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炎を見つめている。
インターネットの炎上は、いつ見ても面白い。
朝の支度を終えて、いつも通り、教室に一番乗りするべく早くに登校すると、靴箱に封筒が入っていた。
果たし状か?
「S1915」「鉄槌を下す者」「悪魔は近くにいる」
これは、ネームレス・カルトのシリアルコードか。
魔女がどうのこうのとかいうゲームの。
逆張りしてやってなかったが、やってみるか?
とりあえず保留。
珍しく、キャサ先がホームルームに来た。
色々物騒、ね。
三上たちが騒いでいる。
どうやら、俺以外にも謎の封筒を入れられたのがいるみたいだ。
「ネームレス・カルト、誰もやってないの?」
九十九も三上も仁藤もやってないらしい。
「使えないなぁ」と、俺は口を尖らせる。
「要するに、悪魔を殺せばいいの? 人狼ゲームならぬ、悪魔ゲームってこと?」
4人で考え込む。
「よし、三上を吊りで」
「諏訪くん!?」
「冗談、冗談。じゃあ、みんなで始めてみようよ。ゲーム」
4人でコードを入力し、ネームレス・カルトを始めた。
音声入力?
「九十九、大丈夫か?」
ひっくり返った九十九を見る。
シリアルコードを入力すると、黄色いフードの女子がスマホに映った。
「博士じゃない。誰?」
「博士だよ」
「違う。博士じゃない」
「顔見えてんの?」
「うん」
「君は?」
「セラ」
セラとかいう魔女は、人工無能には見えない。アホそうではある。
「名前は?」
「え、あー。光」
「光!」
コイツ、なんか蜂蜜酒とか血とか要求してくるぞ。
蜂蜜のど飴をパシャリと撮ると、のど飴が消えた。
それは、画面の中のセラの手元にある。
ありえないことが起きたのが、恐ろしく、少し面白い。
「開発者とコード配ってる奴、別説ない?」
とか、思い付いたテキトーなことを話す。
放課後。九十九と新聞部の部室へ。
「お疲れーっす」
「いいところに来た!」
「なんすか?」
雨先輩、相変わらずうるせぇな。
「ネームレス・カルトの開発者を明らかにしてくれ!」
「先輩、なんか情報ないすか?」
「ない!」
先輩、ムカつくからセラに食わせちゃおうかな。
ま、やんないけどね。まだ。
その後。保健室に情報収集しに行く。
そこで、先生に色々訊いてみたけど、大した情報はない。
仕方ないから、セラに訊くことにした。
「魔女なの?」
「わかんない」
「その本、なんか大事なもんなの?」
「なんかもってた」
中身は白紙らしい。使えねぇな、コイツ。
「飴食え。包み紙剥がせよ」
「あまーい」
セラは、嬉しそうにしてる。
「光! 笛ほしい!」
「えー? 音楽室にあるかな?」
音楽室へ向かい、横笛をセラにやった。
セラは、楽しそうにそれをピューピュー吹いている。
「セラ、なんか歌覚えてる? 呪文とか詠唱とかないのか?」
「ヒーローさんのうた」
セラは、数年前のニチアサの曲を歌い始めた。
仮面ライダー派か。
セラとルルを向かい合わせてみたら、お互い嫌そうな顔をする。
「セラ、アイツ嫌い?」
「きらーい」
「ルルちゃんとセラちゃんは会わせない方がいいかもしれませんね」
「ああ。もうしないよ」
うーん。どうすっかな。
質問を続けよう。
「セラ、君なんか特技あんの?」
「ヒーローさんよべる」
セラの説明を聞くと、ヒーローというより怪獣みたいだった。
「それ、今呼べんの?」
「よべない。たりない」
「足りない?」
「血とはちみつしゅ!」
「ああ、そういうこと」
帰宅後。
親の蜂蜜酒をくすねた。
「セラ~、蜂蜜酒だぞ~」
蜂蜜酒を撮る。
「はちみつしゅ! はちみつしゅ!」
「君、それ飲むの?」
「のまない」
「そうなんだ」
じゃあ、あとは血かぁ。
翌日。
「保健室でアムカか」
俺は自分の腕を傷付け、「刃物持った奴と喧嘩しました」と嘘をついた。
「諏訪くん、また喧嘩したの?」と、保健室の先生は心配そうにしてる。
せっかくだから、俺がカッコいい感じの記事にしよう!
えー、他校の女子生徒を助けたっと。
その後、新聞部の部室。
「セラ、先輩らに見覚えある?」
「あっ」
「あっ?」
ヤベって顔した?
