短編①
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「アコ、それは?」
廊下でベンさんとすれ違った時、
ベンさんが私の持ってる書類に目をやった。
「あ、これお頭が持ってきてくれって」
さっき食堂でご飯食べてたら、
お頭が私にそう言って渡してきた書類。
ちゃんと仕事する気あるんだ、と喜んで受けた。
ご飯も食べ終わったので今から持って行くところ。
「・・・・俺が行こう」
「え、でも」
「お頭が素直に仕事すると思うか?」
「・・・・でもこれを私に持って来いって」
言ったってことは。
と思ったんだけど、ベンさんは難しい顔で、
「仕事にかこつけてお前で遊ぶ姿しか見えないんだがな、俺には」
呟く。
・・・・ああ、確かに。
「・・・よろしくお願いしますベンさん」
「代わりという訳じゃないが、この後手伝ってくれるか、アコ」
「はい、勿論」
書類をベンさんに渡して、一安心。
「書庫の簡単な整理だ、頼む」
「じゃあ私先に書庫行ってますね」
「ああ。・・・・アコ」
さあいざ書庫、と踵を返せば、ベンさんの真剣な声に止められた。
「はい?」
「お頭と2人きりにならないようにしとけ」
「え・・・・はい」
ベンさんはそれだけ言うと、何事もなかったかのようにお頭の部屋に向かった。
・・・・変なの。
思いながら書庫のドアを開けたら。
「・・・・うわお」
思わず声が出た。
・・・それ程の惨状だった。
いやいや、何事もやってやれないことはない!
とりあえずまとめてこの辺に置いて。
ここはこんな感じでー。
・・・この棚動かしたいけど私じゃ持てないな。
でも試しにちょっと動かしてみたい。
・・・よし。
棚に手をかけた瞬間、何かがするりとお腹に回って、
「っぴゃああ!?」
驚いで一気に力が抜けた。
「こら、駄目だろアコ。こういう重てェもんはベンにやらせとけ」
「お頭?何でここに・・・仕事は?」
お頭の腕が私のお腹に回されていて、
見上げればお頭は何処か拗ねたような顔で私の頭に顎を乗せた。
「可愛いアコの危機だからな、仕事なんてしる場合じゃねェだろう」
「私の危機ですか?大丈夫ですよーぎっくり腰とかにはならないですから」
「腰は大事だからな、夜の為に」
「夜?・・・っていうかお頭、ベンさんは?」
「すぐ来るさ。それよりアコ、俺はお前が来てくれなくてどんなにショックだったかわかるか?」
「・・・いやでも書類持って行くだけですし」
「わかってねェなぁアコ。そこも可愛いが」
そう言ってお頭がくるりと私を回した。
向かい合う形になって、あれよあれよという間にお頭の顔が近づいた。
瞬間。
「そこまでだお頭」
お頭が目の前から消えた。
代わりに見えたのは、一見いつもと同じ表情のベンさん。
・・・・だけど。
お頭は消えた訳ではなくベンさんに蹴り飛ばされてただけだったようで、すぐに起き上がった。
「船長を蹴るのはどうかと思うぜベンちゃん。しかも俺のアコの前で」
「訂正しろ。俺たちのアコ、だ」
「いや、間違ったことは言ってねェよ俺は」
「・・・ここで決着をつけるか」
「アコの前で出来んのかァ、ベン」
「場所が何処だろうと関係ないな」
あれ。
・・・・何これ。
何かベンさんがいつもと違う。
「あ・・・・あの2人とも?よくわかりませんがこの部屋片付けちゃいませんか?」
一瞬火花が見えた気がしたので、
慌てて2人の思考を片付けに戻そうと試みる。
「そうだな、阿呆は放っておいて片付けが先だ」
「ま、阿呆には違いねェ。反論はしないが・・・そろそろ限界なんじゃないのか、ベン」
「何のことだかな」
睨み合う2人。
「ヤニ切れ、だ。ここは俺とアコに任せて吸ってくればいい」
「あんたとアコを2人きりにさせることの方が我慢出来ん」
「信用ねェなァ。アコは俺と2人の方が嬉しいだろ?」
「え」
「働かないお頭と一緒に居て何処がいいんだ。・・・そうだろう、アコ」
「ええええ!?」
矛先が私に向いたよ!?
「ずーっと仏頂面してる野郎と居るより俺と居た方が楽しいもんな?」
「隙あらば押し倒そうとしてる男と一緒が楽しい訳ないということに気づかないから阿呆なんだあんたは」
「え、いやあの・・・・ですね?」
「頭が固いなァベンは。アコが怖がるだろう?」
「・・・アコ」
お頭の片腕が私の右腕を取り、
ベンさんの手が私の頬にそっと添えられ。
・・・・何この状況?
とりあえず2人は私の言葉を待っていることだけはわかる。
・・・・言わないと。
「さ・・・・3人で片付けた方が早く終わります・・・よ?」
よし!言えた!
・・・と満足する私と反対に、2人の顔は呆然。
「・・・可愛いなぁアコは」
「・・・・それには同意する」
「・・・褒められても1人じゃやりませんよ私」
可愛いと言われれば嬉しいけど、2人のその手には乗らないんだからね!ふふん!
「・・・やるぞお頭」
「ああ、仕方ねェ。さっさと終わらせてアコはどっちのモンかはっきりさせるとするか」
「・・・・・お頭?ベンさん?」
何の話しですかね。
首を傾げた途端お頭が私の唇に人差し指を重ねて来た。
「それだ、アコ」
「・・・どれですか?」
「ベンのことは名前で呼ぶのに俺のことはお頭って呼ぶだろ?」
「そりゃお頭だし」
「シャンクスって呼んでくれ」
「呼ばなくていい、アコ」
「船長命令」
「いい歳してみっともないと思わねェのかあんたは」
「思わねェ。なぁ、呼んでくれないかアコ」
お頭の必死さに戸惑ったけど。
・・・・まあ、名前呼ぶくらいなら。
「・・・・しゃんくす」
呼んだ瞬間片腕でがばっと抱きしめられて、
でもすぐに離れた。
・・・訂正、ベンさんにお頭が剥がされた。
「アコ。・・・・俺の名前も呼べるな?」
「べ・・・ベックマン・・・?」
・・・・でいいの?
不安に思いながら名前を呼んだらベンさんが優しく、ふ、と笑ってくれたのでほっとした。
「さ、手を動かしましょ!ちゃっちゃと片付けましょー!」
本を何冊か手に取った私をお頭が不意にじっと見つめて来た。
「・・・なぁ、アコ」
「はい?」
「お前、俺とベンのどっちかを選べって言われたら・・・・どっちを選ぶ?」
どどどっ、と一気に本を落とした。
どっちかを、選ぶとしたら?
「・・・アコ、お頭の気まぐれだ。無理に答えることはない」
「・・・・私」
私が、好きなのは。
「・・・2人が好きです」
「・・・・どっちかって言っただろ?」
「嫌です無理です。どっちも好きです」
呆れ顔のお頭と、
苦笑するベンさんの真ん中まで来て。
お頭の片腕と、
ベンさんの片腕を自分の両腕に絡めた。
「こうすれば、ほら。2人とずっと一緒に居られます」
だって選べないもん。
どっちか、なんて。
でも、それでいいよね?
「・・・・まったく可愛いなアコは」
「ふん、さすがのお頭もアコには敵わないときた」
「お頭はちゃんと仕事して、ベンさんは煙草減らして下さいね!」
「・・・・だそうだ、ベン」
「・・・・だそうだ、お頭」
だって私も海賊。
1つなんて、
選べません。