君に届けたい想い
※バレンタイン話の続きのホワイトデーヒロ玲。それと円ヒロ(笑)
「春奈、これホワイトデーのお返しな!」
それ自体は何もおかしくない光景。何せ今日はホワイトデー。
しかし問題はそれを渡している人物である。
「……キャプテン?何があったんですか?」
「ん?いや、昨日秋がさ『知り合いから貰ったバレンタインチョコのお返しはしっかり返しなさい』って。いや、まあ忘れてたけど。……あ、ふゆっぺー!」
そして円堂はお返しを渡す為に冬花の所へ向かった。
「……さすが木野……」
「何て言うか、お母さんだよね」
イナズマジャパンのメンバーも珍しいものを見たとばかりに円堂の様子を見ていた。それは微笑ましさも含まれた視線で、和やかに朝食前の一時は流れて行った。
あの男が現れるまでは。
「あ、ヒロト!これホワイトデーのお返しなんだけどさ……」
「ああ!ごめん、わざわざありがとう円堂君」
「「…………!?」」
ホワイトデーのお返しをヒロトに渡している。
それはつまりバレンタインデーにヒロトから貰ったということで……。
「そうだ。円堂君にこれあげるよ。クッキーなんだけど」
「え、いいのか?」
「ホワイトデーで作ったやつの余りだから」
「手作りなのか!?なんか悪いな……」
「気にしないで。日頃の感謝の気持ちだよ」
なんていう仲の良いやりとりを見せつけている2人にますます疑惑は広がっていく。
「確かに前から怪しいな~とは思ってたけど」
「いや、でも男同士だぞ?」
「禁断の愛ってやつですね!」
その日のイナズマジャパンはその話題でもちきりだった。
◇◆◇
「……何だろう。今日はやけに視線を感じる……」
「どうした?ヒロト」
「え?いや、何でも……」
一緒に食事をとっているこの状況がさらに疑惑を加速させていることには2人共気付かない。
「そうだ!朝のクッキー食べたけどさ、すっげえうまかったぞ!ヒロトって料理上手いんだな!」
「え!?む、昔からよくやってたから……」
恥ずかしそうに照れながらそう返すヒロトに、周囲の人々はますます疑惑を確信に変えていく。
そんな時だった。
「ヒロトさん、お電話です」
「あ……じゃあ、ごめんね円堂君」
「おう!」
電話がかかって来たため、ヒロトは席を外した。
「もしもし?」
誰からだろう、と思いながらヒロトが電話に出ると、そこからは彼にとってよく知る人物の怒鳴り声がした。
『私はお前にバレンタインのチョコレートなんて渡していない!』
それは今朝、円堂に預かった分と自分が作った分のホワイトデーのお返しを送った相手、八神玲名に間違いなかった。
「あれ、そうだったかな?」
彼女なりの照れ隠しだということはわかっているけれど、せっかくわざわざ電話をかけてくれたんだ。機嫌を損ねて切られたくはない。
そう思ったヒロトは、あくまで彼女に合わせることにした。
「でももう送っちゃったし、日頃の感謝の気持ちとして受け取ってよ」
『な……!』
チョコレートが美味しかった、という旨は一緒に添えておいた手紙に書いてあるし、電話越しとはいえ直接お礼なんて言われたら恥ずかしがり屋な彼女は照れ隠しに怒りだしてしまうだろう。
できるだけ彼女を怒らせないように気を使う。
そんなことですら幸せを感じてしまう自分はどうかしているのかもしれない。
『……れ、礼を言いたいから、円堂にかわれ!今日はその為にわざわざ電話をかけたんだからな!お前じゃないからな!勘違いするな!』
「わかった」
本当はもっと話していたいけれど、律儀な彼女は本当に円堂君にお礼を言いたいんだろう。
それに何より俺のお姫様のご要望だ。叶えない理由なんて何もない。
でも、本当にそれだけなら直接円堂君を呼び出せばいいのに。
けれどもそうはしない彼女の隠された愛情に笑みが止まらない。
そしてヒロトは受話器を手に持って食堂へと戻り、そこで今日ずっと感じていた視線の理由を知ることになる。
◇◆◇
「キャプテン、キャプテン」
「ん?どうした吹雪?」
ヒロトが電話に出る為に退室して、吹雪はヒロトに気付かれないように円堂に近づき、小声で話しかけた。
その様子を周りのメンバーも慎重に見守る。
吹雪はその視線を受け止め、意を決して円堂に切り出した。
「キャプテン……バレンタインにヒロト君からチョコレート貰ったの?」
「?……まあ、そうだな。貰ったけど?」
「っ!?」
ちなみに円堂の言う『貰った』は、八神玲名からのチョコレートがヒロト経由であった故に直接渡された相手はヒロトだったので、ヒロトから貰ったといえば貰ったと言えるため『貰った』と答えただけである。
しかし吹雪の質問の真意に気付いていない円堂ではそれを説明する意味も必要性も感じず、うろたえる吹雪にただ不思議そうに首をかしげるだけだった。
「どうしたんだ?」
「いや……その……」
吹雪は迷った。
これを聞いてもいいものなのか。聞いて、納得するなら落ち着けるだろう。でも、もし2人がそんな仲になってしまったとして、今までと同じように接して行けるだろうか。
それでも……気になるものは気になる!