「セラ~、先輩のどっちに見覚えあるの? どっちも?」
「よくわかんない」
「はあ? 君、ちょっとは貢献しろよ。望むもんやったんだからさ」
「ヒーローさんよぶ?」
「それはまだいい。いや、ヒーローさんってすぐ呼べるの?」
「じかんたりない」
「あーそうなの?」
理科室へ向かう。
魚の標本を発見。九十九に使わせる。
理科準備室の鍵が開かねぇ!
ここ、怪しいんだよな。
物置へ。
九十九が、バールのような物を発見。
ズボンに隠して移動し、手頃な植え込みに隠す。
謎の手記を見付けた。
ドッペルさん?
フルートって、セラにやった笛か?
夜中に学校に行く必要がありそうだ。
九十九ん家に集まって、夜中に抜け出す算段をした。
「九十九、メリケンサックない?」
「……ありましたわ」
「借りるわ」
校内を進む。
べとべとさんがいるのは、廊下だよな。
化物が、いた。
廊下を埋め尽くすほどデカくて、気持ち悪い見た目。
みんな逃げ出したけど、俺には出来なかった。
だって、化物を撮影しなきゃ。
それから、なんとかみんなでべとべとさんを振り切った。
「トイレ行く元気ある奴いる?」
トイレには、花子さんがいるらしいが、みんなにそんな元気はない。
「セラ、さっきのアレ、ヒーローでやっつけられる?」
「むり」
「無理なのか~」
しょうがねぇな。
「どうする? ラーメンとか行く?」
「青春ですわぁ」
「行きたいですっ!」
「行きます……」
「深夜っつったら、ラーメンしょ」
ラーメン屋へ。
「チャーシュー麺だな。醤油で」
各々注文して、俺はセラに尋ねる。
「セラって、ラーメン食えんの?」
「たべれる」
「ま、君にはもうやれないけどね」
「光、ひどい!」
もう撮影回数残ってないし。
深夜の学校に化物が出たって記事を書くか。
九十九は、ラーメンの漫画記事を書いた。
翌朝。
「クソだりぃ」
だけど、ヒーローさんとやらは呼べるようになったらしい。
保健室で寝よ。
そして、放課後。
女子組の報告によると、トイレの花子さんはいなかったようだ。
次は、どこ調べるかねぇ。
とりあえず部室に。
「魔女は成長した?」
「もう全てをめちゃくちゃに出来ますね」
「面白そう、見せて!」
「見物料ください」
「仕方ないなー」と、先輩は、うまい棒を取り出した。
「それじゃ、安過ぎっすね。せめてプレミアムロールケーキくらいないとね」
正直、先輩らにはあんま魔女を見せたくない。
新聞部を後にしてから。
怪しい丸富美先輩に突撃。
テキトーにインタビューしたけど、成果なし。
その後。怪我した仁藤に応急手当てしてやった。
「なんかしら対価寄越せよ」
「え……じゃあ、これで……」
500円とプラスアルファをもらう。
「まあ、クラスメイトだからね。それくらいでもいいよ」
白い部屋に行こうとしたら、雨先輩が来た。
「先輩、僕、怖いんで、手ぇ繋いでください」
「しょうがないわね」
利き手を繋いでもらう。
地下室へ行くと、気味の悪いものがいた。
「うわっ! 化物!」
仁藤が鉤爪に捕まった!
「雨先輩! 仁藤助けますよ! ちゃんと助けてください!」
先輩とふたりがかりで仁藤を助ける。
その後、全員で固まってる三上を引っ張り、逃げた。
「三上と仁藤は、貸しイチな」
雨先輩、俺が手ぇ繋いでなかったら逃げてたぞ。
「じゃあ、感謝の気持ちを」と、三上。
「気持ちはいらん!」
雨先輩の身ぐるみを剥ごう!
グループチャットで提案した。
また化物に襲われるかもしれないからと言って、九十九の家にみんなで泊まり、雨先輩を風呂に入れ、女子組に身体を調べてもらって、俺が衣服を調べるぜ。
「今、洗面所使ってるから、風呂出ないでー!」
「分かったー!」
よっしゃ。雨先輩の服を調べたが、特に怪しいものはなかった。
それから。雨先輩も連れて、深夜ラーメンへ。
九十九の家に戻ってから、女子会に対抗して男子会をする。
「金と権力、どっちが好き?」と、仁藤に訊いてみた。
「金ですかね……」
「ふーん。僕は、どっちも」
「二兎を追う者は一兎をも得ずと言いますが」
「お前、俺に貸しがあること覚えておけよ」
「いずれなんらかの形で、はい……」
翌日。
蜂蜜酒をどうにか密造したいので、やり方を調べたけど、上手く見付からなかった。
三上が、色瀬先輩に話しかけに行くと言うので、俺も行くことに。
ダメ元で話しかけてみよう!
