短編①
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「アコちゃん悪ィけどアレ頼む!」
「了解です!」
「アコー下ごしらえいいか?」
「はーい、いいですよ」
「アコすまん、片付けよろしく!」
「え、あ、はい」
「アコ!今日の見張り番エースなんだよー差し入れしてやってくれ!」
「はー・・・・・い」
ええとまず何するんだっけ、
アレってなんだ、何すればいいんだ私。
あ、そっか。これね。
はいはい。
で、下ごしらえはこの順番で、
それからあそこの片付け・・・・も私がやるの!?
最後に見張りエースの差し入れ。
あああもう!
私1人なんですけど!
・・・・・とはいえ、そんなこと言えないので頑張るしかない。
サッチさんに頼まれたことも、
下ごしらえも片付けも順調に終わった。
でも、
エースへの差し入れを作ってる頃には厨房に誰も居なくなり、
私1人になった。
正直ものすごく疲れたし、
今すぐにでも横になりたいくらいふらふらだけど。
頭にエースの笑顔を思い浮かべて、
頑張ることにした。
「お待たせエース・・・お疲れさま」
何とかエースの差し入れ、出来た。
「おうサンキュ・・・っつーかお前の方が疲れてんじゃねェか。大丈夫か?」
「大丈夫だよー」
心配されないように笑ってみるけど、
「全然大丈夫に見えねェ」
真面目な顔のエースに心配されてしまった。
「う・・・・」
「何か大変なのか?俺手伝うぜ?」
「や、大丈夫だよう。今日も後は寝るだけだし」
「・・・なんかして欲しいことあったら言えよ」
「うん、ありがとねエース」
「・・・・なァ、アコ」
エースの真剣な顔と、まっすぐな目。
「・・・・うん?」
エースは数秒私を見つめた後、
諦めたように目を逸らしてため息を吐いた。
「やっぱいい。ゆっくり寝ろよ」
「エースも、見張り頑張ってね」
「あァ、ありがとな」
部屋に着いて、迷わずベッドにダイブした。
もう、駄目。
心の中で呟いて目を閉じて、
次に目を開けた時にはもう朝だった。
「おはよう御座います・・・・」
昨日の疲れが残ってる状態だったけど、
そんなことも言ってられないので厨房へ。
「おーアコちゃん昨日は助かったわ。御礼に今日は休んでいいぜ?」
「いえ、そういう訳には。お気遣い有難う御座います大丈夫です」
「でも疲れたろ?」
「平気です。時間もないですし取り掛かりますね。卵もらっていいですか?」
サッチさんの気遣いは嬉しかったけど、
素直にはいと言えなかった。
・・・・本音を言えば、休みたかった。
でも。
私だって白ひげ海賊団の一員だから。
頑張らないと、いけないんだから。
怒涛の朝食を乗り越えて、
私もゆっくり朝ごはんの時間。
「はぁ・・・・」
思わず出た盛大なため息に、
「でっけェため息だな」
隣に座ったエースが呆れ顔。
「あ、ごめんね」
「謝ることはねェけどよ・・・何か悩んでんのか?」
「・・・・ううん、別に」
「俺には言えねェのかよ」
「悩みなんてないって。ここに居られて私幸せだし」
ただちょっと、疲れただけで。
・・・言えないけど。
「アコ、疲れてんだろ?」
ぎく。
「そんなこと、」
「もっと甘えていいと思うけどな、アコは」
もう十分甘えてる。
強くもない、ただ料理が出来るだけの私がここに居られるんだから。
だからもう甘えられない。
だから、
「大丈夫」
「・・・・・もう聞き飽きたっつーの」
「え?」
「アコの大丈夫、は聞き飽きた」
「え、でも」
大丈夫、って言葉は。
弱音よりいいと思う、のに。
何故かそう言うエースの顔は怒ってるように見えた。
「アコ」
「・・・・・何?」
「この後は?」
「・・・後片付け」
「んじゃそれ終わったら俺の部屋な」
「エースの部屋?」
「絶対来いよ、待ってるから」
「え、うん」
それだけ言ってエースは立ち上がって、
最後にもう1回、
「絶対だからな、アコ」
念を押して去って行った。
・・・・・・何今の。
私が頑張ることでエースを怒らせてしまったんだろうか。
不安を抱えながら後片付けを終わらせて、
約束通りエースの部屋の前。
・・・・・部屋の、前まで来たはいいけど。
入るのに躊躇う。
どうしよう、でもいつまでもこのままでいる訳にもいかないし。
ああ、でも!
