短編①
夢小説設定
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「好きです、付き合って下さい」
「へ!?」
知らない男の人に告白された。
とは言っても、まったく知らない訳じゃない。
部署は違ったけど顔は知ってた。
すれ違えば挨拶はする、その程度の人だった。
なのに、いつものように挨拶をした直後のことだった。
後でわかった話では、今月いっぱいで彼はこの会社を辞めるとのことで。
・・・・・・・・だから私に、告白してくれたんだと思った。
「で、何て答えたんだ?」
「ごめんなさいって」
会社の同僚であり、同じ部署の友人でもあるシャンクスに現場を見られていたらしい。
ほんの一瞬、通りすがりに見たと。
そのシャンクスとランチを一緒にとることになって、
お気に入りのレストランで食後の珈琲をすすりながら私はため息を吐いた。
「まさか私が告白されるなんて思わないじゃん。しかもよく知らない人にさ」
「お前今付き合ってる奴居ないだろ?」
「居ないけど」
「好きな奴は」
「・・・・・・・・・・・・・こほ」
カップをテーブルに置いて、私は咳をした。
正直な話、好きな人は、いる。
「ほう、好きな奴がいるとは知らなかったな。俺の知ってる奴か?」
「・・・・・・・・珈琲美味しいねえ」
「お前ホントわかりやすいよな」
「ほっといて欲しかったなそこは」
呆れたようなシャンクスにこみあげる寂しさ。
誤魔化すのが下手だってのはわかってたけどさ。
「告白しないのか?」
「・・・・・・・・・・・・どうせフられるだけだし」
「そうやってすぐ決め付けるのがお前の悪いとこだ、って言った筈だな前に」
「うーん・・・・じゃあ告白してきっぱりフられてすっぱりこの会社辞めるかなあ」
「何も辞めることないだろう」
「私そこまで神経図太くないんですけど!」
そんな気まずい関係になってまでこの会社に留まっていられない。
「ちなみにどんな奴だ?」
「適当にやってますみたいな顔して成績抜群、他の人からの信頼も厚い人」
「・・・・・・・・・ベンか?」
「ご想像にお任せします」
「まあそう言うな。何ならケーキでもパフェでも奢ってやるぞ」
「ぐっ」
た・・・・食べ物なんかに釣られるものか!
「ほら好きなの頼めアコ」
にこにこと人の良い笑みを浮かべてメニューを見せてくるシャンクスを睨みつける。
「今ダイエット中だからいらない」
「ダイエット?また何でそんなもんしてるんだ?・・・・好きな奴の為か?」
「・・・・・うん」
「何か言われたのか?にしたってアコらしくないんじゃねえのか」
突然顔を顰めたシャンクスに居心地が悪くなる。
もやもやする胸。
「別に、何か言われた訳じゃ、ないけど」
「けど?何だ」
シャンクスの言葉が少し刺々しい。
「・・・・・けど、好きな人には少しでも良く思って欲しいじゃない?」
搾り出した答えは本当の気持ち。
でもシャンクスは、
「そんな男やめちまえ」
あっさりと、でも真剣な目でそんなことを言う。
「やだ」
「そんなにいい男か、そいつは」
「だって好きなんだもん」
いざって時頼りになるところとか、
子供みたいな笑顔とか、
優しいところとか。
好きなんだもん。
「シャンクスが」「俺が居るだろ?」
・・・・・・・・・・・・ん?
声が重なって思わず耳を疑った。
「え?・・・・シャンクス?」
「・・・・・・・・お前今何て言った?」
きょとんとした顔でお互いを見つめる私達は、今周りにどんな風に見えてるだろう。
「え、と。じゃあ改めて言うけど、シャンクスのことが好き。・・・ってことで」
「ことで?」
「私はそろそろ戻って午後の準備しなきゃなので!」
伝票を手に持って立ち上がって、
そさくさと逃げようとしたところ、
「今夜」
「うわっ」
強く手を掴まれた。
「俺から逃げられると思うなよアコ」
「・・・えーと私は早く戻って辞表を提出、」
「させるか」
「だから私そこまで神経図太くないって!」
「必要ないって言ってんだ」
「え」
「必要ないだろう?両思いなら」
「ええええ!?」
そしてぱっと離された手。
シャンクスは不敵な笑みで、私にとどめを刺す。
「俺はフられても辞めるつもりもないし諦めるつもりもないんで、よろしく頼む」
・・・・・・・・そんな覚悟、
考えたことなかった。
今夜もう1回、シャンクスに。
好きと伝えてみようかな。
答えがどうであろうと、
これからもずっと好きだって。