だって人の恋愛話とか大好きだもん!
吹雪は覚悟を決めて円堂に核心的な部分を問い詰めた。
「キャプテンは、ヒロト君のことどう思ってるの!?」
「え?どうって……大事な仲間で、友達だろ?」
「!」
あっさり返された迷いのない答えに吹雪は衝撃を受けた。
「それじゃあ、ヒロト君は、フラれちゃったの……!?」
「へ?……あ」
吹雪の言葉に再び首をかしげた円堂は、吹雪の背後に立つ人物に気がついた。
「へー、ふーん、なるほどねー。今日1日ずっと感じてた視線の正体ってそういうことだったんだねー」
「ひ、ヒロト君!?」
吹雪が振り返るとそこには目が笑っていないヒロトの姿がそこにあった。
そしてヒロトは引きつった笑顔を浮かべることしか出来ない吹雪を無視して、手に持った受話器を差し出しながらやたらきれいな笑顔で円堂に若干大きめの声で話しかけた。
「今朝円堂君に渡してもらったホワイトデーのお返しだけど、無事に八神の所へ届いたみたいだよ。お礼がしたいから電話かわって欲しいって」
「へ……」
「おう!」
ヒロトの言葉にぽかんとする吹雪と、嬉しそうに返事をして受話器を受け取る円堂の反応の違いが面白いようにはっきりと分かれていた。
そしてヒロトは笑顔のまま吹雪に尋ねる。
「それで?誰が誰に何だって?吹雪君」
「いや、その……あはは」
もはや吹雪には笑ってごまかすしか手段はなかった。
◇◆◇
そんな中、電話中の円堂は「今度また一緒にサッカーやろうな」といった内容の話を楽しそうにしていた。
『……まさか本当に円堂にかわるとは思わなかったな……』
「ん?どうした?」
『いや、何でもない』
話が一段落したところで円堂は、目の前のヒロトを見てさっきしていた話を思い出した。
「そういえば今日の朝ついでだからってヒロトにクッキー貰ったんだけどさ、ヒロトって料理上手いよな!」
『――』
「ちょ、ちょっと円堂君!?」
恥ずかしさと、彼女にはあくまで『もったいないから貰って』と言った手前、その話にはあまり触れてほしくなかったヒロトはあわてて止めに入った。
しかし円堂はそんなヒロトに当然のように返した。
「え?だってあのクッキー八神にも渡したんだろ?」
「そ、それはそうだけどそうじゃなくて……ちょっと貸して!」
半ば無理やり円堂から受話器を奪い取ったヒロトは弁解しようと八神に話しかけようとした。
そして聞いた。
彼女の言葉を。
聞いてしまったのだ。
『そんなこと……ヒロトが料理が上手いことくらい知っている!料理だけじゃなくて家事全般が得意なことも、でも裁縫だけは苦手で綺麗に縫えるくせに必ず指に怪我することも、それをいつも隠して誰にも言わないってことも!ヒロトのことならお前よりも私の方がいっぱい、たくさん、知っている!!』
「……え……」
ヒロトは一瞬、何を言われたのかわからなかった。
言われたことを理解した後も、その理由がわからなかった。
そしてそこまで理解した時、彼女の名前を呼んだ。
呼ぶだけで精一杯だった。
「……玲、名……さん……?」
普段、恥ずかしがり屋な彼女の為に名前で呼ぶことは避けていたけれど、それさえも忘れるくらいに彼女の発言は衝撃的だった。
『――っ!?』
そして彼女も理解した。
今言ってしまった言葉も、それを聞かせた相手も。
理解した彼女は言葉すら発せないまま逃げるように電話を切った。
「ヒロト……?」
「ヒロト君?」
とてもゆっくりした動作で受話器を耳から外したヒロトは、思い出していた。
彼女の言葉。
彼女の怒り。
普段なら絶対に自分が聞くことはあり得ないものに、口元を押さえた。
顔が赤くなっていくのも、心臓が異様に早く脈打っているのもはっきりとわかった。
ヒロトはそれに耐え切れず、その場にしゃがみ込んでしまった。
「え!?」
「ひ、ヒロト!?大丈夫か?なんかすごい顔赤いぞ!?」
「ちょ、ちょっと待って……」
心配し出す円堂に止めるように手のひらを突き出したヒロトは、声を絞りだして言った。
「ごめん円堂君。なんていうか、ものすごくありがとう……」
