短編①
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「アコも連れて行く」
「駄目だ」
「いや、しかしなベン」
「いい加減にしろお頭」
・・・・・・・・・先ほどから私の目の前で行われている口論。
「こんな野郎だけの船にアコを置いて行けねェだろう」
「仲間を信じられんのかアンタは」
呆れ顔のベンさんに、
絶対譲らないシャンクス。
・・・・・・・・・・ベンさんの苦労お察しします。
「アコだって俺が居ないと不安だろう?」
「え」
急に私に矛先が向いて慌てる。
まあでも、当然か。
2人の口論の原因は私だ。
明日からシャンクスと1部の人たちが居なくなるそうで。
その出張に私を連れて行くか行かないか、が問題らしい。
「私は別に平気だけど」
答えた瞬間物凄い勢いで、がっとシャンクスに抱き寄せられた。
「ほら見ろベン!アコが気ィ遣っちまってるじゃねえか!」
「思ったことを言っただけだろ。現実から目を逸らすな」
「無理しなくていいんだぞアコ」
「だから大丈夫だって。私はいいから行って来なよ」
「・・・・・・・・いや、しかし」
「お土産よろしく!」
必殺、有無を言わせない笑顔キラリ。
「・・・・・・・諦めろお頭」
するとシャンクスはベンさんを睨みつけた。
「1日で帰ってこれるか?ベン」
「4日はかかる」
「なら2日で帰って来る」
・・・・・・・・・目が本気です、シャンクスさん。
次の日、シャンクスは絶対2日で帰ってきてやる、と宣言して出て行った。
・・・・・・・いざ出て行っちゃうと寂しいっちゃ寂しい。
行くときにベンさんが謝ってくれたけど、
正直なとこ具合が悪かったのでこれで良かったと思ってる。
船医さんに診てもらわないとなーって思ってたし。
でもシャンクスが居たら変に心配させるだけだから、今がチャンス。
症状はだるさと眠さと気持ち悪さ。
・・・・・・・・で、これを船医さんに伝えたところ、
とんでもない答えが返ってきた。
「・・・・・・・・・・・・え、嘘」
「思い当たる節は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あります」
ある。
色々。
「お頭には自分で言うといい」
「・・・・・・・・・・・・・はい」
おめでとう、と言われた。
「・・・・・・・・マジか」
妊娠3ヶ月。
船医さんはそう言った。
思い当たる節もある。
言われてみれば来ていいものも来てなかった。
・・・・・・・・・・このお腹の中に、
赤ちゃんがいる。
考えただけで不思議な話しだ。
シャンクスはどんなお父さんになるんだろう。
そう考えたとこで、ふと不安が過ぎった。
・・・・・・・・ちょっと待てよ?
ここ海賊船じゃん?
・・・・・・・・・・ここで産めるの、私。
育てられる?
普通海賊の女、って・・・・港町とかに置いてきぼりで。
いつ帰って来るかもわかんない旦那を待つもんだったりしない?
そういえばウソップのお母さんもそうだった気がする。
え、ってことは・・・・私。
シャンクスと離れ離れになるの?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、嫌、かも。
っていうか嫌だ。絶対。
でもなりかねないよね!?海賊船だし!
うわーあり得ないマジあり得ない。
無理無理マジ無理。
シャンクスが隣に居ない世界なんて。
そう考えたら急に寂しくなった。
「・・・・・・・2日、か」
ベンさんは4日かかるって言ってた。
シャンクスは2日で帰るって言った。
・・・・・・・・・・・・そしたら私は、
シャンクスを信じる。
でもってもし、
シャンクスに船を降りろって言われたら。
私はどうするだろう。
・・・・・・・・・私は。
「ルゥさんルゥさん!!お願いがあるんですけど!!」
必死に考えた末、
私はルゥさんにあるお願いをした。
そして待つ、シャンクスの帰りを。
「アコ!」
そしてシャンクスはきっかり2日で帰ってきた。
甲板で出迎えた私めがけて走ってきて、
抱きしめようとしたシャンクスを私はすっとかわす。
・・・・・・・・シャンクスのやりそうなことはこんなにも予想出来るのに。
回避出来るのに。
この後私の言葉にシャンクスがどんな反応を示すのか。
それは全然わかんない。
「・・・・・・・アコ?どうした?」
でもわかんないからって逃げるような私ではないのだよ!
