短編
「風邪だな」
練習中に倒れてしまった私は、大介さんにきっぱりと告げられてしまった言葉に落ち込んだ。
体調管理もしっかり出来ないなんて、マネージャー失格だわ。
「……ごめんなさい」
「コトアールの風邪はしつこいからな。しっかり寝て、しっかり休むといい」
「……はい……」
部屋を出ていく大介さんを見送ってから、だるい体をベッドに寝かせた。
リトルギガントのマネージャーになってから見慣れてきた天井を眺めながらぼんやりと思う。
そういえば、前にもこんなことがあったわね……。
◆◇◆
練習中に、倒れてしまった。
フットボールフロンティアもまだまだこれからが勝負だというのに、選手ですらないマネージャーの私が倒れてどうするの。
保健室で休むように言われて、早く治すことだけを考えるようにして眠りについた。
しばらくしてふっと目を開けると、辺りは夕暮れに包まれていた。
どうやら何時間も眠っていたらしい。
みんなはもう帰ったのかしら。
そう思いながら起き上がると、すぐ近くに人が座っていたことに気がついた。
「起きたか」
「……え?」
どくん、と胸が波打った。
どうして、どうしてあなたがここにいるの。
「……豪炎寺君?どうしてあなたが?」
疑問をそのまま口にすると、彼は説明を始めた。
「俺はただお前の様子を見に来ただけだったんだがな」
『……様子はどうだ?』
『豪炎寺先輩!?』
『熱は引いたから、もう大丈夫だと思うわ』
『そうか』
『……』
『……あ!いっけない!わたし、今日用事あるんでした!』
『そうなの?』
『はい!ということで行きましょう先輩!』
『え?でも夏未さんが……』
『じゃあ、夏未さんのことよろしくお願いしますね、豪炎寺先輩!』
『あ、ああ……』
「――ということがあった」
「春奈さん……」
思わず頭を抱えてしまう。
私と豪炎寺君はそんな関係じゃないって何度も言ってるのに、全然聞いてくれない。
そもそも豪炎寺君がこうしてわざわざ様子を見に来たりするせいとも言えないでもない。
けれど、せっかく親切心で来てくれた彼を責めることは出来ない。
本当に豪炎寺君はずるいと思う。
「それより、もう大丈夫なのか?」
「ええ」
豪炎寺君は、純粋に私のことを心配してくれている。
それを悪く思うなんて、出来るわけがない。
私のそんな思いに気付いているのかいないのか、ふいに、豪炎寺君の手が私に伸びてきた。
何かと思っていたら、その手はそのまま私の頭の上に置かれた。
「お前は頑張りすぎなんだ。もう少し力を抜いたって、誰も責めないと思うぞ」
そう言いながら、私の頭を優しく撫でる。
誰かに頭を撫でられるのなんて、初めてのような気がする。
豪炎寺君はそのまま手を額に移動させ、反対の手で自分の額に手を当てた。
「……確かに、熱はないようだな」
そう言って手を離した豪炎寺君は、今度は私の顔を覗き込んで顔をしかめた。
「……いや、やっぱり顔が赤いか?」
「……馬鹿!」
なんだか悔しかったから、枕を手に取って投げつけてやったのだった。
◆◇◆
目を開けると、そこは保健室の天井ではなかった。
ああ、夢だったのね。
少し懐かしいけれど、なんだか恥ずかしい。
ちらりと、その時は豪炎寺君が座っていた方を見ると、そこには人影があった。
その姿に驚いて、飛び起きた。
「っ!豪炎寺君!?」
「起きたか?」
振り返った人物を見て、はっとした。
そこに居たのはゴーシュだった。
確かに、前々から似てるとは思っていたけれど、まさか本当に間違えるなんて。
やっぱり私は風邪をひいているようね。しかも結構重症なのかもしれないわ。
そんな自分に落ち込んで、頭を押さえてため息をつくと、ゴーシュは私の顔を覗き込んで、面白そうに笑った。
「他の奴でも期待してたのか?」
「きっ!?期待なんてしてないわよ馬鹿!」
また枕でも投げつけてやろうかと思ったけれど、やめた。
少しは大人にならないと。
「……それで?どうしてあなたがここに居るのかしら?」
「あー、それは……」
少し言い淀んだゴーシュに、私はやっぱりあの時の豪炎寺君を思い出していた。
でもここには春奈さんのように私とゴーシュとの仲を疑っている人もいないし、そもそも私とゴーシュは豪炎寺君との時のようにそんなに特別な仲というわけでもないし……って、だからといって豪炎寺君と何かあるわけでもないのよ!?
