短編
※24話のネタバレを含みます
「やあ」
いつも通り1人でサッカーをしていたら知らない男に声をかけられた。
ふわりと乗った赤い髪と切れ長の目に眼鏡をかけ、スーツを着崩すという一見どこぞの詐欺師みたいに見える格好をしていた。
見た目からして怪しすぎる。
「狩屋マサキくん、だよね」
何でオレの名前を知ってるんだ。
不信感しか感じない男を思い切り睨みつけたが全く効いていないらしく、ニコニコと笑顔を貼りつけたその男はオレに手を差し出した。
「君のことは瞳子姉さんに聞いてるよ。あ、俺、基山ヒロトって言うんだ。よろしく」
お日さま園の経営者の弟だったのか。とりあえず不審者じゃなさそうだ。
経営者の関係者に逆らってあそこに置いてもらえなくなったら困るからと仕方なく握手には応じておいた。
大人には逆らわない。
それがこの世界で生きていくための最低限のルールだ。
もういいだろうと手を離そうとしたら、逆に少し引かれた。
「!?」
何かと思ってるうちに反対の手がオレの頭の方に伸びてきたのが見えた。
何か、怒らせるようなことをしただろうか。
オレは反射的に身構えて目をきつく瞑った。
だけど、想像してたような衝撃は来なかった。
代わりに来たのは、柔らかく頭を撫でられる感触。
呆気に取られてその基山とかいう男を見上げれば、変わらずに優しそうに微笑んでいた。
それに何も返せないオレに、基山は少し寂しそうに言った。
「他人は、信用できないかい?」
……当たり前だ。
この世界じゃ、少しでも隙を見せた方が負けるんだ。
信じて騙される方が馬鹿なんだ。
あたたかいからって、優しいからって、信じたりなんかするわけがない。
だからオレはまた睨みつけた。
その全てを拒絶した。
だけど、そいつは何とも感じてないかのように笑った。
何で笑うんだ。
意味がわからない。
「ねぇ、マサキくん」
そして、その口から出てきた言葉は。
「俺と一緒に暮らさない?」
もっと意味がわからなかった。
◆◇◆
「狩屋、マサキくん?」
「ええ」
久しぶりに帰ってきたお日さま園。そこにいる男の子について、俺は姉さんに相談されていた。
他人を信じないで全てを拒絶する。
大抵の子はそのうちなんだかんだで園に溶け込んで馴染んでいくものだけど、彼は一筋縄にはいかないらしい。
もう何年もその状態が続いていて、このままではいけない、ということらしい。
「こういうことは本人にとっても難しいことだから、どうしたらいいのか……」
「……じゃあ、いっそ環境を変えちゃうっていうのはどうかな?」
「え?」
環境が変われば本人の世界も変わって見える、というのは本当の話だ。
だって俺自身がそうだったから。
円堂くんに出会ってから、俺の世界はガラリと変わった。
父さんしかいなかった俺の世界。
それがたった一つの出会いで一変した。
家族ができた。友達ができた。仲間ができた。好きな人もできた。
あのままだったらきっと一生掴めなかった、いや、“気付かなかった”と思う。
本当に大切な、幸せなことに。
すぐそばにありながら、気付かなかったんだ。
「……円堂くんなら、きっと」
「円堂くん?」
円堂くんは今、雷門中でサッカー部の監督をしているらしい。
そのサッカー部の子と話を何度かしたことがあるから確かだろう。
「そう、雷門に行けば天馬くんにも会えるからね」
「天馬、くん……?」
「雷門中サッカー部の子で、マサキくんと同じ1年生なんだよ。きっと友達になれると思う」
「サッカー……は、いいとしてもあの子、部活になんて入るのかしら?」
「それは無理やり入れさせちゃえばいいよ」
「……あなたってたまに強引よね」
呆れながら言う姉さんには、苦笑いしか返せない。
「じゃあ、マサキくんはしばらくは俺の方で預からせてもらうよ」
「大丈夫なの?いきなり二人暮らしなんて……」
「大丈夫。なんとかなるよ」
マサキくんと同い年の友達を思い浮かべながら、いつかマサキくんが家に天馬くんを連れてきてくれるようになればいいのにな、と思った。
マサキはヒロトの家で暮らしてればいい。
ヒロトにたいしては全く取り繕わないツンデレならいい。
家の中では割とだらしないヒロトをしかる主夫ならいい。エプロン絶対似合う。
そのうち天馬が乗り込んできて「お前ら知り合いだったのかよ!」ってなって、そしてヒロトはそれを微笑ましく見守ればいい。
マサきやま?きやマサキ?
とにかくマサヒロ(not人名)おいしすぎる増えろおおおおおお!!!!!