「先輩、ペルム紀について話しましょうよ~」
無視された。
「先輩、禁酒法時代の本ってどこにありますか?」
色瀬先輩は、図書コードを教えてくれた。
蜂蜜酒を密造するぞ!
放課後。新聞部へ。
部長のノーパソ、なんか変?
モニターが、なんか。
ダメだ、分からん。
「セラ、ヒーローさんってすぐは来てくれねぇの?」
「ヒーローさんはおくれてくるから」
「そういう、後手に回るから犯罪がなくならねぇんだよな」
また白い部屋へ行こうか、という話になった。
「あの化物、校庭に引きずり出して戦おうぜ」
「酷過ぎる」
「肉壁にする気?」
そんなこんなで。
白い部屋の前に、雨先輩が待ち構えていた。
「どうする? ありゃ付いて来る気だぞ」
こそこそとセラに話しかける。
「雨先輩、あのアホそうな先輩、アイツ、ヒーローさんで倒せる?」
「うーん。むりかも」
雨先、人間じゃない説。
うん。とにかく、雨先輩と行動すんのは避けたい。
「あのぉ、僕ら白い部屋行こうとしてたんすよ! でもぉ、雨先輩が自分も行くとか言うから、萎えちゃってぇ! 勉強しようとしてんのに勉強しなさいって言ってくる親みてぇだなって、ムカついてぇ!」
「なにそれ!」
「今日は帰ります!」
そういえば、仁藤は全然ナコと話せてないみたいだった。
仁藤からスマホを借りて、ナコに質問責めする。
質問すると「別に」とか言いやがるから、
「別にって言ったら罰金にしようぜ!」と言った。
話をまとめると。
「仁藤のこと好きでも嫌いでもないけど、もらうもんはもらうって、お前それじゃ、仁藤がATMじゃねぇか!」
仁藤が何かぶつぶつ言い出す。
とりあえず、今日は解散。
自室にて。部長の篠崎澪からのメール。部室に来い?
九十九はもう出てしまったらしい。
オカ研ふたりを道連れにしよう。
「あのー、貸しは完全になくしていいので、付いて来てくれませんか?」
「す、諏訪くん?! ど、どうしたの?」と三上。
「僕は、正真正銘の諏訪光という者なんですけど」
夜の新聞部部室へ。
鉤爪の化物。
血塗れの死体が、見える。
部長が、死んだ。
「セラ、ヒーロー呼んで! めちゃくちゃピンチ!」
「はーい」
化物を殴っても効いてる感じがしない。
メリケンサックつけて殴ってもダメ。
九十九のルルが化物の動きを止めてくれてるが、持ちそうにない。
「そろそろ無理ですわぁ。次で仕留めてください」
「うん」と、俺は返事をした。
そして。
「よっしゃ! 殺せ!」
ヒーローが化物を倒した。
「九十九ぉ! ちゃんと倒したから、貸しひとつな!」
財布を投げられる。
「いや、それいらないんだわ。ノーパソ寄越せ」
九十九は、ノーパソを抱き締めて泣いてる。
アルは、「ママ」を喪ったらしい。
「分かった。じゃあ、ノーパソは九十九が調べろ!」
部長は、開発者なんだろう。
翌日。
九十九をハブったLINEグループで、アイツを3人がかりでカウンセリングに行かせることに決めた。
一応、大丈夫そうかな。
放課後。
「光くん、助太刀出来るように来てくれません?」
「オカ研前に待機するなら、貸しイチで」
三上は、カントリーマアムのバリューパックを寄越したので、0.5の貸しにしてやろう。
三上と仁藤は、ヤバい先輩らに監視されるみたいだ。
逃げるか。
三上が一番危ないだろうってことで、俺が護衛することになった。
三上のストーカーをストーカーする俺の図。
三上と新堂の記念撮影しとくか。
あ、俺以外が新堂に捕まってる。
「みんな、何してんだよ! 放課後ラーメンっつったじゃん!」と嘘を言いながら、俺も合流した。
「放課後ラーメン? 私も言っていいかな?」
「いや、一年だけで生きたいんで」
「そうか。分かった」と、新堂は去って行く。
「光くん、ありがとう!」
「貸しイチだな」
「はい、これ」
「じゃがりこじゃダメだな」
「じゃあ、光くんにラーメン奢る」
「セラの分もな」
三上の奢りだ。やったね。
ラーメン屋にて。
「セラ、これがいい。たいわんまぜそばBセット」
