短編①
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『新着メール問い合わせ中・・・』
ドキドキしながら、携帯の画面とにらめっこ。
でもすぐにぱっと変わった画面に、
『新着メールはありません』
・・・・・深いため息が出る。
・・・シャンクスは社長で、
忙しいのもわかってる。
私だってそれなりに忙しい。
わかってる。
・・・・・わかってる、つもりだ。
でもメール1通くらい、くれたっていいじゃない。
そう思うのはワガママですか。
3日に1通、メールを送り続けて2か月。
1通も返信がないことが悲しくて、
・・・・泣きそうな私は、
駄目な女でしょうか。
明日は早番だから、もう寝なきゃ。
仕方なくベッドに入ろうと携帯を置いた時、
ブルルと携帯が震えて、音楽が鳴った。
「!」
もしかして、と勢い良く取れば、
【シャンクス】の文字に心が震えた。
「もしもしっ!!」
『アコ?・・・寝てたか?』
「ううん、大丈夫」
2か月ぶりのシャンクスの声。
それだけで・・・・こんなにも嬉しい。
『今から会いたい』
「あ・・・・でも私明日早番で、」
でも、会いたい。
・・・・・でも、もう寝ないと。
2つの欲望が脳内で戦いだす。
『・・・そうだな。すまん』
「・・・・ごめんね」
『いや・・・』
・・・・お互いに言葉が出てこない。
次いつ会えるか、なんて保障がないから。
私も私で、
会いたいと言えばいいのに、
その言葉が重荷になるんじゃないかと思ったら。
それだけで、何も言えなくなる。
『・・・アコ?』
「・・・・何?」
『愛してる』
「・・・っ、聞きたくない」
シャンクスの『愛してる』を、
電話超しでなんか聞きたくなかった。
『アコ、聞いてくれ』
「聞きたくない!」
頭に血が上ってつい、叫んだ。
ぼろぼろと、涙が頬を伝って流れていく。
『・・・アコに辛い思いをさせていることはわかってる。だが別れるつもりはねェ』
「私、だって」
別れたくない。
好きだから。
好きだから・・・こんなに苦しんでる。
『明日早番だと言ったな?』
「え、うん」
『夜会いに行く』
「嘘。・・・・無理だよ」
2か月もまともに連絡出来なかったのに、
明日急に会うなんて。
『・・・・そう、だな。すまん』
「いいよ・・・無理しなくて」
『なら電話する。声だけでも・・・聞きたい』
「いいよシャンクス。変に期待、したくない」
期待して、がっかりするのが怖い。
声からしてシャンクスだって疲れてるし、
辛そうだから。
『する。必ず』
力強い声で言い切ったシャンクスに、
それだけで嬉しくなって、
「・・・本当?」
『ああ、電話する』
「・・・・待ってる」
怒りも悲しみも、少しだけ消えた気がした。
『じゃあ、また明日な』
「うん、明日」
そう言って電話を切って、
しばらく携帯を握りしめた。
・・・大丈夫。
これで明日頑張れる。
大丈夫。
まだ、シャンクスと繋がっていられる。
次の日。
仕事を終えて家に戻った私は、
携帯のマナーモードを解除して、ずっと側に置いておいた。
食事の時も、
お風呂の時も、わかるように耳を澄ませて。
けれど22時になっても、
23時になっても。
・・・・電話は来なくて。
ベッドに入って、枕元に携帯を置いて。
きっと電話は来ると、信じて。
電話が鳴ることはないまま、
朝は来た。
「・・・・着信なし」
電話どころか、メールも来てない。
・・・・必ずするって言ったじゃん。
ほらね。やっぱり無理なんだよ。
壊れそうな頭で、
仕事に向かった。
でも本当に壊れちゃったのかな、頭。
ぐらぐらで、ガンガンで仕事にならない。
結局、
「具合悪そうだから早退したら?」
と上司から言ってもらえたので、
言葉に甘えて早退することにした。
そして私はそのまま家には帰らず、
シャンクスの会社に、向かった。
「シャンクス社長をお願いします」
私の名前を出せばわかってくれると思うので、と。
受付のお姉さんに話したら、
電話をした後、こちらでお待ち下さい、とのこと。
すぐに、シャンクスは来た。
「アコ!」
「ごめんね、突然」
久しぶりに見るシャンクスは、やっぱり疲れてるみたいだった。
「・・・・すまん」
「もういいよ、シャンクス。もう大丈夫」
もう、頑張らなくていい。
シャンクスも、私も。
「・・・アコ?」
「シャンクスは仕事に専念して。私と・・・・別れて」
「アコ、それは受け入れられねェ」
シャンクスに会いにきたのは、
諦める為。
シャンクスへの想いを諦めて、
新しい恋をする為に。
「お願い。・・・・シャンクス」
そう懇願したら、
怒ったような、真剣な眼差しに見つめられた。
「電話出来なかったことは悪いと思ってる。でもそれだけは承諾出来ない」
