短編
ヒデに連れられてライオコット島に来たルシェは、FFIが終わるまでの間イタリアチームで預かることになっていた。
目の見える、刺激的で新しい生活にルシェは毎日を楽しく過ごしていた。
その新しい生活の中でも彼女が特に大切に思っていたのは、目を使わない時間だった。
それは、「おじさん」のくれたオルゴールを聞く時間。
決まった時刻ではないけれど、毎日必ずその綺麗な音色に耳を傾けることにしていた。
いつものようにオルゴールのネジを巻いて、その音に目を瞑る。
「きれいな音……」
すっかり覚えてしまったメロディーを聞きながら思い出すのは、決まって「おじさん」のことだった。
おじさんの優しく悲しげな声、おじさんの優しい手のひら……。
ルシェは優しい音を聞きながら眠ってしまっていた。
夢の中、「おじさん」との思い出に浸るルシェの頭をふわりと、風が優しく撫でた。
それは「おじさん」がよくルシェを撫でていた感触にとてもよく似ていた。
「……おじさん?」
ルシェが目を開けるとそこに望んでいた姿はなかった。
その代わりに居たのは、毛布を手に持った茶髪の少年。
「ごめん、起こしちゃったかな?」
申し訳なさそうに謝るその少年にルシェは見覚えがあった。
「……お兄ちゃん…………おじさんのチームの人だ!」
ヒデとよく話しているのを見かける。確か名前は「フィディオ」だったはず。
けれど、今まで直接話したことは特になかった。
そんな関わりのなかった彼が目の前に現れたのなら、期待してしまう。
「おじさん、戻って来るの!?」
ルシェが詰め寄るように問いかけると、一瞬驚いた少年は困ったように、そして少し悲しそうに笑って首を振る。
「いや、ただオルゴールの音が聞こえたから気になっただけだよ」
「なんだ……」
あからさまにがっかりすると、ルシェは再びオルゴールのネジを蒔直し、その音に耳を傾けた。
相変わらず綺麗な音色だった。
そして思い出すのはやはり、優しい「おじさん」と過ごしたほんの少しの、けれどもとても幸せだった時間だ。
思い出しては嬉しそうに微笑むルシェを見て、フィディオはぽつりと呟いた。
「……いいな」
「え?」
その言葉にフィディオを見ると、彼は「しまった」という顔をして目を逸らした。
ルシェはきょとんとしてフィディオをじっと見つめると、やがて彼は観念したように口を開いた。
「俺はあの人に何も貰えなかったからさ。……正直、キドウや君がうらやましい」
素直にそう言ってルシェが「おじさん」に貰ったオルゴールを寂しそうに見つめるフィディオを見て、ルシェは思った。
『このお兄ちゃんはわたしと同じで、おじさんのことが大好きなんだ』、と。
ルシェは嬉しくなった。
今まで彼ら、オルフェウスのみんなと過ごしていて「おじさん」を好きな人には出会えていなかったから。
おじさんを嫌いというわけではないようだし自分にもとても優しくしてくれていたけれど、おじさんを特別好きだと思っている人は一人もいなかった。
誰もいないのだと思っていた。
でも違った。
ちゃんと好きでいてくれた人は居たんだ。
ルシェはフィディオの手をとると心からの笑顔で言った。
「じゃあ、一緒に聞こうよ!」
「え……?」
「おじさんだって喜んでくれるよ!」
離れてしまう前におじさんが残して行ってくれたもの。
おじさんの代わりにわたしのそばに居てくれるオルゴール。
おじさんが大好きで、そばに居たいのはわたしだけじゃないのに、わたしがひとり占めしてしまうなんてもったいない。
だってわたしとお兄ちゃんは同じ気持ちなんだから。
おじさんのことが大好きなんだから。
「……ありがとう」
今にも泣き出しそうな顔で、フィディオは笑った。
オルゴールから流れるメロディーは、どこまでも優しく、綺麗な音だった。
アニメ設定を無理矢理フィディルシェにこじつけてみる。
フィディオはルシェのことをずっと避けていました。何も知らないルシェが羨ましかったから。でもずっと気になってはいました。
そしてオルゴールの音色を聞いて部屋を覗いてみれば眠るルシェの姿があって、こんな所で寝てたら風邪ひくよな、ちょっとくらいならいいよな、と思って近づいたら見つかりました。
この後からヒデかフィディオかくらいの感じでほとんどずっと一緒に居ればいい。
ちなみに眠るルシェの頭を撫でたのは幽霊となったミスターK、という裏設定が。
>>2011.1.7
