短編⑥
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「お化け屋敷は苦手」
と発言したら途端シャンクスがにこりと微笑んだ。
この男楽しんでおる・・・!!
「そうか、よし行こう」
「話し聞いてた?」
「問題ない、俺が居るだろう?」
某テーマパークのチケットを2枚もらったから行かないか、と誘われて来ただけの幼馴染。
私と今隣で上機嫌の男、シャンクスとはそれだけの関係だというのに。
「勘違いしないで欲しいんだけど、別に怖い訳じゃないからね?」
「なら行けるな?」
「そんなに入りたい?」
「楽しそうだからな」
「・・・・後悔するよ?」
「望むところだな」
「はいはい、じゃあ行きますか」
仕方ないから行ってあげることにした。
シャンクスとはもう幼馴染の域を超えて腐れ縁まで来てるし。
受験前に夜遊び付き合って警察に追われかけたり、
社会人になってもたまに飲んだりご飯奢ったり奢られたりの仲でもあるし。
2人とも住み慣れた場所を出るのが面倒、という理由で職場も近い。
あーあ、と内心ため息を吐きながらお化け屋敷に入店。
薄暗い室内。
おどろおどろしいBGMまで完璧だ。
お墓の内装が現れて思わず立ち止まる。
「上手く出来てるけど・・・」
嫌な予感しかしない。
「まあ墓と言えば出るだろうな」
「お墓と言えば、墓場で考え事するのは趣味が良いって誰かが言ってたわ」
「聞いたことねェな」
その瞬間ひゅ、と風を切る音がした。
「あ」
長い黒髪、血の流れた死に装束を纏った女性が目の前に現れた。
「おっと」
「・・・・だ・・・・っ」
「・・・大丈夫か?」
案の定シャンクスが私を見て目を大きく見開いた。
そりゃあ驚くでしょう。
でも私だって止められないんだもの。
この、目から溢れる涙ばかりは。
「大丈夫・・・・もう仕方ないのよ・・・っ」
「怖くて泣いてるって訳じゃなさそうだな」
速足で墓場をすり抜けながら会話する。
「あの人髪がぼさぼさだったでしょ」
「そうだな」
「目にはものもらい、血も出てた」
「ああ」
「・・・・旦那からのDVでもあったのかな、とかさ」
「・・・・・・・・・おいおい」
まさかとは思うが、とシャンクスが横目で私を見た。
「つい過去を想像して可哀想って思ったら自然と涙が」
「・・・・・・そっちか」
シャンクスが苦笑を浮かべたところで次のエリアはお寺らしい。
まあお墓と来ればお寺は妥当よね。
「想像しないように出来ないのか?」
「どんな過去があってこんなことに、って思うだけでも無理」
頬を伝う涙を拭ってお寺の中に入る。
お寺と言えばお坊さんかな。
「優しすぎるのが欠点、って訳か。それならそうと早く言ってくれりゃあ・・・」
「私は苦手ってちゃんと言ったけどね」
「・・・・すまん」
お寺に入ってお札を取って(このお札をゴールまで持っていくと景品がもらえる)、
先へ進もうとしたところに白い何かが立ちふさがった。
「わぷっ」
その瞬間に目の前が塞がれて、
「アコ。手、繋ぐぞ」
「え?」
シャンクスの手に引かれて。
「目、閉じてられるか?」
「あ、うん」
素直に目を閉じたら、
「いい子だ」
とそのままゆっくり歩きだした。
・・・・たぶん何か居たんだろう。
「一応同じ年齢なんですけど」
「だっはっは、そう言うな」
もういいぞ、とシャンクスが言ったので目を開ければ今度は血の池地獄らしいとこに来ていた。
「ちなみに何だったの?」
「ミイラ男」
「・・・・少しだけ聞いて後悔した」
「泣いてはなさそうだが」
「事故か火傷かとか一瞬考えたけどさっきの女の人の旦那だと思うことにした」
「ああ、DVの加害者」
「それ」
それならまあざまあと思わないこともない。
「相変わらずアコは想像力逞しいな」
「誉め言葉として受け取っておくわ」
そんな会話をしているうちにもくもくと湯気のたっている(ように見える)血の池地獄からちゃぷ、と音がした。
そちらに視線を向ければ手が見えた。
「溺れてる!?」
「遊んでるだけだ、気にするな」
「なら問題ないわね」
しれっと適当なことを言えるシャンクスもなかなかすごいと思う。
繋がれた手はそのままに私たちはそんな感じで出口まで歩みを進めた。
「これを」
「おめでとう御座います、こちら景品です」
とゴールで渡されたのは血の池味と書いてる飴が2つ。
思わず出口をくぐったあとに、
「しけてる・・・」
と呟いてしまった。
「まあこんなもんだろう。それより悪かったな」
まさかあんなことになるとは思わなかったんだ、とシャンクスが2つの飴を私にくれた。
「いいよ、一緒に食べよ」
と、1つをシャンクスに返した。
途中からフォローもしてくれたしね。
「この償いは必ずする」
「いいって。ほら、トマト味」
口に放り込めば広がる酸っぱさと甘さ。
嫌いじゃないけど。
「・・・・じゃあ、遠慮なくもうおう」
「シャンクスの髪と同じ色ね」
なんて笑ってみれば飴に手をかけたまま止まった。
「・・・・シャンクス?怒った?」
こんなことで怒るシャンクスじゃなかったはずだけど、
と首を傾げれば、
「俺が今日アコを誘った理由、わかるか」
と聞いてきた。
「暇人だから」
即答してみれば飴を取ったシャンクスはそのまま私の手の甲に口づけた。
「今のでわかっただろう?」
「はい!?」
何事!?
「その逞しい想像力を働かせてみろってことだ」
「髪の色のこと怒ってるんなら謝るけど!?」
だからってこんな嫌がらせしなくても良くない?
「・・・わからねェか?」
ふと、寂しそうに微笑んだシャンクスをまじまじと見つめて考える。
シャンクスが私を誘った理由?
「・・・・気兼ねなく一緒に居れるから?」
「まあそれもある。が、それだけじゃない」
「それだけじゃない!?」
「俺はアコ以外とここに来る気はなかった。それは何故か」
難しすぎるミステリ。
「他の女の子誘うのが面倒だから・・・?」
シャンクスの性格を鑑みて割と真剣に考えてみたんだけど、
笑顔のまま固まったシャンクスの表情を見るにこれもハズレだったらしい。
「ヒントは!?」
「さっきまでの俺の行動思い出してみろ」
「・・・・えっと」
割といつも通りだったけど?
あ、でも違ったのはアレ。
・・・手にキスされたこと。
「・・・・もしかして」
「わかったか?」
「私に何か頼み事?」
「・・・・・・とんだ迷探偵だな」
「あれ」
違ったらしい。
「さっきのお化け屋敷での想像力はまぐれだった気がしてきたな」
「・・・マジで」
「よしわかった。端的に言うぞ。好きだ」
端的に言い過ぎなんですけど。
「マジで!?」
「想像してみろ。俺を恋人にして付き合うことを」
正直シャンクスとは一緒に居て気楽だし楽しい。
でも恋人、と言われたら。
「・・・楽しいかも?」
「よし、決まりだな」
「よ、よろしくどうぞ・・・?」
果たして私の想像力は何処まで信用出来るでしょうか。
(次は俺との結婚生活を想像してみてくれ)
(酒代で生活費持っていかれる未来しか想像出来ない)