「話したいことがあるから、5分後に私の部屋に来て欲しいんだけど」
「話したいこと?」
「5分後ね!?5分後!」
「・・・・・・あぁ、わかった」
相変わらず可愛くないとは理解しつつ、
こればっかりは仕方ないよねとも思う。
とりあえずシャンクスの返事を聞いて、
安堵しながら部屋に戻る。
準備は万端。
そして数分後、
シャンクスは来た。
「アコ、入るぞ」
「・・・・・・・どうぞ」
「・・・・・・・・・・・・・こりゃまた物騒なモン揃えたなアコ?」
入るなり苦笑したシャンクスに少しだけ胸が痛む。
「・・・・・・・・シャンクスの反応次第ではこれを使います」
ルゥさんに用意してもらった、武器。
私にも使えそうなものを、とお願いした。
「で、話しってのは?」
「私、妊娠3ヶ月だって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだって?」
思い切って言ったものの、
シャンクスの反応は鈍い。
「や、だからお腹の中に子供居るって」
「・・・・・・・・・・・・こども?」
「うん」
シャンクスは目を点にして、
私の言葉を繰り返した。
「俺の・・・・・?」
「それ以外ないでしょーが」
「産んで・・・・くれるのか?」
初めてまともな答えが返ってきた。
さあ、ここからが勝負。
「・・・・・・・・・ここで?」
「ここで・・・は不安か?なら次の島でちゃんとした、」
「ここで産むよ私は。で、ここで育てる。駄目だって言うなら・・・戦う。脅しじゃないよ」
ちゃんと覚悟してきたんだから。
私だってシャンクスの女だから。
その為の武器だ。
「・・・・・・・・・・本気かアコ?」
「本気だよ」
強くそう言った瞬間、
シャンクスは破顔した。
そして、
「可愛いなぁ、アコは」
優しく私を包み込む。
「・・・・・・・・・えっと?」
何が?
「何のために俺が2日で帰ってきたと思ってんだ、ベンに怒られてまで」
・・・・・・・・・・怒られたんだ。
「仕事が嫌だから?」
「・・・・・・・・・アコに会いたかったから、だ」
耳元で囁かれた言葉は甘い。
「そうなの?」
「アコと離れて暮らすなんて俺が許さねえさ」
「・・・・・・・・そう、なの?」
「船を降りろ、と言われると思ったのか?」
「・・・・・・・・・かもなぁって思った」
口に出した不安を吸いこむかのように、
シャンクスからの軽い口付け。
「・・・・産んでくれ、アコ。俺の隣で」
「いいの?・・・・ほんとに?」
「ああ、勿論だ」
優しい声に、一気に肩の力が抜けた。
「良かっ・・・・たぁ・・・・・っ」
落ちそうになった身体をシャンクスが優しく抱えてくれた。
私も自然とお腹を庇う。
「アコ・・・・・2日間も不安だったのか?電伝虫で話したときに言えば良かっただろう」
「だって・・・っ!」
流れた涙をシャンクスの胸元に押し付けて、私は叫ぶ。
「だって電話じゃシャンクスに殴りかかれないじゃん!!」
「・・・・・・・アコは強い母親になりそうだ」
「あったりまえでしょ!?シャンクスの女だよ!四皇の女!」
「意味わかって言ってるか、アコ?」
「・・・・・・・・・げふんごふん」
正直まだよくわかってはいない。
でも何かすごいんだよね、四皇って!
「アコ」
強い声音に顔を上げたら、
すぐに唇が重なった。
「安心しろ。ちゃんと2人分守るから」
「うん、大丈夫」
信じてるから。
だからこれからは、
私にも任せてよね。
「息子より娘がいいなァ。アコに似た娘、可愛いだろうなー」
「私双子がいい!男の子と女の子の!」
「・・・・・・・・そう来たか」
「だって私欲張りだもん、海賊の嫁だから」