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短編

俺は、ジェネシスという地位に興味はない。
何故なら俺はみんなの言う「父さん」に褒められたところで何とも思わないからだ。

あの人がすごいことはわかる。
俺だってあの人のおかげでこうして自由に動けるようになって、普通にサッカーが出来るようになったんだ。感謝してないわけじゃない。
でもその為に、例えばグラン様のように、全てを捧げることはないだろう。


もしも俺が誰かに全てを捧げることがあるとしたらその相手は「父さん」ではなく俺の太陽、晴矢しかいない。
俺が晴矢の存在にどれだけ救われてきたかなんて、きっと誰にも伝わることはないだろう。
俺は心の底から晴矢の存在に感謝している。
晴矢が「力を貸してほしい」と望んだから俺は晴矢、いや、「バーン様」に従い、プロミネンスの一員となった。
そして、プロミネンスとダイヤモンドダストの新たな複合チーム、カオスの一人として雷門中と試合することも決まった。

この計画が破綻に向かっている予感はしている。
けれどバーン様は諦めないだろう。
だってバーン様は、晴矢は俺とは違って「父さん」に認められたい一人だから。
だから俺も従う。
俺の全ては晴矢のためにある。



「ちょっと待ちなさい」



そんなことを考えて改めて覚悟を決めていた時、急に声をかけられて立ち止まった。

「君は……」

確かダイヤモンドダストの……女の子。
あれ、どうしよう。名前が出て来ない。ここまで出かかってるのに。絶対知ってるはずなのに。
半端に気持ち悪い俺の心情を察してくれたのか、それとも中々名前を呼ばないことに痺れを切らしたのか、その子は自ら名乗ってくれた。

「アイシーよ」
「ああ、アイキューの妹……」

アイキューには何故かよく因縁をつけられる。その一貫で妹のこともやれ優秀だのやれ可愛いだの教え込まれていた。

「……それで、そのアイキューの妹が俺に何か用?」
「アイシーよ!」

アイシーは怒ったように訂正した。そんなに兄のおまけ扱いが嫌なのか。アイキューはあんなに妹について熱弁してたのに……哀れ。

「……あなたがヒート……」
「アイキューから聞いてたの?」

アイキューのせいで何となく知り合いのような感覚になって、にこやかにそう尋ねた瞬間、アイシーに胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられた。

「何へらへら笑ってんのよ」
「え?」

思い切り睨まれてまず思ったことは「兄とは真逆のタイプなんだな~」ということだった。
正直プロミネンスで荒々しいのは慣れているので怖くはない。
むしろこんなもの、可愛らしく感じるくらいだった。


どうしようかと思考を巡らせていたら、ふと俺を掴みあげたその手が小さく震えていて、俺は驚くことになった。
アイシーは俺を睨み付けながら、瞳を潤ませた。
その手が、声が、震えていた。


「何であんたみたいなやつがカオスに選ばれて、お兄ちゃんは選ばれないのよ」


アイシーは、泣いていた。

悔しかったのか。
カオスに選ばれなかったことが。
いや、アイキューが選ばれなかったことが悔しかったのか。
アイキューにライバル視されている俺が選ばれて、アイキューは選ばれなかったということが。

何だ、ちゃんと大切に思われてるじゃないか、アイキュー。


それにしても。


「……どうして……」


そう呟きながら涙を流す姿を見て、不覚にも綺麗だと思ってしまった。


一度そう思うと不思議なもので、俺は、ほとんど無意識のうちにアイシーを抱きしめていた。


「なっ……!」

突然の抱擁に慌てふためき頬を赤らめるアイシーは、なるほど確かに可愛らしかった。

俺はそんな彼女に新たに固めたばかりの決意を告げた。


「勝つよ。必ず」


するとアイシーは俺の手を振り払うように俺を壁に押し付けて距離を取り、少し顔を赤らめたまま怒鳴った。

「当たり前よ!負けたりなんかしたらただじゃおかないんだから!!」

その様子を見て、何だかくすぐったくなって笑顔を返すと、また「へらへらするな!」と怒られた。



俺は晴矢のためにここにいた。
これからもずっとそうだと思っていた。
それなのに。
彼女のために頑張りたい、なんて思ってしまっている俺が、今確かにここにいる。




ヒトシー萌えええええ!!!!!
半年くらい前からずっと書きたかった話です。
ていうかヒトシー出会い編。
付き合うのは計画終わってからでいいよ。
はぁ……ヒトシー……好き……。
マイナーだなんて、信じないぞ!


>>2011.4.26
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