短編⑥
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近恋人と別れてフリーになった。
でも仕方のないことだった、と思う。
原因は浮気とかじゃないし、
割と円満だった、と思ってる。
「最低じゃん」
「・・・・うーん、まあ」
そんなことを友人に話したら一言で切り捨てられた。
「でもま、これ以上は流石に待てないよね」
「・・・・そう、だね」
数年前、彼は待っててくれるかい?と私に聞いた。
だから私は待っていたのだ、ずっと。
仲間とやっている音楽活動が、実を結ぶ時を。
でも結局その時はまだまだで。
彼の方から言って来た。
もう待ってくれなくていい、と。
これ以上待たせることは出来ないから別れてくれ、と。
彼・・・マルコの気持ちもわかる。
今までずっと一緒に居た大切な仲間の夢。
叶えたいよね。
でもその夢はいつ叶うか、
そもそも本当にいつか叶うのかなんてわからなくて。
だからマルコの判断は、言葉はある意味では当然。
私のことを思ってくれてのことだと思ってるし、
私もマルコの重荷になりたくないから、と承諾した。
「ま、新しい男はいくらでもいるし!元気出しな!・・・って言いたいんだけど」
「うん?」
友人が怪訝な顔で私を見る。
「あんた落ち込んでないでしょ」
「あー・・・たぶん実感湧いてないだけ・・・かも・・・?」
マルコと別れて2か月が過ぎた。
連絡ももうとってない。
でも元々マルコとは頻繁にやりとりをしたりはしなかったし、
デートも1か月に1回程度。
だからたぶん、まだ実感が湧いてない。
何より、お互いに嫌いになって別れた訳じゃないし。
友人にそう伝えたら、
「あーじゃあ新しい男はしばらく無理かもね」
と苦笑されてしまった。
「うん、そうだと思う」
・・・こんな気持ちで私はこれから、どう過ごせばいいんだろう。
別れた、とは言え。
そう。
お互いにまだ想いはある訳で。
それなら連絡くらいしても良いのでは?と思ったりもする。
・・・・するだけで実際しないけど。
仮にも別れてはいるのだから。
そんな未練がましいことしてはいけない。
そうも思うから。
忘れなくては、と思うと余計に忘れられないもので。
仕事中も、食事の時も思い出してしまう。
マルコ元気かな。
ご飯、ちゃんと食べてるかしら。
そういえば今度ライブやるって告知見たけど。
・・・・お客さんとして行くくらいは、良い?
あーでもどんな顔して会えばいいのかわからないかもしれない。
・・・どう、しよう。
「・・・・来ちゃった」
結局ライブ当日お客さんとして来てしまった。
大丈夫、いち友人としてなら話せる。・・・はず。
ドリンクをもらって今日のステージを見上げる。
ふ、と照明が消えた。
すぐにステージのライトがついて、
演者が現れた。
影ですぐにわかる、マルコの姿。
マルコはドラム。
・・・歌が始まって、すぐにマルコと目が合った。
一瞬目を丸くしたマルコはすぐにいつもの顔に戻って、
続ける。
これでこそマルコ。
当たり前だけどそんな変わってないな。
力強いのに、何処か繊細なマルコのドラムの音。
リズム感も心地よくて。
うん、やっぱり好き。
お客さんの入りはそこそこで、
そこまで大きくない会場にしてはいい感じだと思うんだけど。
・・・・このまま、たくさんの人に知られたらいいのに。
「あ」
ライブが終わってそのまま帰ろうとしたら、
マルコが出てきた。
「来てくれたんだねい、アコ」
有難うよい、と笑ってくれたマルコにほっと肩を撫でおろした。
良かった、何しにきたんだとか言われなくて。
・・・・まあマルコはそういう人じゃないんだけど。
わかってたけど。
「うん。お疲れ様」
「こっちは相変わらずだよい。そっちはどうだい?」
「こっちも変わってないよ。今日のライブも楽しかった」
「・・・正直、来てくれるとは思ってなかったよい」
「私も迷ったんだけど・・・来て良かった」
カッコいいマルコも見られたし。
・・・何で売れないのかが不思議なくらいだ。
たぶんきっかけなんだろうけど。
「楽しんでくれたんなら何よりだよい。・・・こんな情けねェ姿でも、よい」
「ううん、カッコ良かった」
「・・・そうかい?」
「うん」
マルコは少し逡巡した様子を見せた後、
「新しい恋は出来そうかい?」
と聞いてきた。
「しばらくは無理だと思う」
「・・・・そう、かい」
マルコは安心したような、何処か残念なような顔。
・・・わかっちゃうんだよな、安心してるんだろうなって。
割と長いこと一緒に居たから。
別れてくれってマルコから言い出したけど本当は思ってないこともわかってた。
・・・わかってたのに、私は何故頷いてしまったんだろう。
「新しい恋が見つけられそうならいつでも俺を忘れていい」
「・・・マルコ」
「そうでなくても、俺に出来ることがあったらいつでも連絡しろい」
「ねえマルコ、」
私やっぱりマルコのことを傍で応援したい。
情けなくても。未練がましくても。
「マルコー!!!!マルコマルコマルコ!!」
突如大きい声でマルコを呼ぶ仲間の声。
「・・・悪い、アコ」
「気にしないで、行って来て」
私は大人しく引き下がろうとしたところ、
「いいからアコも聞けって!」
バンド仲間のエース君が興奮気味に、
私とマルコを向き合わせた。
「落ち着けエース、何があったんだよい」
「俺たちデビューだ!テレビにも出るぞ!」
「・・・・は?」
「え、ホントに?すごいじゃない!」
「今日のライブで気に入ってくれたおっちゃんが全部任せろって!」
「おいおい、待て待てエース。そんな胡散臭い話し・・・」
「これ名刺。あとで連絡しろって」
エース君がマルコに渡した名刺、つられて私も見てみて驚いた。
「超大手じゃん・・・」
「やったなマルコ!アコ!これでお前らも戻れるだろ!?」
無邪気に笑うエース君に、マルコは眉間に皺を寄せる。
「・・・・そんな都合のいいこと、言える訳・・・っ」
「よしわかったマルコ結婚しよ!絶対幸せにするから!」
「はァ!?」
目玉見開いてるマルコ、レアかも。面白い。
エース君も笑ってるし。
「この話が嘘でもホントでもやっぱ私マルコのこと好きだし」
どのみち応援するならそばで応援したい。
「デビューが決まったところで売れる保証はねェし、売れたら寂しい思いをさせちまうんだよい!?」
「マルコが浮気しないって誓うんなら何の問題もない」
きっぱり言い切ったらマルコが大爆笑を始めた。
「はははっ!流石アコだねい!俺が惚れた女だよい」
「でしょでしょ」
「アコ。改めて言う」
「・・・はい」
「・・・俺と結婚してくれるかい?」
「喜んで」
俺が居ること忘れてるだろ、とエース君が気まずさそうにツッコんだ。
