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短編

俺は、ずっとヒロトに憧れていた。
優しくて強いヒロトに憧れて、ヒロトみたいになりたくて。
だからサッカーだって頑張ったし、ヒロトに褒められた時は嬉しくてたまらなかった。

そして俺は彼女の存在に気がついた。
ヒロトの横に並ぶ彼女は、いつも凛としていて格好良かった。
それだけじゃなく優しくて可愛らしくて、まさにヒロトの隣に立つのにふさわしい人だと思った。
ヒロトにずっと憧れて、ヒロトの隣に並べるようになりたくて、だから俺はいつからか彼女を目標にするようになっていた。
女性らしく可愛らしい部分は無理だとしても、それ以外ならきっと目指すに足りると思っていたから。

そうやってずっと彼女を見ていたらいつしかそれは、違う意味での憧れを含むようになっていた。
いつの間にか「彼女のようにヒロトの横に立ちたい」ではなく「ヒロトのように彼女の隣に並びたい」と思うようになっていた。
理由は違えど、また目標が「ヒロトのようになりたい」に戻っていた。


そして目指した。
目指した結果、俺はヒロトにも彼女にもなれないことを知った。
俺はヒロトのように強くもなれないし、彼女のように格好良くもなれなかった。

そして、ヒロトと彼女は少なからず想い合っていて俺が代わりに入り込むことなんて決して出来ないのだと知ってしまった。気付いてしまった。

今思えば俺が彼女に憧れたのだってヒロトとお似合いだと思ったからで。
そんな彼女に想いを寄せたって、憧れのヒロトに適うはずがないことくらい知っていたのに。
知っていたのに気付かないふりをした。
そして俺は気付いて、認めてしまった。

ああ、本当に、この人には適わないのだと。



だから俺はただ願う。

どうか大好きなヒロトと、大好きな彼女が、少しでも長く共に幸せでいられますように、と。




緑川ってすごく頑張ってるのは分かるのに全く報われないよね。
ていうか幸薄い……。
でもそんな緑川が好きだ!

でもたまには報われてほしいです。


>>2010.11.12

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