短編①
夢小説設定
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肌がぴりぴりする。
足が竦む。
動けない。
・・・・・・・・・・・・・怖い。
「答えろアコ」
「・・・・・・・・・っ」
声が、出ない。
私を睨むその人からは、いつもの笑顔はない。
何でこんなことになったんだっけ。
「おか・・・・・しら」
辛うじて出た言葉にならない声と一緒に、
涙が零れた。
数日前、
偶然白ひげ海賊団のマルコさんと遭遇した。
敵とはいえ、マルコさんが私を相手にどうすることはなく、むしろ仲良くご飯まで食べた。
問題は、
その時マルコさんに言われたことだ。
「俺に何も言わずに行くつもりだったんだろう?」
「ち、がっ」
「なら何故俺に言わなかった」
「・・・・・・・・それはっ」
「白ひげの船へ来ないか、と誘われたと。俺に言わないで行くつもりだったんじゃねえのか」
敵に向けられる、その鋭い視線が。
まさか私に向けられる日が来るなんて思わなかった。
目の前立つお頭は、
力強く私の顔を掴んだ。
「・・・・やっ」
「嫌?何が嫌なんだ」
「はな、して」
「離さねえよ」
確かに、言われた。
マルコさんに、歓迎するから気が向いたら来い、と。
でも私は、
「行かない、って・・・・言いました」
「・・・・・ほう?」
「ずっとお頭の側に居る、って私・・・・っん」
話をしてる途中で乱暴に唇を奪われた。
「・・・・や、・・・っは」
強引に唇を割って入ってくるお頭の舌が私の口内を荒らす。
「口だけなら何とでも言えるな」
ゆっくりと唇を離すと冷たくそう突き放す。
まだ怖い、けど。
「・・・・・・・・・・・・・・・か」
「・・・・・・何?」
「じゃあどうすればいいんですか!ていうかお頭は私とマルコさんどっちを信じるんですか!」
「・・・・・・それは」
お頭は怖いけど、それよりも悔しくなった。
「マルコさんに何言われたのか知りませんけどね、私がお頭の側を離れるなんて考えたことないです」
「なら何故言わなかったんだ」
「私は言いました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつ?」
幾分か柔らかくなったお頭の表情に少しだけほっとしながら、私は続ける。
「2日前。ちゃんと行かないって言いましたからね、とも言いましたよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺に、か?」
「他に誰が居るんですか」
「そん時俺は」
「めっちゃ飲んでめっちゃ酔ってました」
ふ、と一気に空気が緩んだのがわかった。
「何でそんな大事なこと酔ってる時に言うんだ!?」
そしていつものお頭の顔。
「だってお頭いつも忙しそうにしてて飲んでる時くらいしかお話出来ないじゃないですか!」
あんぐりと大きく口を開けて。
さっきまでの覇気は何処へやら。
お頭は思い切り肩を落とした。
「・・・・・・・はめられた訳か、俺は」
「・・・・・・・何て言われたんですか?」
「お前を白ひげ海賊団に誘った。返事は本人に聞くんだな、と」
信じられない。
それだけでこの仕打ち、なんて。
「・・・・・・・・・・すまなかった」
お頭は頭を下げてくれた。
これだけでもすごいことだし、
許す許さないの問題じゃない。
だってこの船の船長で、私はただの船員で。
・・・・・・・・なのに、
「・・・・・・・・・・った」
「・・・・ん?」
「怖かった、すごく怖かった」
私の口から出る言葉はただそれだけ。
「・・・ああ」
「まるでお頭の敵になった気分でした。それが、すごく怖かったんです」
いつもの笑顔が嘘のように。
「・・・・・・・・・・アコが、俺から離れたがってるんじゃねェかと思ったら、抑え切れなかったんだ」
「・・・・こわ、かった。でも私、あの時ずっと思ってたことがあったんです」
「思ってたこと?」
「助けて、お頭。って」
「・・・・・・・・そうか」
「おかしいですよね。でも、私にとってお頭はそれくらい大好きな人で、必要な人なんです」
だから私がお頭の元を離れるなんてこと。
あり得ない。
「悪かった。・・・・反省してる。アコが許してくれるまで側に居る。何でもする」
そっと私の肩に触れた手がいつもより遠慮がちで。
少しだけ笑えた。
「いつもみたいに、笑ってて、欲しいです。あと」
「・・・・・・・・・あと?」
「優しく、抱きしめて下さい。それだけで、十分です」
そう伝えた瞬間、
そのままお頭の胸に顔を押し付けられた。
「おかっ」
「年甲斐もなく嫉妬した。・・・・好きなんだ」
「・・・・・・・・・・はい」
「優しくすると約束しよう。だからこのまま、な」
そしてそのまま押し倒された。
「・・・・・・・・・・あれ?」
「お前が俺だけのものだと、確かめさせてくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・もう」
言いながら私も力が抜けていく。
目の前のお頭は優しく笑ってくれてるし。
・・・・・・・・・ま、いっか。