「僕は、一番高いラーメン」
撮影したら、皿ごと消えてしまった。
マズい。
一旦、かけとくか、圧。
「皿ぁ? 店員が割って隠してんじゃないの? それをさぁ、客のせいみてぇに詰められるとさぁ! 食べログになんて書いてやろうかなぁ?!」
あ、ダメそう。
普通に弁償させられた。
うちの学校の生徒出禁になって笑う。
悪評記事書いたら、炎上した。
「まあ、アカ消し逃亡だよね。慣れてんだよ、こっちは」
「いつもの流れですわね」
夜中、例の白い部屋へ。
謎のマークが現れた壁を3人で撮ると、奥に行けた。
謎の部屋。人影。
「おい、仁藤! 人影見て来い!」
「はい……」
それは、死体だったようだ。
「見たくねぇから、隠せ!」と、仁藤に命令する。
手記を発見。長い文章だ。
よし。今まで自分たちに起きたことを、文章にまとめよう。記事を制作する要領で。
「うん。分かった。仁藤、ナコにイス人との交信をさせよう。お前だけまだなんもしてねぇだろ」
「ナコさん、頼めますか?」
「……いいわよ」
予想通り、色瀬がイス人とやらだった。
今の新堂は本物じゃないとか、過去に飛ぶ方法とか。色々教えてくれた。
翌日。
自分たちに起きたことをまとめた文章を印刷し、冊子にまとめてから、登校する。
時を遡る儀式をしようとしたところで、偽新堂から三上にメールが届いた。
「使いどころのよく分かんねぇスタンプ送れ!」
「はい! ヤギが踊ってるスタンプ送りました!」
正体を現したキャサ先たちをぶん殴る。
そして。理科準備室を開け、過去へ。
過去の新堂先輩たちがいる。
「こういう者です」
冊子を渡すが、面白い創作だと思われてしまった。
新堂先輩を追いかけ、廊下に出ると、アイツが来る。
出たな、ドッペル。
九十九が簡易火炎放射機で攻撃しようとすると、指先から炎みたいなものが出た。
「君たちは、何かな?」
「あ、こちらどうぞ」と、冊子を渡す。
俺は、勉強は出来ないが、バカじゃない。権力勾配くらい分かる。
「あの、都市に化物がいると人間は生きづらいので、去っていただけると助かります。お願いします」
俺は、頭を下げ、「お前らも頭下げろ!」と3人に言った。
ドッペルからの提案は、こうだ。
“化物たちはそのままで、新堂鮮花にも手を出さない”
“化物たちを引き下げてやるが、新堂鮮花も連れて行く”
俺は、どっちも嫌だと思った。腹立つ。
「ちょっと、4人で考えさせてください」
「いいよ」
小声で会議を始める。
「おい、アイツ質問攻めにして死のうぜ!」
「ええ!?」
「だって、両方胸糞悪いじゃんか」
「私も同感ですわぁ」
「僕は、第三の選択肢を考えます」
「じゃ、とりあえず、俺が質問してみていい?」
「どうぞ」
俺は、ドッペルに向き直る。
「これって、とても重要なことですよね? ですから、もう少し判断材料が欲しいので、質問してもよろしいですか?」
「質問は、ひとつだけだよ」
「あなたにとって、新堂鮮花とはなんですか?」
その答えを聞いて、ああ、そういうことかと思った。
「ど、どういうことですか?」と三上。
「上司が、ちゃんと仕事しろって部下を怒りに来た」
「なるほど……」
「仁藤、なんか思い付いた?」
「僕には、ちょっと……」
「じゃあ、俺が第三の選択肢ってやつを出すわ」
ドッペルを真っ直ぐ見据えて、俺は告げる。
「提案があります」
「なにかな?」
「人間社会に溶け込んでいる新堂鮮花という個体、パートナーがいるんですよ。そのふたりが、幸せの絶頂期にいる時に覚醒したら、面白くないですか?」
「君たちは狂っているよ。君たちが元いた時間軸の私も、君たちのことが好きだったんじゃないかな」
ドッペルは、不気味に笑った。
混沌? とかは退いてくれたし、新堂鮮花は人間社会で生きられる。
あとは、覚醒しないように祈るしかねぇや。
この時間軸には元の俺たちがいるから、学校にも家にも行けなくなったけど、まあ、なんとか生きていけるだろ。
俺は独りじゃないし、何より天才だしな!
