短編①
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「ねえちょっとアコ、サンジ君フッたって本当!?」
「本当だけど」
「何で!?ちょー勿体無い!!」
「だって好みじゃなかったんだもん」
高校の休み時間は女の子にとって恋話の時間、といっても過言ではない。
「イケメンで!優しくて!料理が上手くて最高なのにー!!」
「はいはい、残念でしたー」
軽く流す私に友人はふてくされたように、
「何、あんた好きな人でもいるの?」
私を責めて来る。
「居ないけど」
「ほんとに?」
「居ない居ない。居たら私すっごいアプローチするもん」
そりゃあもう、どん引きされるくらいに。
「・・・・・そうだったね」
呆れたように吐いたため息に、
苦笑して。
この話は終わった。
そして、数日後。
「あんたまたフッたのー!?」
「・・・・・・・・や、だって」
「だってじゃないでしょ!?今度はウソップ君!?」
「・・・・・うん」
「イケメンではないにしても器用だし優しいし頼りになるじゃん」
「・・・・そうだけどさ」
「何で断ったの!?」
「好みじゃなかったから。・・・っていうか私に告白する人がおかしいんだよぅ」
自分でも驚いてる。
そんなに酷い顔ではないと思うけど、
こんな短期間に、
2人の人間(しかも1人はイケメンでモテモテでファンクラブまである程)に告白される程の美人ではないと自負してる。
「あんた自分の価値理解してないでしょ」
「価値ぃ?」
「化粧栄えするし器用だし、細すぎないし」
「・・・・・・・・・そんなこと言われても」
そんな子私以外にもたくさん居るし。
「そもそもアンタの好みってどんなよ」
「強い人。バッド持った私に勝って欲しい」
「・・・・・・・・・・・・あんた怖いわ」
サンジ君にそう聞いたら、
それは無理って言われたから駄目だった。
ウソップ君は怯えちゃったし、論外。
なんて話しをした、更に数日後。
「アコー!エース君が呼んでるー!」
隣のクラスのエース君に呼び出された。
・・・・・・・エース君も、
サンジ君に負けないくらいモテて、
やっぱりファンクラブもあって、
しかも兄妹でモテモテな人だ。
でもちょっと怖い。
仕方なく行ってみたら、
「アコ、今日の放課後グラウンド来いよ」
「・・・・・グラウンド?」
何故?
エース君は驚く私を見て、不敵に笑った。
「お前に決闘を申し込む」
「けっ決闘!?」
私何かしましたか!?
「じゃ、待ってるからな!」
「・・・・・・えええええ!?」
颯爽と去って行くエース君の後姿を見つめながら、困惑するしかなかった。
・・・・・・・・決闘、っすか。
放課後、
覚悟を決めてグラウンドに行ったら。
エース君が嬉しそうに、
「ほら、アコ。コレな」
と私に手渡した、
・・・・・・・・・・・バッド。
「・・・・・・・・・・へ?」
「バッド持ったアコに勝ったらアコと付き合えるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・え?」
情けないことにこんな反応しか出来なかった。
え、ちょっと待って。
バッド持った私に勝てば・・・・て、
それ、ねえ。
ちょっと。
・・・・・それ、付き合えるとは言ってない。
好みのタイプって言ったんだけど。
「俺ずっと考えてたんだ、どうやったらアコと付き合えんのか」
にこにこと笑みを浮かべるエース君はとっても可愛いんだけどね?
「な・・・・何で、私?」
根本的な疑問を口にしてみた。
だってエース君クラス違うのに!
「前に弟に傘貸してくれただろ?」
「え、・・・・・うん」
土砂降りだった日、
濡れていこうとした少年が居たから傘を貸した。
私は友達と一緒の傘に入ったけど。
その少年がエース君の弟君だったと知ったのは後日。
「それから俺にクッキーくれた」
「・・・・・・うん、あげた」
調理実習で作ったクッキー、
こげたからどうしようかなあ、捨てるのも勿体ないしなあ、と悩んでいたら、
エース君が通りかかって、
『お、美味そうだな』
って言うからあげた。
「すげェ美味かった」
「こげてたよね!?」
「全然気にならなかったぜ、そんなの」
「・・・・・・・・えっと」
「それからずっと見てたら、好きになった」
み・・・見られてた!?
バッドを片手に呆然とする私に、
エース君はにっこりと微笑む。
「でもお前の周りずっと誰か居るから近づけなかったんだよなァ」
そ・・・・そうだっけ。
「え、エース君・・・・」
「じゃ、いくぜ?」
とっても、とーっても爽やかな笑顔で、
しかも素手で。
彼はバッドを持った私に向かってきた。
ちょっと驚いたけど・・・・!
望むところ!
向かってきたエース君に、
バッドを向けた。
「わ、ぎゃ、はわわ!」
エース君は素早く私を捕まえようと手を伸ばしてくる。
バッドを当てるところか、
防御することも出来ない。
逃げるので精一杯。
つ・・・・強い!
「へへっ、楽勝だなアコ!」
「うぇ、ちょっ、あ・・・っ」
せっかくエース君が用意してくれたバッドを使う間もなく、
バッドはエース君の手に。
そして、
「え、」
額に感じた違和感。
ちゅ、という音。
「これでアコは俺のだよな?」
「・・・・・・・・・・はい」
顔が一気に熱くなった。
・・・・・・・・・やばい。
これが、恋。
どどどどどうしよう私、エース君の恋人に!
なんて思っていたら、
がばっと強く抱きしめられてしまった。
「よっしゃ!」
喜ぶエース君に、
好みのタイプがバッド持った私に勝てる人、なんて言えなくて。
・・・・・・・・・ていうか私も、
エース君のこと好きになっちゃったみたいで。
こんな恋の始まりも、あり。
『プロポーズする時は包丁持ったアコに勝てばいいか?』
『・・・・普通にして欲しいな、そこは』