短編
おれは秋のことが好きだった。
だけど秋は一之瀬のことが好きだった。
一之瀬も秋のことが好きだった。
そんなこと、見ればすぐにわかった。
けれど、一之瀬は死んだ。
一之瀬はおれ達の前から居なくなった。
その事を誰よりも悲しんでいたのは秋だった。当然だ。好きだったんだから。
おれはそんな彼女に何もしてやれなかった。
こんなにそばに居たのに、何も出来なかった。
こういう時、一之瀬なら上手いことやるんだろうな。
ああ、また一之瀬だ。また一之瀬がおれの邪魔をする。
一之瀬は凄い奴だった。凄すぎた。
おれはいつもその背中を追いかけていた。その隣で笑う秋を見ていた。
だから今隣に秋が居たっておれは何も出来ない。
おれはまだ一之瀬に追いついていないんだから。
そして追いつく前に目の前から消えてしまった。おれが永遠に追いつけないまま。
どうすればいい?おれはこれからどうすればいい?おれは今秋にどうすればいい?
おれはずっと、心のどこかで一之瀬が居なくなればいいと思っていた。
一之瀬が居なくなればおれが秋の隣に居られるんだと思っていた。勘違いもはなはだしい。
一之瀬が居たって居なくたっておれは秋に何もしてやれないんじゃないか。秋の隣になんて居られないんじゃないか。
だからおれは秋の隣を逃げ出した。ずっと憧れていた場所だったはずなのに、あっさりその場所を放棄した。
おれが憧れていたのはきっと、彼女の隣じゃなくて一之瀬自身だったんだ。
そしておれは、一之瀬になることも諦めた。
一之瀬に憧れて隣の秋を少し離れたところから見守る。きっとそれがおれの居場所だったんだ。
雷門中で秋と再会して、やっぱりおれは秋のことが好きなのだと気付いた。
一之瀬の代わりに鬼道さんに憧れて、その一方で少し離れたところで秋を見守るというこのポジションが戻って来たことが嬉しかった。
けれど、秋や雷門のみんなを裏切っているという事実に広がっていく罪悪感には勝てなくて、おれは鬼道さんへの憧れを諦めた。
あの頃からおれは諦めることが得意になっていた。
だからおれは一之瀬が戻って来て、また秋を諦める生活を送った。
昔はまだ一之瀬に勝ちたい思いもあったけれど、今はそんな気も起きなくなっていた。
一之瀬と秋はお似合いだ。
そんなこと、昔からわかっていた。
◇◆◇
俺は、秋のことが好きだった。
秋も俺のことが好きだった。
そして土門も秋のことが好きだった。
だけど俺はそんなこと気にしなかった。
秋が俺のことを好きなんだから遠慮することはないと思ってた。
譲るつもりもなかったし、土門だって諦めているのが見てわかったから。
秋を幸せにしてやることが、土門のためでもあると思っていた。
だけど俺は秋のそばに居られなくなった。
事故だった。
また秋に会いたくて、そばに居たくて、必死に努力した。
そして、また会えた。嬉しかった。
近くには土門も居て、昔と何も変わらないんだと思っていた。
けれど、違っていた。
秋が変わってしまっていた。
昔は俺のことを憧れと好意の視線で見ていたのに、それが足りない。
どちらも確かにあったけれど、どちらかといえば憧れの視線は円堂に対して向ける方が強かったし、何より好意の視線が土門に向けられていた。しかもあいつはそれに気付いていない。
これほど悔しいことはなかった。
離れている間に秋の気持ちが変わってしまっていたことも、秋を幸せに出来るはずの土門があろうことか俺に秋を譲ろうとしていることも。
諦めたくない。
秋を幸せにしてやれない奴なんかに秋を渡したくない。
だから俺は、正面切って土門に勝負を挑んだ。
「土門!
俺は、秋のことが好きだ!大好きだ!
でも、お前のことだって大好きだ!
だからお前には秋のことを諦めてほしくない。
俺と、秋をかけて勝負しろ!土門!」
俺は優しくなんかないから秋の気持ちは教えてやらないけど、秋の幸せを思うなら土門に諦めさせるわけにはいかない。
それでもお前が秋を諦めるつもりなら、俺が秋を振り向かせるしかない。
だから俺も諦めない。
となると土門には張り合ってもらわないと面白くない。
だからまずは、土門をその気にさせないといけない。
昔は欠片も相手にしてなかった土門が、こんなに強敵になるとは思わなかった。
そして、秋の好意を向けられる土門がこんなにも羨ましく思えるとも。
まったく。
少しは気付けよ、馬鹿野郎!
「秋を諦める」ってだじゃれみたいだよねって書いてる途中で何回も思った……。
秋は昔は一之瀬が好きだったんだけど、一之瀬が居なくなって慰めようとしてくれた土門に惹かれて、帝国のスパイだったのに雷門のために頑張ってくれた土門を好きになった。
一之瀬はそれに気付いていて、逆に土門は秋はまだ一之瀬のことが好きだと思ってる。
そんな三角関係とか、萌える。
ちなみに一秋より土秋のが好きです。
あ、円秋はまた別次元で好きです。
一リカはそんなに離れてないか。
ふふふ、広がれ土秋の輪!
そしてごめん西垣!
君のこともちゃんとアメリカ組の一人だと思ってるから安心して!
