短編⑥
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久しぶりに海が荒れている。
船は大揺れ。
雷は鳴り響き、雨が叩きつける。
良かったぁ、さっき洗濯物取り込んでおいて。
一応嵐になるだろうって航海士さんが言ってたから諸々の準備は出来た。
・・・・・けど。
ピカッ、と空に光が走った。
あー近いわコレ。
まただわ。
間もなく轟音が響き渡った。
雷だけは、実は少し苦手。
とは言っても少しだし、
こんなことがバレたら笑われる、揶揄われるの必至だから皆には言ってない。
たぶんまだ誰にもバレてはいないはず。
ポーカーフェイスも得意だ。
やることはやった。
あとは部屋で静かにしていよう。
なんて思っていたところに、
「アコー!釣りしようぜー!!」
なんて呑気な声と共にエースが入って来た。
「・・・・いつ?」
「今」
「今!?エース目ェついてる!?」
「失礼だな、ちゃんと見えてンぜ」
「今嵐真っただ中ですよね!?雨もすごけりゃ風もすごい、おまけに雷も鳴ってるよ!」
「おお、そりゃすげェな!」
「すごいよね!」
「楽しそうだ」
「バカ!!!」
思わず叫んでしまった。
「バカとはなんだよ、失礼だな」
「エース、よく考えて。この嵐の中もし海に落ちでもしたら私はエースを助けられないのよ」
「他の誰かが助けてくれんだろ」
なんてケラケラ笑うエースにがっくりと肩を落とした。
その瞬間何度目かの轟音が耳に届いて思わず肩が震えた。
あ、まずい。
エースにバレた?
「釣りが嫌なら他のことしようぜ」
あ、良かった。大丈夫そう。
「他のことって?」
「つまみ食いとか」
「ダメに決まってるでしょ。サッチさんに怒られる」
果てはマルコさんにまで怒られるわ。
「バレなきゃいいんだろ?」
「いやバレるでしょ確実に。だってエースのつまみ食いってつまみ食いの量じゃないもん」
思わずツッコんだら、
今度は船がぐらりと大きく揺れた。
「おっと」
「ゎ、ぷ」
揺れによって前に傾いた私の身体はエースによって抱き留められた。
「確かにこれじゃ釣りは出来ねェよなぁ」
「まだ諦めてなかったんかい。・・・ありがと」
お礼を伝えて離れようと試みたけど、
身体はぴくりとも動かない。
え、あれ。
・・・・エースの腕が私の背中に回ってて、
その力は優しくない。
「あの、エース?」
「ん?」
「もう大丈夫だよ?」
「まだ危ねェだろ?」
「いやもう油断しないし・・・」
だからそろそろ離して?
おずおずと伝えればエースは何かを考えるように視線を上へと逸らし、
「何か眠くなってきたな」
と呟いた。
「・・・・そう?」
「よし、昼寝しようぜ」
「はい?」
「眠くねェ?」
「眠くないしここ私の部屋なんですけども」
「知ってる」
「自分の部屋で寝たらいいんじゃない?」
「嫌だ」
なんて拒否しながらも何処か楽しそうなエースにピンと来た。
「エースもしかして」
「ん」
「暇なの?」
私の名推理に対し、エースはにんまりと微笑んだ。
あ、これ絶対確信ついてるやつ。
「ま、そんなとこだ。寝ようぜ」
「絶対眠くないよねエース」
そもそもこんな船大揺れで、
雷もうるさいのに。
「眠いぜ?」
「だってこんな状況・・・・あ、また光った」
「じゃあ話しでもするか」
「・・・・なんの話し?」
「ルフィの話し」
「それ100回は聞いた!耳にタコ!!」
叫んだ瞬間にまた轟音が鳴り響き、
船が大きく揺れる。
「ぴぇっ」
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・ちょっとびっくりした、だけ」
雷への恐怖と、エースにバレたんじゃないかという焦りで心臓がバクバク。
大丈夫、と自分に強く言い聞かせる。
「もう少ししたら治まるらしいぜ」
「え、嘘」
「嘘じゃねェよ、さっき航海士たちが言ってた」
「そ、そうなんだ・・・」
何気ない風に返事をすれば、
「へーきだって。俺が居るだろ」
「え・・・」
やっぱバレた!?
一瞬焦るけど、目の前のエースは優しく微笑んでる。
・・・そう、だよね。
エースは優しい。
雷が怖いと告げたところで揶揄ってくるような人じゃない。
エースになら、怖いと言ってもいいかもしれない。
「このまま晴れたら釣りしようぜ。な」
「・・・・うん、ありがとねエース。おかげで少し怖くなくなった」
すんなり出てきた言葉にエースが少し照れ臭そうに笑った。
「何かあったらいつでも俺を呼べよな」
心が温かくなる。
と同時に1つの疑問。
「エースもしかして私が雷怖いの知ってた?」
怖くなくなった、と言ったのにエースは驚きの1つも見せなかった。
だからもしかして、と思ったんだけど。
「え、ああ・・・まあ」
「・・・・いつから?」
「結構前から」
「何で!?」
私皆の前ではそんな素振り見せてなかったはずなのに!!
「そりゃお前・・・好きな女のことはよく見てんだよ俺だって・・・」
瞬間、私の顔に火がついたように熱くなった。
好きな女って、え!?
「え、エース・・・・え!?」
「・・・・悪ィか」
「じゃあ・・・今部屋に来てくれたのってもしかして私を気遣ってくれた、とか」
そういうこと?
「言っただろ?暇なんだよ、それだけだ」
と呟くエースの顔は耳まで真っ赤で。
「・・・・釣り、しよっか」
「は!?いやでもアコ、まだ雷・・・」
「エースが助けてくれるんだもんね」
「そりゃそうだけどよ」
「エースが海に落ちたら私が助けるから」
絶対助けるから。
「アコ置いて落ちたりしねェよ」
「あら、私だって好きな人助けるためなら必死に頑張れるのよ」
「え?」
「・・・・なんてね」
「は?おま・・・・え?」
「揺れも落ち着いてきたし、ね」
釣りしよ、とエースを再び誘えば、
「無理」
短い返事。
「無理!?」
エースがしたがってたのに!?
「やっぱこのまま一緒に寝る」
「え!?寝るの!?」
「まだ何もしねェから」
「まだ!?」
波が落ち着いた頃、
私とエースも仲良く私の部屋のベッドで寝息をたてていた。
