを隠しもしない。
「クマが、恋ねぇ。やっとお年頃になったか」
「バカにしてんだろ」
「してないよー。お赤飯炊く?」
「バカにしてんじゃねぇか」
クラスメイトが、けらけら笑う。
「で、なに? いきなりプロポーズでもすんの?」
「そうもいかないから困ってんだよ」
「だよねー。相手、どんな人?」
「……優しい人」
あの優しい声を、腕を、彼を返してほしい。
俺は、指輪を布の袋にしまい、鞄に入れた。
いつか、この指輪を龍に渡す時が来ればいいのに。
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