このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

短編

カチカチカチカチ。
静かな部屋に時計の音が響く。
小さな寝息を立てて眠る茂人はピクリとも動かない。
死んでしまったんじゃないかと不安になってその体に顔を寄せて見れば、とくとくと確かに聞こえる生きてる証。
ホッと息をついて顔を上げると、そこには変わらない眠り続ける茂人がいた。
まるで眠り姫のようだと思った。
園で読まれているのを少し聞いただけだし興味も特になかったから内容はよく知らないけれど、確かこういうのは王子様のキスで目覚めるものだったはずだ。
オレが王子様になれるかどうかなんて知らないけれど、そっと顔を寄せて眠る茂人にキスをした。
あまり深いことは考えていなかった。

「……ん……」
声が聞こえて、唇を離した。
顔を覗き込めば、全く動かなかった茂人がうっすらと目を開いてぼんやりとオレをその瞳に映した。
「…………はる、や?」
本当に、起きた。
おとぎ話も案外嘘ばっかりじゃないのかもしれない。

「大丈夫か?」
「うん。……ごめんね、全然気付かなくって」
そう言って起き上がろうとする茂人の肩を押さえつけた。

「いいから寝てろって。ここに居てやるから」
「……うん」
まだ熱っぽい茂人は、でもしっかりと笑った。



 ◆◇◆


時が戻ればいいと願っているわけじゃない。
でもあの時はオレしか茂人を知らなくて、茂人も多分オレしか知らなかった。
茂人にとってはオレだけが特別、というちょっとした優越感にも似た何かを持っていた気はする。


けれど今はそれもない。
茂人は強くなった。エイリア石のおかげで。
茂人はあの部屋から外に出て、オレ以外の世界を知った。知ってしまった。

そして何より。

「バーン様」

遠かった。
上司と、部下。
オレ達の関係は変わってしまっていた。


この道を父さんのために選んだのはオレで、茂人を巻き込んだのもオレだった。
だからこれもその代償だったのかもしれない。
何も映さない、何の色も見せない茂人の瞳は、何を思ってオレを見ているんだろうか。
あの頃とは違うのは確かだった。

遠い。何もかも。
茂人も、風介も、ヒロトも……父さんも。
何もかもが遠かった。
端から見れば憐れみの、けれどオレにとってみればとても幸せなあの頃は、今から考えれば遠すぎた。


時が戻ればいいとは思わない。
オレは、選択を間違えたなんて絶対に思わない。思いたくない。
間違ってない。オレは正しい。
ちゃんと正しい未来に向かってる。


時は進むものだから。これからも進んでいくものだから。
戻らなくていい。だからどうか進んでくれ。
その先にあるものが、父さんもみんなも笑い合って、茂人がオレを名前で呼んで近くにいてくれるような、みんなが幸せになれる未来であることを、どうか願わせて。


それは、子供でいることを捨てられないちっぽけなオレの、小さくてとても大きな願いだった。




6月10日は時の記念日です。
あの大化の改新の中大兄皇子こと天智天皇が日本で初めて水時計を使った日です。中学の頃にこのことを知って以来なんとなく大好きな日です。ていうかこの辺りの日本史大好き。

そんなわけでちょっと「時」を引っ掛けたヒバンの日です。
時の記念日自体は全く関係ないですにこ!


前回の茂晴の日はかけらも3期にかすらなかったんであえて今回やろうかとも思ったけどやめといた。
ていうか何このよくわからない話。後半茂人関係なくないか?
イチャつくだけの話とかも書きたい。


今度はレアンも絡ませたいな。
トリオ大好き。特に男→男←女な仲良しトリオね。大好き。


真人の誘惑に負けてブリザード買っちゃったけど、やっぱりプロミネンス大好き!!


>>2011.6.10

18/35ページ