短編⑥
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「悲しい」
「・・・・俺だってお前」
「・・・・・・人生ってのはさぁ」
「・・・・・・辞退するか?」
「それはしなくていい」
恋人であるエースと私は2人、屋上で青空を見つめながら絶望していた。
つい先ほどのクラス会で、
今度の文化祭のことが決まった。
私たちがやるのは劇。
演目はロミオとジュリエット。
エースはロミオ役。
ジュリエット役はクラスイチの美女。
私ではない。
大事なことなのでもう1度言います。
ロミオ役はエース。
ジュリエット役は私ではない!!
「でもお前、アレだぞ。このままでいいのかよ」
「良くないけど・・・ロミオの姿のエースは見たい」
正直ものすごく見てみたい。
だって絶対カッコいいもの。
相手は私じゃないけど!!
「俺だってアコのジュリエットが見たかったっつーの」
私とて恥ずかしながらジュリエット役に立候補したのだ。
でも選ばれなかった、ということは。
「皆がエースに似合うのはあの子だって思ってるんだよね・・・」
「・・・ンなの、周りの目なんか関係ねェ。俺が好きなのはアコ」
「・・・・それは」
そうかもしれないけど。
「そんでアコが好きなのは俺だろ」
「それは・・・・そう」
「じゃあいいだろ」
とエースは言うけれど。
選ばれなかった私としては、そう簡単に納得は出来ないわけで。
「でもやっぱ悔しい。私がもっと可愛かったら」
私がジュリエットで、エースがロミオで。
そんな風になれたら良かった。
「・・・俺にとっちゃお前が1番」
「・・・エースぅ」
「だから元気出せ。な?」
「・・・・・だね。もう決まったことだし」
私はジュリエットの婚約者役。
まさかの男装するんだけど、
それはそれで少し楽しみでもあったりするし。
ジュリエット役のコとはまあ普通に仲も良いし。
「頑張ろうな、お互い」
「ん。頑張ろ」
と前を向いたところで、予鈴が鳴った。
「戻らなきゃね」
「このままここに居てェなァ」
「私も」
エース私の手をぎゅ、と握った。
「サボるか?」
なんて笑いかけてきたけど、
「次マルコ先生でしょ。怒ったら怖いからヤダ」
「ははっ、そりゃそうだ」
と手を繋いだまま教室に戻った。
マルコ先生の難しい授業を受けながら考える。
ロミオとジュリエットって悲恋ものなんだよね。
だからまあ、私がジュリエットじゃなくて良かったといえば良かったのかもしれないけど。
・・・でもお芝居を通して本気で好きになっちゃう人も居るって聞くし。
もしエースが、ジュリエット役のあのコのことを本気に好きになってしまったら。
エースを疑ってはいけない。
エースは十分すぎるほど私を愛してくれてる。
わかってるのに、次第に不安が募る。
練習の為にと2人きりで残ったら?
私はそれを許すことが出来る?
笑顔で別れられる?
自信ないなあ。
「ロミオぜんっぜん感情籠ってないんだけど」
早速ジュリエットにダメ出しされてるロミオもといエース。
セリフの読み合わせの初回とは言え、もうちょっとやる気みせてもいいのにエース。
「・・・そっかァ?」
「ここはロミオがジュリエットに一目ぼれするとこなんだからね」
「・・・わァってるよ」
少し恥ずかしい気持ちもあるんだろうけど、
「エース、頑張って」
隣に居た私が小声で囁くと、エースの目の色が変わった。
・・・本気のエースはすごくカッコいいことを、知ってる。
「・・・・おう」
本気になったエースのセリフ読みに場の空気が一瞬で変わった。
あーカッコいい。
ホント好き。
・・・ちらりとジュリエットのコを見れば案の定見惚れてる。
・・・・・不安は、焦りに変わる。
バタバタのまま本番直前まできて、
2人の演技も完璧に近くなって。
・・・・ということは、
まるで2人が本当の恋人同士のように見えるということで。
演技だってわかってても、モヤモヤする。
もうすぐ本番だね、なんて2人で仲良さそうに話してたりなんかして。
・・・・最近一緒に帰ることも出来ない。
休み時間に話そうと思っても、衣装合わせだったり小道具のことだったりの話しをしなきゃいけなくて無理で。
「明後日だね、エース」
「だな。あっという間だったな」
「・・・早く終わって欲しい」
「そっか?俺は結構楽しいけど」
放課後の作業の合間に少しエースと話すけど、
エースは楽しそう。
・・・エースはこういうの、好きだもんね。
私も嫌いじゃないけど。
でもエースにも、最近2人で居られないことを寂しいと思ってほしかった。
「そりゃエースは楽しいよね。美人とイチャイチャできるんだから」
「は?」
「堂々と皆の前であんな近づけたら楽しいと思う」
「おい、待てよ」
「・・・それを見せられる私は楽しくない」
「仕方ないだろ、芝居なんだから」
「お芝居にかこつけていいよねエースは」
「・・・何だよ、それ」
エースに肩を掴まれて涙が溢れた。
「・・・っ、ごめん皆!具合悪いから先に帰らせてもらうねー!!」
止まらなくなる前にそう叫んで鞄を掴んだ。
このまま1人で帰ろうと思ってたのに、
「もう暗いし俺こいつ送っていくわ」
エースが隣に並んだ。
え、嘘。
周りからも、
えーエース君も帰るのー?
ロミオなのにーと不満そうな声があがるけど、
エースは悪ィ、またな!と声をかけてた。
その姿に少し冷静になった私。
・・・私最低じゃん。
「ほら、帰るぞ」
手を繋いでくれたエースに今度こそ涙が止まらなくなった。
「・・・・っ、ごめ・・・」
「バカ、言っただろ?俺が1番好きなのはお前だって」
「・・・・それでも嫌だった」
「・・・・悪い」
「寂しかった。でもエースは寂しくないんだなって思ったら」
まるで1人になったかのようで。
「そりゃ俺も寂しかったっての。こうして2人で帰るのも久しぶりだしなァ」
「・・・うん」
「でも何つーか、俺が本気でやると・・・アコ、褒めてくれるし」
「・・・・うん?」
「お前の衣装も、その・・・似合ってるし」
「え、男装姿が?」
「すげェ似合ってる。あー・・・惚れ直した」
「ほ、ほんとに!?」
「あァ。だからなかなか楽しいと思ってンだ」
そう言って笑うエースに、なるほどと思わず納得してしまった。
「そ・・・っか」
「まあ、アレだ。不安になったら全部言え」
「で、でも」
「ロミオとジュリエットってのはよ、ほうれんそう不足で悲劇になっただろ」
「ほうれんそう?」
ビタミン不足?
「報告連絡相談」
「エースよく知ってたね!?」
「お前な。・・・とにかく、全部言葉にしてちゃんと伝わってたらなんも問題なかっただろ」
「それはそう」
「だから。俺たちはちゃんと言おうぜ。俺はアコと別れるなんて絶対嫌だ」
「私もやだ」
「じゃあちゃんと言えよ。な?」
「・・・・・そうする。有難う」
このままだったらすれ違って悲恋になるところだった。
「ちなみにあいつな、ジュリエット」
「うん」
「お前のことが好きらしいぜ」
「は!?」
「男装のアコに惚れたんだと」
「へ!?」
「あんま妬かせんなよな」
「は・・・・・はいぃ・・・・」