一人で言い訳じみたことまで考えていると、ゴーシュはいやに自信に満ちた顔で笑った。
「……お前は俺に、感謝するべきだ」
「え?」
「ナツミ!」
その時、勢いよくロココが入って来た。
ロココは入り口で立ち止まり、呆然と私を見ていた。
そして私と目が合うなり、手に持っていた果物を取り落として、私の寝ているベッドに駆け寄って来た。
「ナツミ~!!!」
「こら、相手はまだ病人だ。抱きつこうとするな」
「だってナツミ、ずっと苦しそうで、かと思ったら死んじゃったみたいにずっと眠ってるし、心配でっ」
そう言うロココを手で押さえながらゴーシュは私に言った。
「こんなのがずっとそばに居たら、寝てられないだろ?」
「ああ……」
ゴーシュがここに居た理由に、妙に納得してしまった。
ロココはいい子なのだけれど、人一倍仲間思いで、その分何かがあるといつもこの調子で他のことも手につかなくなってしまう。
ロココが特に信頼しているゴーシュがここに居ることで、そのバランスを取ろうとしていたのかもしれない。
まだ言い合っている2人を見て、嬉しくなって笑うと、2人も嬉しそうに笑ってくれた。
誰かに心配されることが、こんなに嬉しいなんて。
穏やかに心が安らいでいく反面、あの日の保健室では結局こんな穏やかに落ち着いた気持ちにはなれなかったということに気付いたけれど気付かなかったふりをした。
居てくれたのが豪炎寺君だったから、なんて、そんなまさか。
豪夏が好きです。
でもゴシュ夏よりもロコ夏が好きです。
でも夏未さんはみんなのアイドル!
豪夏が、好きです(大事なことなので2回(ry
>>2011.2.24
練習中に倒れてしまった私は、大介さんにきっぱりと告げられてしまった言葉に落ち込んだ。
体調管理もしっかり出来ないなんて、マネージャー失格だわ。
「……ごめんなさい」
「コトアールの風邪はしつこいからな。しっかり寝て、しっかり休むといい」
「……はい……」
部屋を出ていく大介さんを見送ってから、だるい体をベッドに寝かせた。
リトルギガントのマネージャーになってから見慣れてきた天井を眺めながらぼんやりと思う。
そういえば、前にもこんなことがあったわね……。
◆◇◆
練習中に、倒れてしまった。
フットボールフロンティアもまだまだこれからが勝負だというのに、選手ですらないマネージャーの私が倒れてどうするの。
保健室で休むように言われて、早く治すことだけを考えるようにして眠りについた。
しばらくしてふっと目を開けると、辺りは夕暮れに包まれていた。
どうやら何時間も眠っていたらしい。
みんなはもう帰ったのかしら。
そう思いながら起き上がると、すぐ近くに人が座っていたことに気がついた。
「起きたか」
「……え?」
どくん、と胸が波打った。
どうして、どうしてあなたがここにいるの。
「……豪炎寺君?どうしてあなたが?」
疑問をそのまま口にすると、彼は説明を始めた。
「俺はただお前の様子を見に来ただけだったんだがな」
『……様子はどうだ?』
『豪炎寺先輩!?』
『熱は引いたから、もう大丈夫だと思うわ』
『そうか』
『……』
『……あ!いっけない!わたし、今日用事あるんでした!』
『そうなの?』
『はい!ということで行きましょう先輩!』
『え?でも夏未さんが……』
『じゃあ、夏未さんのことよろしくお願いしますね、豪炎寺先輩!』
『あ、ああ……』
「――ということがあった」
「春奈さん……」
思わず頭を抱えてしまう。
私と豪炎寺君はそんな関係じゃないって何度も言ってるのに、全然聞いてくれない。
そもそも豪炎寺君がこうしてわざわざ様子を見に来たりするせいとも言えないでもない。
けれど、せっかく親切心で来てくれた彼を責めることは出来ない。
本当に豪炎寺君はずるいと思う。
「それより、もう大丈夫なのか?」
「ええ」
豪炎寺君は、純粋に私のことを心配してくれている。