インターネットの炎上は、いつ見ても面白い。
朝の支度を終えて、いつも通り、教室に一番乗りするべく早くに登校すると、靴箱に封筒が入っていた。
果たし状か?
「S1915」「鉄槌を下す者」「悪魔は近くにいる」
これは、ネームレス・カルトのシリアルコードか。
魔女がどうのこうのとかいうゲームの。
逆張りしてやってなかったが、やってみるか?
とりあえず保留。
珍しく、キャサ先がホームルームに来た。
色々物騒、ね。
三上たちが騒いでいる。
どうやら、俺以外にも謎の封筒を入れられたのがいるみたいだ。
「ネームレス・カルト、誰もやってないの?」
九十九も三上も仁藤もやってないらしい。
「使えないなぁ」と、俺は口を尖らせる。
「要するに、悪魔を殺せばいいの? 人狼ゲームならぬ、悪魔ゲームってこと?」
4人で考え込む。
「よし、三上を吊りで」
「諏訪くん!?」
「冗談、冗談。じゃあ、みんなで始めてみようよ。ゲーム」
4人でコードを入力し、ネームレス・カルトを始めた。
音声入力?
「九十九、大丈夫か?」
ひっくり返った九十九を見る。
シリアルコードを入力すると、黄色いフードの女子がスマホに映った。
「博士じゃない。誰?」
「博士だよ」
「違う。博士じゃない」
「顔見えてんの?」
「うん」
「君は?」
「セラ」
セラとかいう魔女は、人工無能には見えない。アホそうではある。
「名前は?」
「え、あー。光」
「光!」
コイツ、なんか蜂蜜酒とか血とか要求してくるぞ。
蜂蜜のど飴をパシャリと撮ると、のど飴が消えた。
それは、画面の中のセラの手元にある。
ありえないことが起きたのが、恐ろしく、少し面白い。
「開発者とコード配ってる奴、別説ない?」
とか、思い付いたテキトーなことを話す。
放課後。九十九と新聞部の部室へ。
「お疲れーっす」
「いいところに来た!」
「なんすか?」
雨先輩、相変わらずうるせぇな。
「ネームレス・カルトの開発者を明らかにしてくれ!」
「先輩、なんか情報ないすか?」
「ない!」
先輩、ムカつくからセラに食わせちゃおうかな。
ま、やんないけどね。まだ。
その後。保健室に情報収集しに行く。
そこで、先生に色々訊いてみたけど、大した情報はない。
仕方ないから、セラに訊くことにした。
「魔女なの?」
「わかんない」
「その本、なんか大事なもんなの?」
「なんかもってた」
中身は白紙らしい。使えねぇな、コイツ。
「飴食え。包み紙剥がせよ」
「あまーい」
セラは、嬉しそうにしてる。
「光! 笛ほしい!」
「えー? 音楽室にあるかな?」
音楽室へ向かい、横笛をセラにやった。
セラは、楽しそうにそれをピューピュー吹いている。
「セラ、なんか歌覚えてる? 呪文とか詠唱とかないのか?」
「ヒーローさんのうた」
セラは、数年前のニチアサの曲を歌い始めた。
仮面ライダー派か。
セラとルルを向かい合わせてみたら、お互い嫌そうな顔をする。
「セラ、アイツ嫌い?」
「きらーい」
「ルルちゃんとセラちゃんは会わせない方がいいかもしれませんね」
「ああ。もうしないよ」
うーん。どうすっかな。
質問を続けよう。
「セラ、君なんか特技あんの?」
「ヒーローさんよべる」
セラの説明を聞くと、ヒーローというより怪獣みたいだった。
「それ、今呼べんの?」
「よべない。たりない」
「足りない?」
「血とはちみつしゅ!」
「ああ、そういうこと」
帰宅後。
親の蜂蜜酒をくすねた。
「セラ~、蜂蜜酒だぞ~」
蜂蜜酒を撮る。
「はちみつしゅ! はちみつしゅ!」
「君、それ飲むの?」
「のまない」
「そうなんだ」
じゃあ、あとは血かぁ。
翌日。
「保健室でアムカか」
俺は自分の腕を傷付け、「刃物持った奴と喧嘩しました」と嘘をついた。
「諏訪くん、また喧嘩したの?」と、保健室の先生は心配そうにしてる。
せっかくだから、俺がカッコいい感じの記事にしよう!
えー、他校の女子生徒を助けたっと。
その後、新聞部の部室。
「セラ、先輩らに見覚えある?」
「あっ」
「あっ?」
ヤベって顔した?