ただ、あんまり恋愛関係には関わらないと思ってるだけよ。
>>2010.12.5
だけど秋は一之瀬のことが好きだった。
一之瀬も秋のことが好きだった。
そんなこと、見ればすぐにわかった。
けれど、一之瀬は死んだ。
一之瀬はおれ達の前から居なくなった。
その事を誰よりも悲しんでいたのは秋だった。当然だ。好きだったんだから。
おれはそんな彼女に何もしてやれなかった。
こんなにそばに居たのに、何も出来なかった。
こういう時、一之瀬なら上手いことやるんだろうな。
ああ、また一之瀬だ。また一之瀬がおれの邪魔をする。
一之瀬は凄い奴だった。凄すぎた。
おれはいつもその背中を追いかけていた。その隣で笑う秋を見ていた。
だから今隣に秋が居たっておれは何も出来ない。
おれはまだ一之瀬に追いついていないんだから。
そして追いつく前に目の前から消えてしまった。おれが永遠に追いつけないまま。
どうすればいい?おれはこれからどうすればいい?おれは今秋にどうすればいい?
おれはずっと、心のどこかで一之瀬が居なくなればいいと思っていた。
一之瀬が居なくなればおれが秋の隣に居られるんだと思っていた。勘違いもはなはだしい。
一之瀬が居たって居なくたっておれは秋に何もしてやれないんじゃないか。秋の隣になんて居られないんじゃないか。
だからおれは秋の隣を逃げ出した。ずっと憧れていた場所だったはずなのに、あっさりその場所を放棄した。
おれが憧れていたのはきっと、彼女の隣じゃなくて一之瀬自身だったんだ。
そしておれは、一之瀬になることも諦めた。
一之瀬に憧れて隣の秋を少し離れたところから見守る。きっとそれがおれの居場所だったんだ。
雷門中で秋と再会して、やっぱりおれは秋のことが好きなのだと気付いた。
一之瀬の代わりに鬼道さんに憧れて、その一方で少し離れたところで秋を見守るというこのポジションが戻って来たことが嬉しかった。
けれど、秋や雷門のみんなを裏切っているという事実に広がっていく罪悪感には勝てなくて、おれは鬼道さんへの憧れを諦めた。
あの頃からおれは諦めることが得意になっていた。
だからおれは一之瀬が戻って来て、また秋を諦める生活を送った。
昔はまだ一之瀬に勝ちたい思いもあったけれど、今はそんな気も起きなくなっていた。
一之瀬と秋はお似合いだ。
そんなこと、昔からわかっていた。
◇◆◇
俺は、秋のことが好きだった。
秋も俺のことが好きだった。
そして土門も秋のことが好きだった。
だけど俺はそんなこと気にしなかった。
秋が俺のことを好きなんだから遠慮することはないと思ってた。
譲るつもりもなかったし、土門だって諦めているのが見てわかったから。
秋を幸せにしてやることが、土門のためでもあると思っていた。
だけど俺は秋のそばに居られなくなった。
事故だった。
また秋に会いたくて、そばに居たくて、必死に努力した。
そして、また会えた。嬉しかった。
近くには土門も居て、昔と何も変わらないんだと思っていた。
けれど、違っていた。
秋が変わってしまっていた。
昔は俺のことを憧れと好意の視線で見ていたのに、それが足りない。
どちらも確かにあったけれど、どちらかといえば憧れの視線は円堂に対して向ける方が強かったし、何より好意の視線が土門に向けられていた。しかもあいつはそれに気付いていない。
これほど悔しいことはなかった。
離れている間に秋の気持ちが変わってしまっていたことも、秋を幸せに出来るはずの土門があろうことか俺に秋を譲ろうとしていることも。
諦めたくない。
秋を幸せにしてやれない奴なんかに秋を渡したくない。
だから俺は、正面切って土門に勝負を挑んだ。
「土門!
俺は、秋のことが好きだ!大好きだ!
でも、お前のことだって大好きだ!
だからお前には秋のことを諦めてほしくない。
俺と、秋をかけて勝負しろ!土門!」
俺は優しくなんかないから秋の気持ちは教えてやらないけど、秋の幸せを思うなら土門に諦めさせるわけにはいかない。
それでもお前が秋を諦めるつもりなら、俺が秋を振り向かせるしかない。
だから俺も諦めない。
となると土門には張り合ってもらわないと面白くない。
だからまずは、土門をその気にさせないといけない。
昔は欠片も相手にしてなかった土門が、こんなに強敵になるとは思わなかった。
そして、秋の好意を向けられる土門がこんなにも羨ましく思えるとも。
まったく。
少しは気付けよ、馬鹿野郎!
「秋を諦める」ってだじゃれみたいだよねって書いてる途中で何回も思った……。
秋は昔は一之瀬が好きだったんだけど、一之瀬が居なくなって慰めようとしてくれた土門に惹かれて、帝国のスパイだったのに雷門のために頑張ってくれた土門を好きになった。
一之瀬はそれに気付いていて、逆に土門は秋はまだ一之瀬のことが好きだと思ってる。
そんな三角関係とか、萌える。
ちなみに一秋より土秋のが好きです。
あ、円秋はまた別次元で好きです。
一リカはそんなに離れてないか。
ふふふ、広がれ土秋の輪!
そしてごめん西垣!
君のこともちゃんとアメリカ組の一人だと思ってるから安心して!
ただ、あんまり恋愛関係には関わらないと思ってるだけよ。
>>2010.12.5
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