短編①
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エースは私にとって火拳のエース。
それは出会う前も、出会ってからも変わりない。
本の中のエースはカッコ良くて。
大好きだった。
そんな私が今、
その火拳のエースとデート真っ最中だなんて、
やっぱり今でも少しだけ信じられない。
「あれ?」
ふと隣を見て声が出た。
今まで隣に居たはずのエースが居ない。
いやいや、ちょっと待って。
こんな知らないとこで迷子!?
「えー・・・ひゅっ!?」
エース、と呼ぼうとした私の口がいきなり後ろから塞がれた。
思わず危険を感じて、後ろに立っているであろう人物の足を、思い切り踏んでやった。
「いってェ!」
途端聞こえてきたその声に私はほっと身体の力が抜けるのがわかった。
「驚かさないでよエース!」
「わかったからでっけェ声出すなアコ」
珍しく小さい声で囁くエースが何処か変で、とりあえず口を閉じた。
そんな私を見てエースは満足そうな笑みで頷いて、
「海軍がうろついてる」
とやっぱり小さい声で呟いた。
「・・・・ヤバイの?」
「下っ端だけなら問題ねェが・・・・厄介なのがいるんだよ」
「厄介なの?」
エースが厄介なの、っていうことはよっぽどだろう。
何だか少し怖くなってきた。
「しつこいんだよな・・・・煙」
「煙?」
あれ、煙って聞いたことある気がする。
・・・・・・・・・・けむり、
「ケムりん?」
「は?」
「あれ、違った?スモーカーさん」
「・・・・・・・・おお、それだそれ」
エースは嫌そうな顔で頷いた。
・・・・・・・・嫌いなんだ、スモーカーさん。
「会っちゃ駄目なの?」
私がそう聞くとエースは私を思いっきり睨んできた。
「・・・・・・・何?」
「アコお前まさか・・・・・」
「何!?」
「・・・・・人形は持ってなかったよな?」
「へ?」
何が!?人形!?
「・・・・・・・・・何でもねェ」
出たよ、エースの『何でもねェ。』
こういう時はたいてい何かあるんだけど。
でもこれ以上突っこむと不機嫌になるからやめとこ。
「とにかく、早めに船に戻ろう・・・・ぜ」
「・・・・・・・・噂をすれば何とやら、だね」
目の前にずらりと並んだ正義の文字。
真ん中に、ここは絶対通さないと言わんばかりに立ち尽くした、葉巻を銜えた男の人。
まさしく、ですよ。
「こんな往来で女と出歩くとは余裕だな火拳」
エースは前を見据えたまま私の腰に手を回して自分の方に引き寄せる。
「あァ、まあな。羨ましいだろ?」
「その女はお前の女か?白ひげ海賊団てのは一般人には手は出さねェって聞いたはずなんだがな」
「惚れちまったモンは仕方ねェだろ?」
・・・・・・・・何か傍から聞いてて恥ずかしい!!
見てても不思議な感じだし。
・・・・・・エースが、スモーカーさんと話してる。
私の目の前で。
「おい、火拳の女!」
「うぁっはい!はいはい!!」
突然のスモーカーさんの呼びかけに思わず興奮して元気良く返事してしまった。
「・・・・・・・・・お前は何だ?」
いや、何だって言われても。
「だから俺の女だって」
「黙ってろ火拳。・・・・お前は海賊か?」
スモーカーさんの目線が再び私に向いたとこで、
「えーと・・・・・海賊ってことになるんですかね、今は」
「細かいことはいいじゃねェか、俺の女だってさっきから言ってんだろ」
庇うように私の前に出てくれたエースがどんと言い張る。
「俺は火拳の女に話しがあるんだ」
「はい!はいはいっはーいっ!!」
手を上げて再びお返事。
「・・・・・・・・・・もういい」
スモーカーさんはそれから大きなため息を吐いて、
「考えてみりゃまとめてとっ捕まえればいい話しだ」
「ははっ可愛いだろ、俺のアコは」
「エース!恥ずかしいからやめて!」
「喧嘩なら牢屋でやるんだな、火拳!」
「おぉっと、こんなとこでやる気か?こんな往来で、しかもアコは俺に無理やり連れてこられた一般人だぜ?」
エースの言葉にスモーカーさんが一瞬怯んだ。
その隙をエースは見逃さず、
「炎上網!」
「え!?」
「しっかり捕まってろよアコ!」
「うわ!?」
ひょいっと軽々私を抱きかかえて、
走った。
後ろからスモーカーさんの怒鳴る声が聞こえたけど、私だって捕まるのは嫌だ。
必死にエースにしがみついた。
しがみつくこと数分、
そっと地面に降ろされた。
「ま、この辺なら大丈夫だろ」
「びっくりしたねー」
ほ、っと安堵のため息を吐いた瞬間、
「んっ、・・・・・・っ」
いきなり唇を奪われた。
「・・・・っは、何!?」
「罰」
「何の?」
「スモーカーと話して嬉しそうにしてただろ」
拗ねた口調に顔を見れば案の定。
顔を顰めてこっちを見てる。
・・・・今でもたまにあるエースのヤキモチ。
「嬉しかったのは・・・・スモーカーさんと話したからじゃないよ?」
「じゃあ何だよ」
私が嬉しかったのは、
「火拳の女、って言われたこと」
「・・・・・・それが嬉しいのか?」
「うん。だって私にとってエースはずっと火拳のエースだったし」
だからこっちの世界に来て技を見れたのも嬉しかった。
「・・・・・・・まぁ、な」
「ずっとエースが大好きで、憧れで。だから私が火拳の女って言われるとすごく嬉しい。認められてるんだって」
思えるから。
「・・・・・・・・・そっか。悪ィ」
しゅんとなったエースが可愛くて、
「エース可愛い」
と言えば今度は思い切り抱きしめられた。
「あのな、元はと言えばアコが悪いんだぜ?」
「私?何で?」
「ケムりんとか呼ぶわ会いたいみたいなこと言うわでよ」
「・・・・そうだっけ」
ケムりんはルフィが呼んでたんだよねー。
「でも人形はなかったよな!?」
「人形って・・・・・もしかしてフィギュアのこと?うちの?」
私の家に置いてあった、愛しいフィギュア達。
もうほとんど本人と会ってるけど。
「赤髪とマルコはあっただろ?ジョズとビスタもあったか。あとは・・・・」
「ないよ、スモーカーさんのは」
「・・・・・・・・・・・ほんとか?」
「ほんと。そもそもフィギュアだって本当に欲しかったのは1人のキャラだけだったし」
あとはついでみたいな感じで集めてたけど。
「誰だよ、その本当に欲しかったのって」
「・・・・・・・エースに決まってるじゃん」
「・・・・・・・っやっぱ我慢出来ねェ!」
「え!?」
いきなり訳のわからないことを叫んだエースは私の手を取ると、
「船戻るぞ!」
「ななっ何で!?」
まさかここまでスモーカーさん達がっ!?
「こんなとこじゃアコ押し倒せねェだろ!?」
「・・・・・・・・・・・っ馬鹿エース!!」
皆様。
これが火拳のエース、です。