短編⑥
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いい服を着せてやる、と言われた。
毎日美味しいものが食べられる。
欲しいものは何でも手に入れてやろう。
だから海賊を辞めて自分のもとへ来い、と。
「お前のような女が海賊でいるのは勿体ない」
モビーが食料補給のために立ち寄った島で。
買い出しを終えて自由に散策が出来た3日目。
1人で大人しくお酒を飲んでいたところ、
知らないおっさんに声をかけられたのがついさっきのこと。
見ない顔だが旅の者か、と。
YES海賊ですと頷けばつながるのは冒頭の言葉。
「お言葉ですが衣食住には満足しています」
「ほう、本当にそうか?」
その身なりで?と言わんばかりの視線が投げかけられる。
「そもそもお前のような女がってどういう意味ですか?失礼極まりないですよ」
「そう怒るでない。褒めているのだよ、お前のような美しい女が海賊に身を捧げるだけの人生で良いのか?」
「満足してます。不愉快なので失礼します」
そう言って席を立つも、
「まあ待て。どうせたいした海賊団ではなかろう」
名を聞いてやる、と偉そうにふんぞり返ったおっさんに、
「白髭海賊団。そんなに私が欲しいなら私の好きな人と闘ってみます?」
勝てたら考えて差し上げてもよろしくてよ?
と捨て台詞を吐いたら、
青ざめたおっさんの顔を一瞥して店を出た。
あー最悪。
私の好きな人に勝てる人なんかそうそう居る訳ないんだから。
何かテンション下がっちゃったし、
外を歩く気をなくしてしまったので仕方ない。
今日は大人しくモビーに戻ろう。
仕方なくモビーに戻って、
適当なつまみを自分で作って部屋で飲むことにした。
マルコさんは見かけなかったから今頃まだ街で楽しんでるんだろう。
・・・・女の人と居たりして。
いやまあ私には関係ないことなんだけど。
島に着く度に思う。
マルコさんを誘えたらいいのに、と。
誘えばいいのはわかってるんだけど、
何となく躊躇ってしまって、
誘えたことは1度もない。
恐らく誘えば余程の予定がない限りマルコさんは私の誘いを断ることはしないだろうけど。
わかっていても、邪魔になるんじゃないか、とか。
そんなことを考えては動けずにいる。
情けないのは100も承知だけど。
なんて考えてたら、
コンコン。とゆっくりドアノックの音。
「俺だよい、アコ居るかい?」
マルコさん!?
慌ててドアを開けた。
「何かありました!?」
マルコさんは慌てる私の顔を見てククッと笑い声を漏らした。
「アコが慌てるようなことはねェよい。飲んでるとこ悪いねい」
「い・・・いえ」
「これ、アコのじゃないかと思ったんだがよい」
「え、あ」
マルコさんが手に持っていたのは間違いなく私のハンカチ。
「私のです!」
え、何で!?
「落ちてたよい」
「何処に!?」
「街に出た時にたまたま見つけたんだよい」
やっぱりアコのだったか、と安堵したように微笑むマルコさん。
「うわーわざわざすみません・・・!」
ハンカチを受け取って頭を下げたら、
「街では飲まなかったのかい?」
と疑問を投げかけられた。
「あー・・・実は」
かくかくしかじかで、と理由を説明したら、
「そりゃあ災難だったねい」
と苦笑するマルコさん。
「失礼しちゃいますよね」
「今度その男を見かけたら教えてくれるかい?」
「え」
「うちのアコが世話になった礼をしねェとな」
と下唇をぺろり。
何て頼もしい。
かと思いきや、
「いや・・・俺が余計なことはしない方がいいか」
と寂しそうに微笑んだ。
「ぜんっぜん余計じゃないですよ!?」
むしろ嬉しいです!!
と食い気味に答える私の頭をマルコさんは優しく撫でてくれた。
「好きなやつがいるんだろい?」
そいつに頼みな。
「そ・・・・・っ!あー・・・・・っ」
やばい私余計なことまで話したわ。
「エースかい?アイツなら負ける心配はないから大丈夫だ」
「いやエースじゃない・・・です」
「・・・・まあサッチでも大丈夫だろい」
「サッチさんでもありません・・・・」
「・・・・仮にもうちの連中なら心配はないだろうよい」
「誰にも負けません・・・私の好きな人に勝てる人なんて」
たぶんオヤジくらい。
「そんなに強いのかい?」
「とっても!!」
「俺よりも?」
なんて、わっるい顔で笑うマルコさんにどきゅん。
「どう・・・・・・・・・・でしょう・・・」
「は、連れて来いよい。相手してやる」
「無理です・・・!」
だって今目の前に居るんだもの!!
「・・・・もしかして」
「何でしょうか!?」
「嘘も方便ってやつかい?」
「そんなとこです!」
ってことにしておいてください!!
「まあ、とにかくよい。今度から島降りる時は俺を連れて行け」
「え・・・・・いいんですか?」
「俺がいいって言ってんだ」
「有難う御座います・・・!そしたらあの、今度降りる時にハンカチのお礼させてください!」
「礼なんていらねェよい。むしろそのおっさんに挨拶しに行かないとねい」
不敵な笑みが怖い、いやカッコいい。
それから、とマルコさんは続けて私を見た。
「服を買うよい」
「服?マルコさんの服ですか?」
「俺じゃねェ。アコのだ」
「私の!?」
「とびきりいい服を着てもらうよい」
「も・・・・もしかして」
「見せつけてやろうじゃねェか、そのおっさんに」
思い知らせてやりゃあいいんだよい、白髭海賊団のアコが自分にいかに似合わないかを。
「・・・・すき・・・・!!」
心の丈が思わず口に出てしまった。
「俺もだよい」
「へ!?」
「それじゃあそのおっさんには俺に負けてもらわねェといけねぇな?」
「はい・・・・・っ!!」
何がなにやら、なうちに告白して両想いになれたらしい。
悪いけど欲しいものは与えてもらわずとも自分で手に入れるのよ、私は海賊だから。
と次はおっさんに言ってやろう。
