短編①
夢小説設定
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私がモビーに来たばかりの頃。
私は少しだけ、マルコさんが怖かった。
今そう言うと、マルコさんにも他の人にもそうは見えなかった、とか、
嘘だろ?とか言われるけど。
「怖かったんですよ?」
「そうは見えなかったよい」
「だってマルコさんあんまり笑わないし、話す機会もあんまりなかったじゃないですか」
「話す必要がなかったらねい」
「・・・・・・・・・ほら。それに私からしたらマルコさんてすっごい有名人だったし」
「その割にはガンガン話しかけてきたじゃねえかい」
ククッと思い出し笑いをしているマルコさんに苦笑しながら、私も思い出す。
「だって怖かったんですもん」
「普通怖かったら近づくのを避けるもんだろい?」
「怖かったのは少しだけでしたから。それに怖かったからこそ仲良くなりたいな、と」
「訳がわからねえよい」
言いながら優しく微笑んで、ゆっくりと頭を撫でてくれるマルコさん。
あの時はマルコさんとこんな風になるなんて思わなかった。
「・・・・・・怖くはあったけど、信じるに足る人だとは思ってたんです。だから好きになりたくて」
「昔から変な奴だったねい、アコは」
そしてやっぱり優しい力で、
ぎゅうっと抱きしめられた。
「マルコさんは?私のことどう思ってました?」
「今言っただろい?変な奴だって」
「酷いですマルコさん・・・!」
がん、と頭に衝撃が落ちた。
それでもマルコさんは楽しそうに笑う。
「料理の上手い変な奴、って思ってたよい」
「料理の腕だけは認めてくれてましたもんね、マルコさん」
「不服かい?」
「今もそうなら不服です」
マルコさんの胸元を見つめながらぽつりと呟くと、
「ん」
顔を上げさせられて、唇に落とされた軽いキス。
「そんな訳ねえだろい?」
「じゃあ、今は?」
「料理が上手くて、甘え下手で面倒」
「面倒!?」
やっぱりマルコさんひどい!と訴えようとしたところ、
今度は額にちゅ、と唇。
「最後まで聞けよい、アコ」
「へ?」
「面倒なくらい可愛い女、だよい」
「・・・・・・・・それって褒め言葉ですか?」
「これ以上ねえくらいに褒めてるつもりだよい」
そう言うマルコさんの顔がこれ以上ないくらいにニヤニヤしてるもんだから、
私は思わず、
「・・・・ほんとですか?」
疑いの言葉を投げかけた。
すると返ってきたのは、
「俺は信じるに足る男なんだろい?」
意地悪な言葉。
「・・・・・・・・信じてますよ」
悔しいなあと思いながらも言えばマルコさんは、ふ、と笑んだ。
「なら問題ねえな」
「いいえ!問題ありますよっ!」
「・・・・・何処にだい」
「面倒ってどういうことですか」
聞き捨てなら無いのはその言葉。
「・・・・・・・・・・突っ込むねい」
と、マルコさんは苦笑い。
でもそんなんじゃ私は誤魔化されませんよ。
「だって。好きな人に面倒な女なんて思われてたら悲しいじゃないですか」
じ、っとマルコさんの瞳を覗き込む。
「・・・・面倒だろい?どうすりゃ喜んでくれんのか、とか、笑ってくれんのか、とか。考えんのはよい」
「え、」
「最初はどうしたら会えるか、まで考えてたんだよい」
「ええええ!?」
知らなかった!
「理由つけて会ったり、触れたり。・・・自分を抑えたり、大変なんだよいこれでも」
「・・・・・・・・・・ごめんなさい?」
「面倒だが・・・・悪くないと俺は思ってる。アコに惚れてるからねい」
・・・・・・・そんな、『面倒』なら、
嬉しい、かもしれない。
「マルコさん」
「・・・・何だい?」
「大好きです」
「・・・・・・・・・・ああ」
『アコ・・・サッチを見なかったかい』
『サッチさんですか?今日は見てないですけど』
『見かけたらこれを渡しておいてくれるかい』
『あ!じゃあマルコさんも一緒に探しませんか!?』
『・・・・・・・・・・・ああ』
今はもう、理由を探さなくても、
理由がなくても会える。
側に居られる。
戯れの午後。