短編①
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昨日、お頭に「好きだ」と言われた。
「俺の女になって欲しい」とも。
以前からお頭に好意を寄せていた私は喜んで頷いて。
・・・・・・・・・・晴れてお頭と恋人同士になれた次の日。
島に上陸して、初めてのデート。
と喜び勇んでお頭の部屋に行った。
「お頭っ失礼しまー・・・・・・・・」
軽いノックの後返事を待たずドアを開けたのが、いけなかった。
中に居たのはお頭と、見たこともない美女。
美女はお頭の頬に手を添えて何だかいい雰囲気。
「・・・・・・・・・・・・した」
私はそのまま静かにドアを閉めた。
何ということ。
告白されて次の日にもう浮気!?
これは怒ってもいいかな、いいよね。
それとも海賊はこんなもんって諦めるべき?
どっちにしてももう終わったな・・・私の恋。
恋人らしいこと何もしなかった。
ていうかこのまま船には居られない。
とりあえず身1つで船を降りて町をふらつくことにした。
このままここで暮らすのも悪くないかなあなんて歩きながら思う。
それか船で愛人として暮らす覚悟を決めなきゃ。
「・・・・・・・・・・・どうしよう」
ぽつりと呟いたのは独り言。
でも、
「何がどうしよう、だ」
「へ?」
返事が返ってきて驚いた。
ばっと振り返ればそこに居たのは例の如くさっき見たお頭の姿。
「お頭・・・・・・何で」
何で、ここに。
「お前が船を降りたっつーから探してたんだよ。何で1人で来てんだ、お前は」
いつになく真面目な顔で見つめてくるお頭の顔に胸が痛む。
「何で、って」
それはこっちの台詞で。
「・・・・・お前は俺の女だろう?」
「2番目の、ですか?」
「・・・・・・・・・2番目?やっぱりお前、さっきの」
「わかってます。お頭は海賊で、海賊は自由で。束縛しちゃいけないってわかってます」
ただでさえお頭は強くてカッコ良くて、
有名で。
そんな人に私だけ、なんて望んじゃいけなかった。
「おい、ちょっと待てアコ!」
「はっ!もしかして2番目ですらなかったりしますか!?」
そしたらさすがに船に戻るの考えちゃうなあと衝撃を受けていると、
「いい加減にしろ」
「え、」
強引に唇を塞がれて何も言えなくなった。
「・・・・・・・・・・・っは」
「アコ、落ち着いて聞け。俺が愛してんのはお前だけだ」
「嘘」
「嘘じゃねェ。いいか、お前がさっき見たのは女じゃないんだ」
真っ直ぐに覗き込まれた瞳に、
お頭の口から語られる衝撃の事実。
女じゃ・・・・ない?
あんな美人が!?
「・・・・・・・男の人?」
「そうだ」
「・・・・・・・・・わかりました」
こくりと頷くお頭に私はすべてを理解した。
「いや、お前絶対わかってねえだろ」
「お頭は本当は男性が好きで、私を恋人にしたのは女避けってこと、誰にも言いません」
「・・・・・んなこったろうと思った。あのな、俺が好きなのは女で、愛してんのも欲情すんのもアコだけだ」
「一言余計ですお頭」
何処か呆れたような顔で私にそう告げるお頭の目に嘘はなくて。
嬉しいやら恥ずかしいやらだけど、今はそれどころじゃない。
「とにかく、2番目も3番目もねえ。わかったか?」
「・・・・・・・・でもうちにあんな趣味の方居ました?」
「目覚めたんだそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・・え」
「白ひげんとこにイゾウって居るだろ?」
「あ、はい」
「前から憧れてたんだと」
ああ、言われてみれば確かに似てたかもしれない。
え、でも。
「でも結構いい雰囲気でしたよね?」
「あれはな、俺が大爆笑したらキレてその気になっちまっただけだ」
「・・・・・・・・・・・何と」
「全部お前の勘違いってことだ」
ガン、と頭を殴られたような衝撃。
「も・・・・・・申し訳ありません、でした」
がっくりと肩を落としてうな垂れた私の髪が、優しく撫でられた。
「・・・・・・怒って下さい、お頭」
でなきゃやりきれない。
けれどそんな私を見つめるお頭の目は酷く優しくて。
「すぐに説明しなかった俺にも非はあるさ。アコだけが悪いんじゃねえよ」
「でも」
「誤解が解けたんならそれでいい。これからもずっと俺の側に居てくれるんだろ?」
「・・・・・っ」
優しくて、大きいお頭が大好きだ。
今心からそう思った。
「どうなんだ?」
「勿論ですっ!」
「よし、じゃあ改めてもう1回」
「もう1回?」
何が?と言う前に、唇が落ちてきた。
ちゅ、というリップ音を残して離れた。
「恋人としてのちゅー、だ」
「・・・・・・・・・・・・・・そういえばさっき」
お頭にキスされたんだった!
「さっきのは口封じのキスだったからな」
「おかげで落ち着きました・・・・ハイ」
「だっはっは!まあ俺もそんだけ必死だったんだ、許してくれ」
なんて楽しそうに笑うお頭が、必死?
「必死、でした?」
「見えなかったか?そりゃ必死にもなるさ。お前を落とすのにどれだけ苦労したか」
・・・・・・・・・あ、きゅんときた。
「私だけって信じてもいいですか?」
「ああ、信じとけ」
いくらでもな、と言いながら今度は長いキスをした。