短編⑥
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「もういい、エースなんか知らない」
そう言い切った同棲中の彼女は玄関で靴を履きだした。
「何処行くんだよ」
「散歩。頭冷やしてくる」
「散歩ってお前こんな時間に」
喧嘩した勢いのままだったので思わずバカじゃねェの、と言おうとしたのをぐっと堪えた。
「すぐ帰るからっ」
ドアをバン、と強めに閉めた音と見えなくなったアコの背中。
・・・・あーあ。
行っちまったよ。
つーか今何時、と時計に目をやればすでに24時を回っている。
追いかけるべき、なんだろうか。
いやでも頭を冷やしたいって言ってたし、
すぐ帰ってくるとも言ってたしな。
すぐってどんくらいだ?
もし今アコが変な男に声をかけられていたら?
連れ去られていたら?
そんなことそうそう起こらない、と笑い飛ばすことが出来ねェ。
慌てて追いかけようと靴を履くも、
入れ違いになるかもしれない、と足を止めた。
ドアの前で考える。
もう少し、待つか?
・・・・こんな時間に、あいつ。
あんな薄着で出て行って。
まず電話してみるか、と思い至った。
「・・・・・・」
コール音は鳴るものの、一向に出る気配がない。
やっぱ何かあったのか?
やっぱダメだ、いてもたってもいられねェ。
手が動くのが先で、俺は迷わずドアを開けた。
目の前に広がるのは見慣れた家の前の夜の光景。
でもそこに、アコは居ない。
・・・すぐ帰るんじゃなかったのかよ。
何処行ったんだ。
この時間にやってる店って言ったら歩いて5分のコンビニくらいだよな。
足を動かして、ふと止めた。
・・・・鍵、あいつ持って行ってないよなたぶん。
かけていったら戻って来た時間違いなく入れないだろ。
かといってかけていかないで行って泥棒に入られても困る。
いやそれよりアコだろ。
アコに何かあったら・・・!
ああ、どうすりゃいいんだよ!?
・・・仕方ねェもう1回電話。
変わらずコール音は鳴るものの、出る気配はない。
そのうちに留守電の無機質な声が響いて思わずスマホを握りしめた。
何で出ねェんだよ、バカ。
・・・まだ怒ってんのか?
そういや俺たち何で喧嘩してたんだったか。
あ、俺がアコのアイス食っちまったんだった。
それを責められて、嫌なら名前書いとけよなんて言って怒られたんだ、確か。
悪いのは俺だ。
んなこたァわかってる。
・・・・けど、最近アコが仕事の同僚と飲みに行くのが多いから。
正直言えば気を引きたかったのも少しはある。
勿論食いたかった、ってのが1番だけど。
まあそんな訳で素直に謝れなかった俺が悪い。
そのせいで今アコは。
・・・今、1人で居るんだよな。
「ちっくしょ・・・・」
その瞬間握りしめたスマホが動いた。
「アコ!?」
名前も確認せずに通話ボタンを押して名前を呼べば、
『やだ、もしかしてエース今外?私鍵持ってないんだけど』
・・・アコの、いつもの声。
ほっと安堵のため息を吐いた。
「・・・家の前だっての。お前今何処にいるんだよ」
『コンビニ』
俺の予想は当たっていたらしい。
「動くなよ。迎えに行くから」
『え、いいよ』
「うるせェ。いいから絶対中に居ろよ」
『はいはい、待ってる』
返事を聞いて俺は今度こそ迷わずドアのカギを閉め、
足を動かした。
「通話も切んなよ」
『何で!?』
「何でも」
『通話料金5分・・・』
「5分なら無料のうちに入るだろ」
確かそんなサービスに加入してた気がする。
つーか今はそんなことどうでもいい。
『待ってるから。早く来て』
「・・・おう」
速足でいつものコンビニに向かう。
『ねえ、エース』
「・・・どうした?」
『待ってるからアイス奢ってよね』
「・・・・わァってるよ」
電話越しのアコのにんまりとした顔が思い浮かぶ。
食べ物の恨みは何とやらって言葉があったな。
・・・・苦笑を思い浮かべるも、
今はアコが無事だった、それだけでもう割とどうでもいい。
目の前にはもう例のコンビニ。
中に入って、
「アコっ」
アコの姿を見つけて心の底から安堵のため息を吐いた。
アコは俺を見て一言、
「一応聞くけどエース、お金持ってきてるよね?」
「え?・・・・・・・・・・あ」
冷静な彼女の言葉に俺は一気に血の気が引いていく。
今持ってるのは家の鍵。
それだけだ。
「アイス奢ってくれるって話しは?」
「あー・・・・・・悪ィ」
最悪だ。
「そんなことだろうと思った。鍵はかけてきたんでしょ?」
「かけた。それだけは間違いない」
「じゃあいいよ。ほら、帰ろ」
「いいのか?アイス」
怒ってるかと思いきや、アコは笑った。
「言ったでしょ。こんなことだろうと思ったって。もう買ってある」
「お、おお・・・・」
アコの手にはビニール袋。
さすが俺の彼女。
「心配しなくてもエースの分も買ってある」
「・・・マジで?」
「私もちょっと言い過ぎた、ごめんねエース」
・・・・俺の彼女最高に可愛い。
「いや、俺の方が・・・食っちまったし」
悪かった、と頭を下げれば目の前に出された手。
「お互い様、ってことで。帰ろう?」
「・・・・だな」
その手を取って店を出れば、
「そんなに心配だった?」
とアコがニヤリ。
・・・この顔だよ。さっきまで滅茶苦茶可愛かったのによ。
いや今も可愛いけど。
「当たり前だろ。お前に何かあったら俺は生きていけねェ自信がある」
素直にそう答えれば暗くてもわかるほど、
アコの顔が赤くなったのがわかった。
「それは言い過ぎじゃない・・・?」
「言い過ぎじゃねェよ。・・・心配した」
「ごめん・・・ありがと」
「わかったらこれからは飲み会控えめにしろよな」
「・・・・はい」
これにて一件落着。