「へ?ああ、うん……?」
その後しばらく、吹雪と春奈に『八神玲名』についてしつこいほど聞かれまくるヒロトの姿がよく見られたという。
小ネタのバレンタインデーの続きとして書き出したのに何この長さ。とても500文字どころの話じゃない。
円ヒロ疑惑とか余計な話入れてるからですよね。
本当は円ヒロでホワイトデー話書きたかったのでその名残なんですけど。だってネタがなかった。
ヒロトは玲名さんの好意には気付いてるんですけど玲名さんもヒロトが気付いてるってわかってるんですけど、恥ずかしがり屋な玲名さんは伝えられないしヒロトも無理して言わなくてもいいよって感じなので、今回のようにお互い不意討ちで言っちゃった聞いちゃったってなるとものすごく恥ずかしいよっていう。
なんだろう。まとめてみるとものすごく恥ずかしい。
まあなんだ。要するにヒロ玲大好き!ってことで。
あとね、吹雪と春奈は他人の恋愛話とか大好きだと思うの。頼んでもいないのに応援したり手伝ったりしてたら可愛い。
そして自分のことになるととたんに他人の介入を恥ずかしがって教えないしとても不器用なの。
吹雪は本命に弱そう。春奈は自分にはまだ先って思ってそう。
何この子達可愛い。
そんな思いを最後の落ちに詰めてみた。
バレンタインデー万歳!
ホワイトデー万歳!
……タイトルは某ようやく想いを伝え合った少女漫画原作のあのアニメのEDが頭を回ってたのでついたとかいやそんな。
>>2011.3.14
「春奈、これホワイトデーのお返しな!」
それ自体は何もおかしくない光景。何せ今日はホワイトデー。
しかし問題はそれを渡している人物である。
「……キャプテン?何があったんですか?」
「ん?いや、昨日秋がさ『知り合いから貰ったバレンタインチョコのお返しはしっかり返しなさい』って。いや、まあ忘れてたけど。……あ、ふゆっぺー!」
そして円堂はお返しを渡す為に冬花の所へ向かった。
「……さすが木野……」
「何て言うか、お母さんだよね」
イナズマジャパンのメンバーも珍しいものを見たとばかりに円堂の様子を見ていた。それは微笑ましさも含まれた視線で、和やかに朝食前の一時は流れて行った。
あの男が現れるまでは。
「あ、ヒロト!これホワイトデーのお返しなんだけどさ……」
「ああ!ごめん、わざわざありがとう円堂君」
「「…………!?」」
ホワイトデーのお返しをヒロトに渡している。
それはつまりバレンタインデーにヒロトから貰ったということで……。
「そうだ。円堂君にこれあげるよ。クッキーなんだけど」
「え、いいのか?」
「ホワイトデーで作ったやつの余りだから」
「手作りなのか!?なんか悪いな……」
「気にしないで。日頃の感謝の気持ちだよ」
なんていう仲の良いやりとりを見せつけている2人にますます疑惑は広がっていく。
「確かに前から怪しいな~とは思ってたけど」
「いや、でも男同士だぞ?」
「禁断の愛ってやつですね!」
その日のイナズマジャパンはその話題でもちきりだった。
◇◆◇
「……何だろう。今日はやけに視線を感じる……」
「どうした?ヒロト」
「え?いや、何でも……」
一緒に食事をとっているこの状況がさらに疑惑を加速させていることには2人共気付かない。
「そうだ!朝のクッキー食べたけどさ、すっげえうまかったぞ!ヒロトって料理上手いんだな!」
「え!?む、昔からよくやってたから……」
恥ずかしそうに照れながらそう返すヒロトに、周囲の人々はますます疑惑を確信に変えていく。
そんな時だった。
「ヒロトさん、お電話です」
「あ……じゃあ、ごめんね円堂君」
「おう!」
電話がかかって来たため、ヒロトは席を外した。
「もしもし?」
誰からだろう、と思いながらヒロトが電話に出ると、そこからは彼にとってよく知る人物の怒鳴り声がした。
『私はお前にバレンタインのチョコレートなんて渡していない!』
それは今朝、円堂に預かった分と自分が作った分のホワイトデーのお返しを送った相手、八神玲名に間違いなかった。