目の見える、刺激的で新しい生活にルシェは毎日を楽しく過ごしていた。
その新しい生活の中でも彼女が特に大切に思っていたのは、目を使わない時間だった。
それは、「おじさん」のくれたオルゴールを聞く時間。
決まった時刻ではないけれど、毎日必ずその綺麗な音色に耳を傾けることにしていた。
いつものようにオルゴールのネジを巻いて、その音に目を瞑る。
「きれいな音……」
すっかり覚えてしまったメロディーを聞きながら思い出すのは、決まって「おじさん」のことだった。
おじさんの優しく悲しげな声、おじさんの優しい手のひら……。
ルシェは優しい音を聞きながら眠ってしまっていた。
夢の中、「おじさん」との思い出に浸るルシェの頭をふわりと、風が優しく撫でた。
それは「おじさん」がよくルシェを撫でていた感触にとてもよく似ていた。
「……おじさん?」
ルシェが目を開けるとそこに望んでいた姿はなかった。
その代わりに居たのは、毛布を手に持った茶髪の少年。
「ごめん、起こしちゃったかな?」
申し訳なさそうに謝るその少年にルシェは見覚えがあった。
「……お兄ちゃん…………おじさんのチームの人だ!」
ヒデとよく話しているのを見かける。確か名前は「フィディオ」だったはず。
けれど、今まで直接話したことは特になかった。
そんな関わりのなかった彼が目の前に現れたのなら、期待してしまう。
「おじさん、戻って来るの!?」
ルシェが詰め寄るように問いかけると、一瞬驚いた少年は困ったように、そして少し悲しそうに笑って首を振る。
「いや、ただオルゴールの音が聞こえたから気になっただけだよ」
「なんだ……」
あからさまにがっかりすると、ルシェは再びオルゴールのネジを蒔直し、その音に耳を傾けた。
相変わらず綺麗な音色だった。
そして思い出すのはやはり、優しい「おじさん」と過ごしたほんの少しの、けれどもとても幸せだった時間だ。
思い出しては嬉しそうに微笑むルシェを見て、フィディオはぽつりと呟いた。
「……いいな」
「え?」
その言葉にフィディオを見ると、彼は「しまった」という顔をして目を逸らした。
ルシェはきょとんとしてフィディオをじっと見つめると、やがて彼は観念したように口を開いた。
「俺はあの人に何も貰えなかったからさ。……正直、キドウや君がうらやましい」
素直にそう言ってルシェが「おじさん」に貰ったオルゴールを寂しそうに見つめるフィディオを見て、ルシェは思った。
『このお兄ちゃんはわたしと同じで、おじさんのことが大好きなんだ』、と。
ルシェは嬉しくなった。
今まで彼ら、オルフェウスのみんなと過ごしていて「おじさん」を好きな人には出会えていなかったから。
おじさんを嫌いというわけではないようだし自分にもとても優しくしてくれていたけれど、おじさんを特別好きだと思っている人は一人もいなかった。
誰もいないのだと思っていた。
でも違った。
ちゃんと好きでいてくれた人は居たんだ。
ルシェはフィディオの手をとると心からの笑顔で言った。
「じゃあ、一緒に聞こうよ!」
「え……?」
「おじさんだって喜んでくれるよ!」
離れてしまう前におじさんが残して行ってくれたもの。
おじさんの代わりにわたしのそばに居てくれるオルゴール。
おじさんが大好きで、そばに居たいのはわたしだけじゃないのに、わたしがひとり占めしてしまうなんてもったいない。
だってわたしとお兄ちゃんは同じ気持ちなんだから。
おじさんのことが大好きなんだから。
「……ありがとう」
今にも泣き出しそうな顔で、フィディオは笑った。
オルゴールから流れるメロディーは、どこまでも優しく、綺麗な音だった。
アニメ設定を無理矢理フィディルシェにこじつけてみる。
フィディオはルシェのことをずっと避けていました。何も知らないルシェが羨ましかったから。でもずっと気になってはいました。
そしてオルゴールの音色を聞いて部屋を覗いてみれば眠るルシェの姿があって、こんな所で寝てたら風邪ひくよな、ちょっとくらいならいいよな、と思って近づいたら見つかりました。
この後からヒデかフィディオかくらいの感じでほとんどずっと一緒に居ればいい。
ちなみに眠るルシェの頭を撫でたのは幽霊となったミスターK、という裏設定が。
>>2011.1.7
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