「セラ~、先輩のどっちに見覚えあるの? どっちも?」
「よくわかんない」
「はあ? 君、ちょっとは貢献しろよ。望むもんやったんだからさ」
「ヒーローさんよぶ?」
「それはまだいい。いや、ヒーローさんってすぐ呼べるの?」
「じかんたりない」
「あーそうなの?」
理科室へ向かう。
魚の標本を発見。九十九に使わせる。
理科準備室の鍵が開かねぇ!
ここ、怪しいんだよな。
物置へ。
九十九が、バールのような物を発見。
ズボンに隠して移動し、手頃な植え込みに隠す。
謎の手記を見付けた。
ドッペルさん?
フルートって、セラにやった笛か?
夜中に学校に行く必要がありそうだ。
九十九ん家に集まって、夜中に抜け出す算段をした。
「九十九、メリケンサックない?」
「……ありましたわ」
「借りるわ」
校内を進む。
べとべとさんがいるのは、廊下だよな。
化物が、いた。
廊下を埋め尽くすほどデカくて、気持ち悪い見た目。
みんな逃げ出したけど、俺には出来なかった。
だって、化物を撮影しなきゃ。
それから、なんとかみんなでべとべとさんを振り切った。
「トイレ行く元気ある奴いる?」
トイレには、花子さんがいるらしいが、みんなにそんな元気はない。
「セラ、さっきのアレ、ヒーローでやっつけられる?」
「むり」
「無理なのか~」
しょうがねぇな。
「どうする? ラーメンとか行く?」
「青春ですわぁ」
「行きたいですっ!」
「行きます……」
「深夜っつったら、ラーメンしょ」
ラーメン屋へ。
「チャーシュー麺だな。醤油で」
各々注文して、俺はセラに尋ねる。
「セラって、ラーメン食えんの?」
「たべれる」
「ま、君にはもうやれないけどね」
「光、ひどい!」
もう撮影回数残ってないし。
深夜の学校に化物が出たって記事を書くか。
九十九は、ラーメンの漫画記事を書いた。
翌朝。
「クソだりぃ」
だけど、ヒーローさんとやらは呼べるようになったらしい。
保健室で寝よ。
そして、放課後。
女子組の報告によると、トイレの花子さんはいなかったようだ。
次は、どこ調べるかねぇ。
とりあえず部室に。
「魔女は成長した?」
「もう全てをめちゃくちゃに出来ますね」
「面白そう、見せて!」
「見物料ください」
「仕方ないなー」と、先輩は、うまい棒を取り出した。
「それじゃ、安過ぎっすね。せめてプレミアムロールケーキくらいないとね」
正直、先輩らにはあんま魔女を見せたくない。
新聞部を後にしてから。
怪しい丸富美先輩に突撃。
テキトーにインタビューしたけど、成果なし。
その後。怪我した仁藤に応急手当てしてやった。
「なんかしら対価寄越せよ」
「え……じゃあ、これで……」
500円とプラスアルファをもらう。
「まあ、クラスメイトだからね。それくらいでもいいよ」
白い部屋に行こうとしたら、雨先輩が来た。
「先輩、僕、怖いんで、手ぇ繋いでください」
「しょうがないわね」
利き手を繋いでもらう。
地下室へ行くと、気味の悪いものがいた。
「うわっ! 化物!」
仁藤が鉤爪に捕まった!
「雨先輩! 仁藤助けますよ! ちゃんと助けてください!」
先輩とふたりがかりで仁藤を助ける。
その後、全員で固まってる三上を引っ張り、逃げた。
「三上と仁藤は、貸しイチな」
雨先輩、俺が手ぇ繋いでなかったら逃げてたぞ。
「じゃあ、感謝の気持ちを」と、三上。
「気持ちはいらん!」
雨先輩の身ぐるみを剥ごう!
グループチャットで提案した。
また化物に襲われるかもしれないからと言って、九十九の家にみんなで泊まり、雨先輩を風呂に入れ、女子組に身体を調べてもらって、俺が衣服を調べるぜ。
「今、洗面所使ってるから、風呂出ないでー!」
「分かったー!」
よっしゃ。雨先輩の服を調べたが、特に怪しいものはなかった。
それから。雨先輩も連れて、深夜ラーメンへ。
九十九の家に戻ってから、女子会に対抗して男子会をする。
「金と権力、どっちが好き?」と、仁藤に訊いてみた。
「金ですかね……」
「ふーん。僕は、どっちも」
「二兎を追う者は一兎をも得ずと言いますが」
「お前、俺に貸しがあること覚えておけよ」
「いずれなんらかの形で、はい……」
翌日。
蜂蜜酒をどうにか密造したいので、やり方を調べたけど、上手く見付からなかった。
三上が、色瀬先輩に話しかけに行くと言うので、俺も行くことに。
ダメ元で話しかけてみよう!