>>2011.10.20
「やあ」
いつも通り1人でサッカーをしていたら知らない男に声をかけられた。
ふわりと乗った赤い髪と切れ長の目に眼鏡をかけ、スーツを着崩すという一見どこぞの詐欺師みたいに見える格好をしていた。
見た目からして怪しすぎる。
「狩屋マサキくん、だよね」
何でオレの名前を知ってるんだ。
不信感しか感じない男を思い切り睨みつけたが全く効いていないらしく、ニコニコと笑顔を貼りつけたその男はオレに手を差し出した。
「君のことは瞳子姉さんに聞いてるよ。あ、俺、基山ヒロトって言うんだ。よろしく」
お日さま園の経営者の弟だったのか。とりあえず不審者じゃなさそうだ。
経営者の関係者に逆らってあそこに置いてもらえなくなったら困るからと仕方なく握手には応じておいた。
大人には逆らわない。
それがこの世界で生きていくための最低限のルールだ。
もういいだろうと手を離そうとしたら、逆に少し引かれた。
「!?」
何かと思ってるうちに反対の手がオレの頭の方に伸びてきたのが見えた。
何か、怒らせるようなことをしただろうか。
オレは反射的に身構えて目をきつく瞑った。
だけど、想像してたような衝撃は来なかった。
代わりに来たのは、柔らかく頭を撫でられる感触。
呆気に取られてその基山とかいう男を見上げれば、変わらずに優しそうに微笑んでいた。
それに何も返せないオレに、基山は少し寂しそうに言った。
「他人は、信用できないかい?」
……当たり前だ。
この世界じゃ、少しでも隙を見せた方が負けるんだ。
信じて騙される方が馬鹿なんだ。
あたたかいからって、優しいからって、信じたりなんかするわけがない。
だからオレはまた睨みつけた。
その全てを拒絶した。
だけど、そいつは何とも感じてないかのように笑った。
何で笑うんだ。
意味がわからない。
「ねぇ、マサキくん」
そして、その口から出てきた言葉は。
「俺と一緒に暮らさない?」
もっと意味がわからなかった。
◆◇◆
「狩屋、マサキくん?」
「ええ」
久しぶりに帰ってきたお日さま園。そこにいる男の子について、俺は姉さんに相談されていた。
他人を信じないで全てを拒絶する。
大抵の子はそのうちなんだかんだで園に溶け込んで馴染んでいくものだけど、彼は一筋縄にはいかないらしい。
もう何年もその状態が続いていて、このままではいけない、ということらしい。
「こういうことは本人にとっても難しいことだから、どうしたらいいのか……」
「……じゃあ、いっそ環境を変えちゃうっていうのはどうかな?」
「え?」
環境が変われば本人の世界も変わって見える、というのは本当の話だ。
だって俺自身がそうだったから。
円堂くんに出会ってから、俺の世界はガラリと変わった。
父さんしかいなかった俺の世界。
それがたった一つの出会いで一変した。
家族ができた。友達ができた。仲間ができた。好きな人もできた。
あのままだったらきっと一生掴めなかった、いや、“気付かなかった”と思う。
本当に大切な、幸せなことに。
すぐそばにありながら、気付かなかったんだ。
「……円堂くんなら、きっと」
「円堂くん?」
円堂くんは今、雷門中でサッカー部の監督をしているらしい。
そのサッカー部の子と話を何度かしたことがあるから確かだろう。
「そう、雷門に行けば天馬くんにも会えるからね」
「天馬、くん……?」
「雷門中サッカー部の子で、マサキくんと同じ1年生なんだよ。きっと友達になれると思う」
「サッカー……は、いいとしてもあの子、部活になんて入るのかしら?」
「それは無理やり入れさせちゃえばいいよ」
「……あなたってたまに強引よね」
呆れながら言う姉さんには、苦笑いしか返せない。
「じゃあ、マサキくんはしばらくは俺の方で預からせてもらうよ」
「大丈夫なの?いきなり二人暮らしなんて……」
「大丈夫。なんとかなるよ」
マサキくんと同い年の友達を思い浮かべながら、いつかマサキくんが家に天馬くんを連れてきてくれるようになればいいのにな、と思った。
マサキはヒロトの家で暮らしてればいい。
ヒロトにたいしては全く取り繕わないツンデレならいい。
家の中では割とだらしないヒロトをしかる主夫ならいい。エプロン絶対似合う。
そのうち天馬が乗り込んできて「お前ら知り合いだったのかよ!」ってなって、そしてヒロトはそれを微笑ましく見守ればいい。
マサきやま?きやマサキ?
とにかくマサヒロ(not人名)おいしすぎる増えろおおおおおお!!!!!
>>2011.10.20
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