それを悪く思うなんて、出来るわけがない。
私のそんな思いに気付いているのかいないのか、ふいに、豪炎寺君の手が私に伸びてきた。
何かと思っていたら、その手はそのまま私の頭の上に置かれた。
「お前は頑張りすぎなんだ。もう少し力を抜いたって、誰も責めないと思うぞ」
そう言いながら、私の頭を優しく撫でる。
誰かに頭を撫でられるのなんて、初めてのような気がする。
豪炎寺君はそのまま手を額に移動させ、反対の手で自分の額に手を当てた。
「……確かに、熱はないようだな」
そう言って手を離した豪炎寺君は、今度は私の顔を覗き込んで顔をしかめた。
「……いや、やっぱり顔が赤いか?」
「……馬鹿!」
なんだか悔しかったから、枕を手に取って投げつけてやったのだった。
◆◇◆
目を開けると、そこは保健室の天井ではなかった。
ああ、夢だったのね。
少し懐かしいけれど、なんだか恥ずかしい。
ちらりと、その時は豪炎寺君が座っていた方を見ると、そこには人影があった。
その姿に驚いて、飛び起きた。
「っ!豪炎寺君!?」
「起きたか?」
振り返った人物を見て、はっとした。
そこに居たのはゴーシュだった。
確かに、前々から似てるとは思っていたけれど、まさか本当に間違えるなんて。
やっぱり私は風邪をひいているようね。しかも結構重症なのかもしれないわ。
そんな自分に落ち込んで、頭を押さえてため息をつくと、ゴーシュは私の顔を覗き込んで、面白そうに笑った。
「他の奴でも期待してたのか?」
「きっ!?期待なんてしてないわよ馬鹿!」
また枕でも投げつけてやろうかと思ったけれど、やめた。
少しは大人にならないと。
「……それで?どうしてあなたがここに居るのかしら?」
「あー、それは……」
少し言い淀んだゴーシュに、私はやっぱりあの時の豪炎寺君を思い出していた。
でもここには春奈さんのように私とゴーシュとの仲を疑っている人もいないし、そもそも私とゴーシュは豪炎寺君との時のようにそんなに特別な仲というわけでもないし……って、だからといって豪炎寺君と何かあるわけでもないのよ!?
一人で言い訳じみたことまで考えていると、ゴーシュはいやに自信に満ちた顔で笑った。
「……お前は俺に、感謝するべきだ」
「え?」
「ナツミ!」
その時、勢いよくロココが入って来た。
ロココは入り口で立ち止まり、呆然と私を見ていた。
そして私と目が合うなり、手に持っていた果物を取り落として、私の寝ているベッドに駆け寄って来た。
「ナツミ~!!!」
「こら、相手はまだ病人だ。抱きつこうとするな」
「だってナツミ、ずっと苦しそうで、かと思ったら死んじゃったみたいにずっと眠ってるし、心配でっ」
そう言うロココを手で押さえながらゴーシュは私に言った。
「こんなのがずっとそばに居たら、寝てられないだろ?」
「ああ……」
ゴーシュがここに居た理由に、妙に納得してしまった。
ロココはいい子なのだけれど、人一倍仲間思いで、その分何かがあるといつもこの調子で他のことも手につかなくなってしまう。
ロココが特に信頼しているゴーシュがここに居ることで、そのバランスを取ろうとしていたのかもしれない。
まだ言い合っている2人を見て、嬉しくなって笑うと、2人も嬉しそうに笑ってくれた。
誰かに心配されることが、こんなに嬉しいなんて。
穏やかに心が安らいでいく反面、あの日の保健室では結局こんな穏やかに落ち着いた気持ちにはなれなかったということに気付いたけれど気付かなかったふりをした。
居てくれたのが豪炎寺君だったから、なんて、そんなまさか。
豪夏が好きです。
でもゴシュ夏よりもロコ夏が好きです。
でも夏未さんはみんなのアイドル!
豪夏が、好きです(大事なことなので2回(ry
>>2011.2.24
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