「あれ、そうだったかな?」
彼女なりの照れ隠しだということはわかっているけれど、せっかくわざわざ電話をかけてくれたんだ。機嫌を損ねて切られたくはない。
そう思ったヒロトは、あくまで彼女に合わせることにした。
「でももう送っちゃったし、日頃の感謝の気持ちとして受け取ってよ」
『な……!』
チョコレートが美味しかった、という旨は一緒に添えておいた手紙に書いてあるし、電話越しとはいえ直接お礼なんて言われたら恥ずかしがり屋な彼女は照れ隠しに怒りだしてしまうだろう。
できるだけ彼女を怒らせないように気を使う。
そんなことですら幸せを感じてしまう自分はどうかしているのかもしれない。
『……れ、礼を言いたいから、円堂にかわれ!今日はその為にわざわざ電話をかけたんだからな!お前じゃないからな!勘違いするな!』
「わかった」
本当はもっと話していたいけれど、律儀な彼女は本当に円堂君にお礼を言いたいんだろう。
それに何より俺のお姫様のご要望だ。叶えない理由なんて何もない。
でも、本当にそれだけなら直接円堂君を呼び出せばいいのに。
けれどもそうはしない彼女の隠された愛情に笑みが止まらない。
そしてヒロトは受話器を手に持って食堂へと戻り、そこで今日ずっと感じていた視線の理由を知ることになる。
◇◆◇
「キャプテン、キャプテン」
「ん?どうした吹雪?」
ヒロトが電話に出る為に退室して、吹雪はヒロトに気付かれないように円堂に近づき、小声で話しかけた。
その様子を周りのメンバーも慎重に見守る。
吹雪はその視線を受け止め、意を決して円堂に切り出した。
「キャプテン……バレンタインにヒロト君からチョコレート貰ったの?」
「?……まあ、そうだな。貰ったけど?」
「っ!?」
ちなみに円堂の言う『貰った』は、八神玲名からのチョコレートがヒロト経由であった故に直接渡された相手はヒロトだったので、ヒロトから貰ったといえば貰ったと言えるため『貰った』と答えただけである。
しかし吹雪の質問の真意に気付いていない円堂ではそれを説明する意味も必要性も感じず、うろたえる吹雪にただ不思議そうに首をかしげるだけだった。
「どうしたんだ?」
「いや……その……」
吹雪は迷った。
これを聞いてもいいものなのか。聞いて、納得するなら落ち着けるだろう。でも、もし2人がそんな仲になってしまったとして、今までと同じように接して行けるだろうか。
それでも……気になるものは気になる!
だって人の恋愛話とか大好きだもん!
吹雪は覚悟を決めて円堂に核心的な部分を問い詰めた。
「キャプテンは、ヒロト君のことどう思ってるの!?」
「え?どうって……大事な仲間で、友達だろ?」
「!」
あっさり返された迷いのない答えに吹雪は衝撃を受けた。
「それじゃあ、ヒロト君は、フラれちゃったの……!?」
「へ?……あ」
吹雪の言葉に再び首をかしげた円堂は、吹雪の背後に立つ人物に気がついた。
「へー、ふーん、なるほどねー。今日1日ずっと感じてた視線の正体ってそういうことだったんだねー」
「ひ、ヒロト君!?」
吹雪が振り返るとそこには目が笑っていないヒロトの姿がそこにあった。
そしてヒロトは引きつった笑顔を浮かべることしか出来ない吹雪を無視して、手に持った受話器を差し出しながらやたらきれいな笑顔で円堂に若干大きめの声で話しかけた。
「今朝円堂君に渡してもらったホワイトデーのお返しだけど、無事に八神の所へ届いたみたいだよ。お礼がしたいから電話かわって欲しいって」
「へ……」
「おう!」
ヒロトの言葉にぽかんとする吹雪と、嬉しそうに返事をして受話器を受け取る円堂の反応の違いが面白いようにはっきりと分かれていた。
そしてヒロトは笑顔のまま吹雪に尋ねる。
「それで?誰が誰に何だって?吹雪君」
「いや、その……あはは」
もはや吹雪には笑ってごまかすしか手段はなかった。
◇◆◇
そんな中、電話中の円堂は「今度また一緒にサッカーやろうな」といった内容の話を楽しそうにしていた。
『……まさか本当に円堂にかわるとは思わなかったな……』