「先輩、ペルム紀について話しましょうよ~」
無視された。
「先輩、禁酒法時代の本ってどこにありますか?」
色瀬先輩は、図書コードを教えてくれた。
蜂蜜酒を密造するぞ!
放課後。新聞部へ。
部長のノーパソ、なんか変?
モニターが、なんか。
ダメだ、分からん。
「セラ、ヒーローさんってすぐは来てくれねぇの?」
「ヒーローさんはおくれてくるから」
「そういう、後手に回るから犯罪がなくならねぇんだよな」
また白い部屋へ行こうか、という話になった。
「あの化物、校庭に引きずり出して戦おうぜ」
「酷過ぎる」
「肉壁にする気?」
そんなこんなで。
白い部屋の前に、雨先輩が待ち構えていた。
「どうする? ありゃ付いて来る気だぞ」
こそこそとセラに話しかける。
「雨先輩、あのアホそうな先輩、アイツ、ヒーローさんで倒せる?」
「うーん。むりかも」
雨先、人間じゃない説。
うん。とにかく、雨先輩と行動すんのは避けたい。
「あのぉ、僕ら白い部屋行こうとしてたんすよ! でもぉ、雨先輩が自分も行くとか言うから、萎えちゃってぇ! 勉強しようとしてんのに勉強しなさいって言ってくる親みてぇだなって、ムカついてぇ!」
「なにそれ!」
「今日は帰ります!」
そういえば、仁藤は全然ナコと話せてないみたいだった。
仁藤からスマホを借りて、ナコに質問責めする。
質問すると「別に」とか言いやがるから、
「別にって言ったら罰金にしようぜ!」と言った。
話をまとめると。
「仁藤のこと好きでも嫌いでもないけど、もらうもんはもらうって、お前それじゃ、仁藤がATMじゃねぇか!」
仁藤が何かぶつぶつ言い出す。
とりあえず、今日は解散。
自室にて。部長の篠崎澪からのメール。部室に来い?
九十九はもう出てしまったらしい。
オカ研ふたりを道連れにしよう。
「あのー、貸しは完全になくしていいので、付いて来てくれませんか?」
「す、諏訪くん?! ど、どうしたの?」と三上。
「僕は、正真正銘の諏訪光という者なんですけど」
夜の新聞部部室へ。
鉤爪の化物。
血塗れの死体が、見える。
部長が、死んだ。
「セラ、ヒーロー呼んで! めちゃくちゃピンチ!」
「はーい」
化物を殴っても効いてる感じがしない。
メリケンサックつけて殴ってもダメ。
九十九のルルが化物の動きを止めてくれてるが、持ちそうにない。
「そろそろ無理ですわぁ。次で仕留めてください」
「うん」と、俺は返事をした。
そして。
「よっしゃ! 殺せ!」
ヒーローが化物を倒した。
「九十九ぉ! ちゃんと倒したから、貸しひとつな!」
財布を投げられる。
「いや、それいらないんだわ。ノーパソ寄越せ」
九十九は、ノーパソを抱き締めて泣いてる。
アルは、「ママ」を喪ったらしい。
「分かった。じゃあ、ノーパソは九十九が調べろ!」
部長は、開発者なんだろう。
翌日。
九十九をハブったLINEグループで、アイツを3人がかりでカウンセリングに行かせることに決めた。
一応、大丈夫そうかな。
放課後。
「光くん、助太刀出来るように来てくれません?」
「オカ研前に待機するなら、貸しイチで」
三上は、カントリーマアムのバリューパックを寄越したので、0.5の貸しにしてやろう。
三上と仁藤は、ヤバい先輩らに監視されるみたいだ。
逃げるか。
三上が一番危ないだろうってことで、俺が護衛することになった。
三上のストーカーをストーカーする俺の図。
三上と新堂の記念撮影しとくか。
あ、俺以外が新堂に捕まってる。
「みんな、何してんだよ! 放課後ラーメンっつったじゃん!」と嘘を言いながら、俺も合流した。
「放課後ラーメン? 私も言っていいかな?」
「いや、一年だけで生きたいんで」
「そうか。分かった」と、新堂は去って行く。
「光くん、ありがとう!」
「貸しイチだな」
「はい、これ」
「じゃがりこじゃダメだな」
「じゃあ、光くんにラーメン奢る」
「セラの分もな」
三上の奢りだ。やったね。
ラーメン屋にて。
「セラ、これがいい。たいわんまぜそばBセット」