「・・・・好きな人が出来たから」
シャンクスが怒るところを、
私はほとんど見たことがない。
でも怒ってもいい。
嘘をついてでも、怒らせてでも。
シャンクスを自由にしないと。
・・・私も、自由になりたい。
「嘘だな」
「嘘じゃないよ。シャンクスより素敵な人」
「嘘だ」
「優しくて、いつも側に居てくれる」
「・・・・アコ、嘘つくな」
「その人も私のこと好きだって言ってくれてるの。だから、っ」
だからもう別れて、と言いかけて、
言えなかった。
言い切る前に、唇が塞がれてしまったから。
「・・・・っん」
「・・・そんな泣きそうな顔で言うことじゃないだろう、アコ」
ほんの一瞬だったけど、久しぶりの口づけ。
甘くて、優しくて。
・・・・負けてしまいそうになった。
「・・・っ、さよなら!」
負けられないから、
叫んで、逃げた。
「アコ!」
シャンクスの私を呼ぶ声が聞こえたけど、
振り返らない。
走って、走って。
とにかく走った。
シャンクスには仕事があるから追いかけては来ないだろうし。
・・・・いいんだ、これで。
近いうちに携帯変えよう。
引っ越し・・・はさすがに出来ないけど鍵を変えて。
もう、会わない。
駅の近くまで来た時、
急に腕を引かれた。
「なっ・・・・え、」
何事かと声を出しかけて、止まった。
「・・・何、してるのシャンクス」
私の腕を強く掴む、シャンクスが居た。
「追いかけてきた」
「それは見ればわかるよ・・・じゃなくて、仕事」
「仕事してる場合じゃねェだろう」
「・・・・痛いよシャンクス」
腕が、
心が。
「悪いが離さねェ。・・・さっきの言葉、撤回してくれるか?」
「・・・・・やだ」
「アコ」
「早く帰らないと副社長さんに怒られるよ」
「毎日怒られてるさ。・・・それより、今ここでアコを失う訳にはいかねェんだ」
「・・・仕事、頑張ってよ」
今まで頑張ってきたことを私の為に無駄にすることなんてないんだから。
「アコ、聞いてくれ。あと1か月待てば1週間のまとまった休みがとれる」
「・・・・・信じない」
一瞬信じかけた。
でも、もうだまされない。
そんな私にシャンクスは苦笑して、
「これが証拠だ」
ほら、と私に1枚の紙を渡した。
そこに書かれていたのは、
『○月△日より1週間の休日を約束する』
・・・・1か月後の日付とシャンクスの名前、
そして確かに1週間休み、と書かれてた。
「アコのシフトもまだ間に合うだろ?」
「・・・・仕事入れる」
「なら勝手に会いに行く」
「・・・・1か月、長いよ」
「わかってる。今まで散々待たせてきたことも」
「じゃあっ、」
いい加減に、解放してよ。
「でも離さない。1週間の間、アコが望むことなら何でもする」
「・・・・・・・1週間全部デート」
「勿論だ」
「全部シャンクスのおごり」
「そのつもりだ」
「毎日何かプレゼントちょうだい」
「ああ、いいぞ。指輪でも何でも」
「・・・・会いたい。会えるときは、会いたい」
「・・・ああ」
「メール、本当はもっとしたい。声も、聞きたい・・・っ」
「わかってる」
「わかってない。私がどれだけワガママか、わかってないよ・・・」
どれだけ醜いか。
散々思い知らされてきた。
「別にいいだろうワガママで」
「良くないよ」
「俺だってワガママだ。仕事もアコも手放せねェ」
「・・・・仕事は頑張って欲しいから、いいの」
「ああ、仕事は辞めない。将来アコを幸せにする為にも」
「しゃん、くす・・・」
ぎゅ、っと抱きしめられた。
「誰にも渡す気はない。俺が幸せにすると決めてんだ」
シャンクスの想いが、突き刺さる。
「・・・・・わかった」
「・・・アコ?」
「シャンクスがそこまで思ってくれてるなら、私受け止める」
これで別れたら女が廃る。
「わがままで悪いな・・・」
「ううん、私仕事辞める。それで別のもう少しだけ休めそうな仕事にして、押しかけ女房になる」
「押しかけ女房?」
「シャンクスの家にしょっちゅう押しかけてごはん作ったり掃除したり。勝手に行く」
「ははっ、そうか」
「・・・追いかけてきてくれて、有難う・・・」
ぎゅうっと抱き着いたら、
ちゅ、と頬に唇が落とされた。
「緊急事態だからな。・・・それで、式はいつにする?」
「・・・・・へ?」
式?
「女房になってくれるんだろう?俺の」
「・・・・え、あ、それはっ」
言葉のアヤというか何というか!
「逆プロポーズされるとは思わなかったが・・・嬉しいよアコ」
顔を見ればにこにこと嬉しそうなシャンクスに、
頷くしかなかった。
でも今なら言える。
ワガママを。
「シャンクスのこと大好きだから。毎日、会いたい」
「俺もだ」
そして2人、
ゆっくりと唇を重ねた。
(2人ともワガママだから問題ない?)