「ん?どうした?」
『いや、何でもない』
話が一段落したところで円堂は、目の前のヒロトを見てさっきしていた話を思い出した。
「そういえば今日の朝ついでだからってヒロトにクッキー貰ったんだけどさ、ヒロトって料理上手いよな!」
『――』
「ちょ、ちょっと円堂君!?」
恥ずかしさと、彼女にはあくまで『もったいないから貰って』と言った手前、その話にはあまり触れてほしくなかったヒロトはあわてて止めに入った。
しかし円堂はそんなヒロトに当然のように返した。
「え?だってあのクッキー八神にも渡したんだろ?」
「そ、それはそうだけどそうじゃなくて……ちょっと貸して!」
半ば無理やり円堂から受話器を奪い取ったヒロトは弁解しようと八神に話しかけようとした。
そして聞いた。
彼女の言葉を。
聞いてしまったのだ。
『そんなこと……ヒロトが料理が上手いことくらい知っている!料理だけじゃなくて家事全般が得意なことも、でも裁縫だけは苦手で綺麗に縫えるくせに必ず指に怪我することも、それをいつも隠して誰にも言わないってことも!ヒロトのことならお前よりも私の方がいっぱい、たくさん、知っている!!』
「……え……」
ヒロトは一瞬、何を言われたのかわからなかった。
言われたことを理解した後も、その理由がわからなかった。
そしてそこまで理解した時、彼女の名前を呼んだ。
呼ぶだけで精一杯だった。
「……玲、名……さん……?」
普段、恥ずかしがり屋な彼女の為に名前で呼ぶことは避けていたけれど、それさえも忘れるくらいに彼女の発言は衝撃的だった。
『――っ!?』
そして彼女も理解した。
今言ってしまった言葉も、それを聞かせた相手も。
理解した彼女は言葉すら発せないまま逃げるように電話を切った。
「ヒロト……?」
「ヒロト君?」
とてもゆっくりした動作で受話器を耳から外したヒロトは、思い出していた。
彼女の言葉。
彼女の怒り。
普段なら絶対に自分が聞くことはあり得ないものに、口元を押さえた。
顔が赤くなっていくのも、心臓が異様に早く脈打っているのもはっきりとわかった。
ヒロトはそれに耐え切れず、その場にしゃがみ込んでしまった。
「え!?」
「ひ、ヒロト!?大丈夫か?なんかすごい顔赤いぞ!?」
「ちょ、ちょっと待って……」
心配し出す円堂に止めるように手のひらを突き出したヒロトは、声を絞りだして言った。
「ごめん円堂君。なんていうか、ものすごくありがとう……」
「へ?ああ、うん……?」
その後しばらく、吹雪と春奈に『八神玲名』についてしつこいほど聞かれまくるヒロトの姿がよく見られたという。
小ネタのバレンタインデーの続きとして書き出したのに何この長さ。とても500文字どころの話じゃない。
円ヒロ疑惑とか余計な話入れてるからですよね。
本当は円ヒロでホワイトデー話書きたかったのでその名残なんですけど。だってネタがなかった。
ヒロトは玲名さんの好意には気付いてるんですけど玲名さんもヒロトが気付いてるってわかってるんですけど、恥ずかしがり屋な玲名さんは伝えられないしヒロトも無理して言わなくてもいいよって感じなので、今回のようにお互い不意討ちで言っちゃった聞いちゃったってなるとものすごく恥ずかしいよっていう。
なんだろう。まとめてみるとものすごく恥ずかしい。
まあなんだ。要するにヒロ玲大好き!ってことで。
あとね、吹雪と春奈は他人の恋愛話とか大好きだと思うの。頼んでもいないのに応援したり手伝ったりしてたら可愛い。
そして自分のことになるととたんに他人の介入を恥ずかしがって教えないしとても不器用なの。
吹雪は本命に弱そう。春奈は自分にはまだ先って思ってそう。
何この子達可愛い。
そんな思いを最後の落ちに詰めてみた。
バレンタインデー万歳!
ホワイトデー万歳!
……タイトルは某ようやく想いを伝え合った少女漫画原作のあのアニメのEDが頭を回ってたのでついたとかいやそんな。
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