「僕は、一番高いラーメン」
撮影したら、皿ごと消えてしまった。
マズい。
一旦、かけとくか、圧。
「皿ぁ? 店員が割って隠してんじゃないの? それをさぁ、客のせいみてぇに詰められるとさぁ! 食べログになんて書いてやろうかなぁ?!」
あ、ダメそう。
普通に弁償させられた。
うちの学校の生徒出禁になって笑う。
悪評記事書いたら、炎上した。
「まあ、アカ消し逃亡だよね。慣れてんだよ、こっちは」
「いつもの流れですわね」
夜中、例の白い部屋へ。
謎のマークが現れた壁を3人で撮ると、奥に行けた。
謎の部屋。人影。
「おい、仁藤! 人影見て来い!」
「はい……」
それは、死体だったようだ。
「見たくねぇから、隠せ!」と、仁藤に命令する。
手記を発見。長い文章だ。
よし。今まで自分たちに起きたことを、文章にまとめよう。記事を制作する要領で。
「うん。分かった。仁藤、ナコにイス人との交信をさせよう。お前だけまだなんもしてねぇだろ」
「ナコさん、頼めますか?」
「……いいわよ」
予想通り、色瀬がイス人とやらだった。
今の新堂は本物じゃないとか、過去に飛ぶ方法とか。色々教えてくれた。
翌日。
自分たちに起きたことをまとめた文章を印刷し、冊子にまとめてから、登校する。
時を遡る儀式をしようとしたところで、偽新堂から三上にメールが届いた。
「使いどころのよく分かんねぇスタンプ送れ!」
「はい! ヤギが踊ってるスタンプ送りました!」
正体を現したキャサ先たちをぶん殴る。
そして。理科準備室を開け、過去へ。
過去の新堂先輩たちがいる。
「こういう者です」
冊子を渡すが、面白い創作だと思われてしまった。
新堂先輩を追いかけ、廊下に出ると、アイツが来る。
出たな、ドッペル。
九十九が簡易火炎放射機で攻撃しようとすると、指先から炎みたいなものが出た。
「君たちは、何かな?」
「あ、こちらどうぞ」と、冊子を渡す。
俺は、勉強は出来ないが、バカじゃない。権力勾配くらい分かる。
「あの、都市に化物がいると人間は生きづらいので、去っていただけると助かります。お願いします」
俺は、頭を下げ、「お前らも頭下げろ!」と3人に言った。
ドッペルからの提案は、こうだ。
“化物たちはそのままで、新堂鮮花にも手を出さない”
“化物たちを引き下げてやるが、新堂鮮花も連れて行く”
俺は、どっちも嫌だと思った。腹立つ。
「ちょっと、4人で考えさせてください」
「いいよ」
小声で会議を始める。
「おい、アイツ質問攻めにして死のうぜ!」
「ええ!?」
「だって、両方胸糞悪いじゃんか」
「私も同感ですわぁ」
「僕は、第三の選択肢を考えます」
「じゃ、とりあえず、俺が質問してみていい?」
「どうぞ」
俺は、ドッペルに向き直る。
「これって、とても重要なことですよね? ですから、もう少し判断材料が欲しいので、質問してもよろしいですか?」
「質問は、ひとつだけだよ」
「あなたにとって、新堂鮮花とはなんですか?」
その答えを聞いて、ああ、そういうことかと思った。
「ど、どういうことですか?」と三上。
「上司が、ちゃんと仕事しろって部下を怒りに来た」
「なるほど……」
「仁藤、なんか思い付いた?」
「僕には、ちょっと……」
「じゃあ、俺が第三の選択肢ってやつを出すわ」
ドッペルを真っ直ぐ見据えて、俺は告げる。
「提案があります」
「なにかな?」
「人間社会に溶け込んでいる新堂鮮花という個体、パートナーがいるんですよ。そのふたりが、幸せの絶頂期にいる時に覚醒したら、面白くないですか?」
「君たちは狂っているよ。君たちが元いた時間軸の私も、君たちのことが好きだったんじゃないかな」
ドッペルは、不気味に笑った。
混沌? とかは退いてくれたし、新堂鮮花は人間社会で生きられる。
あとは、覚醒しないように祈るしかねぇや。
この時間軸には元の俺たちがいるから、学校にも家にも行けなくなったけど、まあ、なんとか生きていけるだろ。
俺は独りじゃないし、何より天才だしな!
