短編①
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「・・・・・・・・これ、もしかしてもしかしなくても」
「・・・・・・・・・そういうこと、だな」
真っ暗な部屋。
密室の中に、まさかのシャンクス社長と2人きり。
でもこれはラブもロマンスもない。
それどころか、
「このまま朝まで2人きりってのも悪くないな」
「ととととんでも御座いませんんん!!っていうか落ちたらどうしましょうこのエレベーター」
落ちたら、死ぬ。
・・・・・・・・かもしれないという状況だ。
何でよりによって社長と一緒にエレベーターに乗り込んだ時にこんなことに!
部長が残業頼む、とか言うから!?
それとも同期のあの子が今日デートだから私の分お願い☆てへ☆
とか言って仕事を放って行ったからなの!?
どっちにしても、
2人で乗り込んで、
「あ、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
なんて言って扉が閉まって数秒後の出来事だった。
動きを止めたエレベーターは一瞬にして真っ暗になった。
故障、というやつだ。
「そう簡単には落ちないだろう」
「落ちたら地面に落ちる瞬間に飛べばいいんですよね!」
「・・・・・・・・怖いか?」
真っ暗で姿は見えないけど、社長の気遣う声が嬉しくて、少しだけ落ち着いた。
「怖いです。・・・・死にたく、ないです」
けれど落ち着くと余計に恐怖心が増してきた。
だって死にたくない。
やりたいことだっていっぱいあるし、
今年は友達と旅行の予定だって入ってるし、
・・・・・・恋愛とか、結婚とか。
「大丈夫だアコ、俺が守る」
その言葉と同時に握られた手。
カッコ良くて優しくて、
心も広くていざって時に頼りになると評判の社長で。
女性社員にモテて。
そんな人が手を繋いでくれるなんて私本当に死ぬのかも、なんて思いながら涙が溢れてくる。
・・・・・・泣いちゃ、駄目なのに。
「駄目ですよ社長がそんなこと言っちゃ。社長は生きて、この会社をもっと大きくしなきゃ」
ぎゅ、っと繋がれた手に力が入った。
「社員を守るのも社長の務めだ」
・・・・・ああ、私この会社に入って良かった。
社長がこの人で本当に良かった、と思った。
でもだからこそ。
「私、この会社大好きなんです。意地悪な上司やマイペース過ぎる同期も居るけど、大好きなんです」
「・・・・・・・・・・・ああ」
暗闇に慣れてきた目が映すのは、優しく微笑む社長の姿。
「・・・・・・だから、死にたくないです」
「俺が守る、って言っても不安か?」
「嫌ですそれ怖いです」
「怖い?」
「だって私社長にすごく感謝してるし大好きだから、私も死にたくないけど社長にも死んで欲しくないんです」
ああ、駄目だ。
ネガティブな私しか見えない。
「・・・・・・じゃあ、死なない。俺もお前も死なない。これでいいか?」
「・・・・・・・・・・え、あ、はい」
妙に自信たっぷりに言い切られて思わず頷いてしまって。
え?ちょっと待って何ですかそれ。
その自信は何処から!?
私の涙は半分出かかって止まった。
そして更に私を混乱させたのが、
「ぎゃあ!?」
突然大きく揺れたエレベーター。
背中に回された腕。
包まれたぬくもり。
「・・・・・・・・ほんとは、もっと後に言う予定だったんだが」
「へ!?」
もしかして私首!?
何かしたっけ!?
あああああ駄目だ心当たり多すぎる!
「好きだ」
「申し訳ありませんでしたっ!・・・・・え?」
てっきり何かのミスを咎められるものだと思っていた私は先に謝罪をしたものの。
耳に届いた言葉は予想とまったく違うものだった。
「・・・・・・・・今の言葉は拒否、ということかアコ?」
「え!あれ!?だって絶対怒られると思っ」
「ああ、もういい」
社長の怒ったような声に焦った私は、
瞬間何が起こったのか理解出来なかった。
ゆっくりと。
それはスローモーションで私の顔に近づいた社長の顔が、
唇が。
私のものと、重なる瞬間を。
「ずっと好きだったんだ。・・・俺と付き合ってくれないか?」
「どどどどどうやって!?」
あれ何言ってるんだろう私!
ていうかどうなってるの今!
「落ち着け。とりあえずこれが終わったら飯にでも付き合ってくれ」
あ、これはわかる!
ご飯を食べればいいのね!?
「よっ喜んで!」
「よし。じゃあ返事はその時にでももらうことにするか」
たぶん、
私が本当に落ち着ける瞬間はまだ当分先のことになりそうだ。
エレベーターは落ちなかったけど、
私が落ちそう。