「何やってんだよ、アコ」
苦笑したエースがドアから顔をのぞかせた。
「え・・・エース」
「ほら、入れって」
「・・・・お邪魔します」
緊張しながらエースの部屋に入ったのは初めてかもしれない。
「どうした?」
首を傾げるエースは、さっきとは違って怒ってなさそうでようやく私はほっとした。
「さっきエースが怒ってるようにみえたから・・・」
控えめに口にしてみれば、
「あー・・・悪い、そんなつもりじゃなかったんだ。ま、とにかくそこ座れよ」
「あ、うん」
気まずさそうに笑って、エースがベッドの上を指さす。
本当に良かった、と心から安堵してベッドに座った。
「よし。じゃあまずコレな」
「・・・・これ、って」
目の前に差し出された美味しそうなクッキーと、紅茶。
「サッチに作ってもらった」
「サッチさんに?」
「俺じゃ作れねェからな」
まあ、そうなんだろうけど。
「一緒に食おうぜ?」
「いいの?」
「何なら食わせてやるけど?」
「え、」
「ん」
にっこり笑顔で私の前にクッキーを突き出すエース。
は・・・恥ずかしい!
「じじじ自分で食べるよ!」
「いいから口開けろって。ほら」
「・・・・・う、あ」
仕方なく口を開けると、優しく放り込まれた甘い香り。
さくっとした触感。
美味しい。
「美味いな!」
「うん、美味しい」
美味しいクッキーと紅茶と。
幸せそうなエースの笑顔。
ああ、何かこんなの久しぶりかも。
「有難うねエース。おかげでまた頑張れる」
嬉しかったからお礼を言ったのに、
私の言葉を聞いてエースは何故か小さくため息。
「あのな、俺はお前に頑張って欲しくてこんなことしてんじゃねェ」
「・・・・そうなの?」
「うし、じゃあ次」
「次?」
エースはクッキーと紅茶を下げると、
私の隣に座った。
そして、
「・・・・・う?」
エースは私の頭を自分の方に倒す。
身体ごと倒れた先は、エースの膝で。
・・・つまりそれは、膝枕。
「硬くて悪いけどよ」
へへっ、と見上げるエースの顔は優しい。
甘えたく、なる。
「・・・私何すればいいの?」
「何もしなくていいぜ。寝てろよ」
・・・・寝るの?この状態で?
「・・・・でも、お昼の準備」
「今日は休み」
「え!?」
「俺が決めた」
「・・・・とってもエースらしいけどそれ怒られるの私」
「あとでサッチに言っとく」
「でも、」
もっと頑張らないといけないのに。
エースはそんな私の髪を撫でた。
「アコの髪は気持ちいいな」
「・・・くすぐったい」
「でも目に隈出来てる」
「嘘」
「肌も荒れてるってイゾウが言ってた」
どん、ガン、と次々に頭に落ちる衝撃。
「アコは頑張り過ぎなんだよ。そんで甘え下手」
「そんなこと・・・ないよ」
「もっと甘えろよ・・・って言っても無理なのはわかった」
「・・・うん」
「だからもう言わねェ。俺が勝手にやる」
「・・・・・ん?」
どういうこと?
「俺がアコを甘やかしてやるよ」
ぼ、っと顔から火が出たように熱くなった。
・・・落ち着いてみればこの状況って、
すごく恥ずかしいもので。
慌てて起き上がろうとしたらエースに顔を押さえつけられて、
「むぐっ・・・・何すんのエース」
「俺の側離れんの禁止」
「・・・・でも恥ずかしいよこれ」
「俺は嬉しい」
・・・どうやら逃がしてくれそうにはない。
「・・・いつもは自分が甘やかされてるのに」
「甘やかすのも得意だぜ?弟居たし」
「弟君にはいつもスパルタだったくせにー」
「・・・そんなことねェよ」
思いっきり目を逸らすエースに少し笑ったら、
「そういう顔、してろよな。いつも」
「え?・・・いつも、してない?」
「してない。してたら今こんなことしてねェよ」
「・・・・何で今日こんなことしてくれてるの?」
思い切って聞いてみた。
「お前が、無理して大丈夫って笑うからだ」
「・・・だからこんなことしてくれたの?」
「惚れた女を心から笑わせてェと思うのは普通だろ」
・・・・初めて、聞いた。
「・・・・エース、私の、こと」
「あァ、好きだ。大好きだ、愛してる」
「・・・・っ、私が無理して笑ってるんだとしたら、それは・・・エースが好きだからだよ」
「・・・・え?」
「無理してでも笑いたいと思うのは、好きだから」
好きな人に笑顔を見せたいと思うから。
「ンなこと言ってっと・・・・キスすんぞ」
「・・・してくれるの?」
エースは私の言葉に一瞬目を見開いて、
それからすぐに不敵な笑みを浮かべた。
そしてゆっくり顔が近づいて、
唇が重なった。
「もうあんな顔させねェからな」
「・・・・うん」
明日からは、
今日より少しだけ甘え上手な自分になれそうだ。