短編⑥
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幼馴染だった私とエースは、
1か月前に恋人になった。
エースのことは物心ついたときから好きだったし、
それは素直に嬉しい。
ただ問題が1つある。
それは私とエースの関係を隠したいとエースが言ったこと。
その真意を聞けば、
仲間に揶揄われるのが嫌らしい。
まあ高校生・・といえば思春期の男の子、そういうこともあるのかななんて1度は頷いたものだけど。
・・・・・・後悔している。
嫌だって言えば良かった。
言いたい。
ものすごく言いたい。
だってエースモテるし。
絶対エースのことが好きな女の子がエースに話しかけてるのを見るとモヤモヤする。
バレるのが嫌なエースの気持ちもわかるんだけど・・・モヤモヤ。
そもそも高校3年にもなって揶揄う男とか子供か!?
あーでもエースの少し子供っぽいとこも好きだし、
たぶんエースの仲間もそんな感じなんだろうなあ。
私も私で友達にエースと付き合ってるって言ったら確かに面倒にはなるとは思うし。
たとえそこに悪意がなくても。
あージレンマ!!
一緒に帰ることも出来ないし、
近場でデートも出来ない。
恋人らしいことと言えばたまに夜電話するくらい。
それならばせめて、とエースの家に行きたいと申し出たけどそれも却下された。
理由を聞けば、兄弟がうるさいからとのこと。
じゃあうちに来て、と言えばこれも却下。
理由は教えてくれなかった。
・・・これじゃあ幼馴染の時と何も変わらない。
「これエース君に渡してくれない?」
と友人に頼まれたのは。
調理実習で作ったクッキー。
「何で」
「面と向かって渡すの緊張するんだもん。あんたはエース君にあげないんでしょ」
なんて言われた日にゃ泣きたくもなる。
あげない、なんて言えない。
「たまにはあげようかあと思ってるけど・・・?」
悔しくて言ってみたら友人が面食らった顔をした。
「あげるの?何、どういう心境の変化?」
「別に・・・」
だって恋人だからね!付き合ってるんですからね!!
言えないけど!!
「じゃあアコのと一緒に私のもあげて」
「・・・・いいけど」
「よろしくね!」
「ってことだから、ハイ」
「・・・・どっちだよ」
2人分のクッキーを渡せばエースは複雑そうな面持ちで受け取って、
左右見比べた後私を睨みつけた。
「何が?」
「だから。・・・お前の作った方のやつ」
「どっちでしょうか」
「・・・見た目が同じに見えんだよ」
「同じだろうね」
「どっちだよ、アコの」
教えろ、と無言の圧で凄まれた。
「・・・シール」
「シール?」
「貼ってあるでしょ、うさぎとねこの」
エースが持ってる左右の袋にはうさぎとねこのシールがそれぞれ貼ってある。
「ある」
「どっちかが私の」
「はァ!?」
こうなることは予測済み。
でもこの関係を隠さざるを得ない状況へのちょっとした仕返しとして、
こういう趣向にしてみた。
「どっちが私のか当てられなかったら別れる」
「・・・・っおい」
ただこれだけ話してただけなのに、
「お、2人仲いいな!付き合ってんの?」
なんて茶々が飛んできた。
「うるせェ!」
・・・まあこれだからエースの気持ちもわかるんだけど。
「お、それクッキー?2つあるじゃん俺にもくれよ」
「絶対ェやらねェ」
「そうそう、これどっちかが激辛なの。食べない方がいいよ」
「げ、マジ?じゃあやめとくわ」
大人しく去って行ったエースの友人を横目にエースがぽつりと、
「・・・・まじ?」
と呟いた。
「嘘に決まってるじゃん。調理実習は真面目にやってますぅ」
「・・・・あ、そ。まあアコのなら激辛でも食うけど」
・・・・そういうとこだよ!!
もう!好き!!
「答え合わせは電話でね。夜待ってるから」
「・・・・おう」
小さく声をかけて、
「じゃあ」
と踵を返す。
必要以上の会話はしない約束だから。
本当はもっと話していたいのに。
『正解は猫、だろ』
「え・・・当たり」
『甘さ控えめだったからすぐわかったぜ』
驚く私にエースは弾む声。
・・・・う、嬉しい。
「味はどうだった?」
『美味かったに決まってんだろ。・・・・ご馳走さん』
ああ、顔を見て言って欲しかった。
エース今どんな顔してるんだろう。
「・・・・ねえ、エース」
『ん、どした?』
「皆に言うのどうしても駄目?」
『あー・・・・気持ちはわかるけど、よ』
「ダメなの?」
『前にも言ったけど色々面倒なんだよなァ』
「でもこれじゃ幼馴染の時と変わらない」
『・・・薄々勘づいてるやつもいそうだしな』
「言ってもいい?」
『まだ駄目だ』
「・・・・エースのばか」
『・・・・悪ィ』
気まずさそうなエースの声音に、
こんな会話がしたいんじゃないのに、と思った。
その後も会話はあまり続かなくて。
眠れないまま次の日。
欠伸をしながら下駄箱を開けて驚いた。
「・・・・これ、って」
「何だそれ」
後ろから覗き込んできたエースにそれを見せた。
「手紙っぽい」
小さく折りたたまれたメモ。
中に書かれてたのは。
「好きです・・・・・だぁぁ!?」
「エース声大きい。直接言いたいので放課後屋上に来て欲しい、って」
「行くな」
「・・・・いやでも」
「告白されんのわかってて行くのかよ」
「ちゃんと断らないと」
「・・・俺も行く」
「え、でも」
「行く」
「・・・・うん」
差出人が書いてない以上行って断るしかない。
と言う訳で放課後エースと2人で屋上に行ってみたら。
「何でお前も来るんだよエース」
そこに居た隣のクラスの男子はエースを見て眉を顰めた。
あれこのコエースの友達。
「悪ィか」
「空気読めよ。これから俺が何するか、わかるだろ」
「悪いけどさせねェよ」
「ただの幼馴染は黙ってろ」
うんまあそうなるよね!
どうするのエース、とちらりと見れば、
「ただの幼馴染じゃねェよ、アコは俺の恋人だ」
どん。
この言葉に嬉しいやら開いた口が塞がらないやら。
「え・・・・マジ?」
相手も驚いて私を見る。
「・・・・マジ、です」
「・・・・マジかあ」
「えっと、まあそういう訳なんでごめん・・・」
「・・・・エース、お前ちゃんと言っとけよな」
「・・・・わり」
なんてことがあってから、エースは私と付き合ってることを公言するようになった。
「どこまでいったんだよお前らぁ」
なんて揶揄われても、
「知りたかったら100万用意してこい」
なんてあしらえるようになった。
「・・・何ニヤニヤしてんだよ」
「や、だって嬉しくて」
「・・・そーかよ。悪かったな、今まで」
「ううん、大丈夫」
これから存分にいちゃいちゃさせてもらうからね、と宣言すれば真っ赤になったエースが可愛かった。
私たちの恋はこれから、かな。
