短編⑥
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その人とは図書館で出会った。
難しい顔で難しい本を読んでいる男の人だった。
図書館にはいろんな人が来るなあと思った。
かく言う私も、
「こちらご予約の本3冊ですね」
「有難う御座います」
結構コアな歴史の本3冊を予約した。
何を隠そう私は歴史オタク。
そんな私が何故その人を目にとめたかと言うと、
難しい本を読んでいたからじゃない。
イケメンだったから、とかでもない。
私の好きな偉人に似ていたから。
ただそれだけ。
お、あの人に似てる。
そう思って一瞬目を奪われた。
そんな彼の目の前に座って、改めてちらりと見る。
顔立ちが似ている、というよりは目が気になる。
・・・・ちょっとだけ幸せ。
さ、私も自分の本に集中しようっと。
「は」
不意に集中が途切れた。
思ってた以上に読み応えがあって面白い本に夢中になっている間に、
先ほどまで前に居た人は居なくなっていた。
・・・はあ、面白かった。
続きは家で読もうと鞄に本をしまい、
図書館を出た。
また会えるといいなあ、あの人。
なんて思いながら次の図書館の日。
その日は雨だった。
雨と本の匂い、結構好き。
今日は予約してないから適当に面白そうな本を探す。
・・・・と、視線の端に見えた背の高い男の人。
この間の、人。
パイナップルヘア。
垂れ目にきゅっと閉じられた口。
見れば見る程私の好きな偉人とは似てない。
でもあの時、本当に瞬間的に。
似てる、と思ったんだよなあ。
まじまじと見つめると今日は立ち姿が似てる気がする。
いやもうとっくの昔に亡くなってる人だから立ち姿は知らないんだけども。
彼の立っている場所を確認すると。
医学書のコーナー。
うわあ、難しそうに見える訳だ。
実際難しいんだろうな、
お医者さんなのかしら。
なんて考えていたら目が合った。
うわっやっちゃった!!
表面上ではにこりと笑みを作って、
ぺこりと軽く会釈した。
・・・・内心は心臓バクバク。
絶対怪訝な顔される、もしくは睨まれるだろうなと覚悟していたんだけど、
意外にもその人も笑みを浮かべて会釈を返してくれた。
あ、いい人。
良かった、と安堵して背中を向けた。
その瞬間、
「日記は読んだかい?」
と小声で声をかけられた。
日記?
一瞬何のことか考えて私の抱えている本のタイトルを見た。
私の好きな偉人の名前が入った本。
恐らくこれを見たんだろうから、
ってことは日記って、日記ってもしかして!
「か、彼の日記・・・・ですか?読んでないです。隣町の図書館に行かないとなので」
しかも何冊か貸し出し中になってるから抜けてるし。
借りるならまとめて全部借りたいし。
「興味があるならうちに来るかい?」
「・・・・・・・・・は?」
初対面で家に誘ってくるなんて何言ってるんだこの人、と思った。
たぶん顔にも出てたであろうことを心からお詫びしたい。
「失礼します・・・・」
数日後の今日、その部屋におずおずと入れば広い部屋にたくさんの本棚。
『うちの大学ならここにないものもある』
と彼は言った。
確かにその通り。
彼・・・・はマルコ、と名乗って名刺をくれた。
近くの超有名大学の医学部教授だった。
「えっ待ってこの本諦めてたやつ!!嘘っ漢詩集もあるこれ何処にももうないのに!!」
「ゆっくり読んで行くといいよい。飲みモンは珈琲くらいしか出せねェが」
「うわーうわーいいんですか!?」
こんな貴重な本の数々!!
「構わないよい」
大学の書庫はこんな宝庫だったなんて!!
2冊程本を手に取ったところで手を止めた。
・・・・待って。
「・・・・いやでもほぼ初対面の私をこんなとこに入れて大丈夫なんですか?」
何か見返りを求められる!?
「初対面・・・・ではないねい」
「えっ・・・・」
「まあアコにとっちゃ初対面みたいなもんだろうが」
「何処かでお会いしておりましたか!?」
驚く私にマルコさんがぽつりと、とある名前を出した。
それは私の母校、で。
「・・・・・・もしかして」
「可愛い後輩のことは忘れてないよい」
「マルコ先輩!?」
体育祭の委員会かなんかで一緒になったことがあったっけ。
いやでも忘れてたわ私。
「変わってないねい、アコ」
「うわーお久しぶりです・・・・すみません覚えてなくて」
「俺もだいぶおっさんになったからねい、仕方ないよい」
「でもマルコ先輩昔から頭良かったですもんね」
医学部の教授だなんてさすが。
「図書館で見かけた時は驚いたよい」
「私変な顔してませんでした?」
「恋する乙女の顔だったねい」
「うわっ恥ずかしい!でもそうなんですよめっちゃカッコいいんですよこの人!!」
私の好きな偉人がどれだけ素敵であるか、
そのままの勢いで5分程語った。
・・・語った後で、マルコ先輩ならこれくらい知ってたかもしれないと反省。
おずおずと顔を見れば、
「本当に好きなんだねい」
と笑ってくれた。
「すっごく!!」
力強く頷けば、
「妬けるねい」
とマルコ先輩が一言。
「え」
「3か月前からずっと見てたんだが」
「誰が!?誰を!?」
「俺が、アコをだよい」
「えええええ!?」
「歴史も悪くないが、今と未来について考えてみないかい?」
「お・・・・お手柔らかに・・・」
まさかの急展開。
どうなる私の歴史。
