短編⑥
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「私好きな人が出来たかもしれない・・・!」
と興奮気味に俺に語るのは、俺の片思いの相手。
・・・聞き捨てならねェ。
「・・・誰だよ。サッチか?マルコか?」
「昨日一緒に呑んだお姉さん」
「・・・・・・はぁぁぁ!?」
「めっちゃ美人だしカッコいいし意気投合しちゃってね!?」
確かにアコは昨日着いた島のバーで女と飲んでた。
まあ相手は女だし、楽しそうだからと放って1人モビーに戻って来たのは間違いだったか。
敵は男だけじゃねェ・・・・!
いやでも待てよ。
「意気投合しただけでそんな好きになるか・・・?」
素直な疑問を口にすれば、
「昨日酔っぱらいの男どもにナンパされたのよ」
「そんで?」
「そのお姐さんが邪魔だよ、失せな!ってカッコよく追っ払ってくれたの!!」
・・・・完全に目がハートになってやがる。
ずっと側で飲んでれば今頃惚れられてたのは俺だったのかもしれねェのに。
「たまたま追っ払えただけだろ。下手したら怪我してたかもしれねェんだぜ」
「その時は私が相手すればいいんでしょ」
「相手は何人だったんだよ?」
「えーっと、4人」
「無理すんなバカ、そういう時は逃げろ」
「エースは逃げないくせに」
「俺はいーんだよ、強いから」
「それはそうだけど・・・とにかくお姐さんが滅茶苦茶素敵だったの。今日もあのお店行ったら会えるかなあ」
行くな、と言ったら不貞腐れんだろうな。
んでもって意地になって絶対行くだろうし。
「じゃあ俺も行く」
「ダメ」
「何で」
「エースにお姐さん好きになられたら困る」
「絶対ならねェよ」
まさかの拒絶に1度傷ついたものの、理由を聞いて複雑な気分だ。
「だってホントに美人だし」
「アコだって綺麗だろ」
柄じゃねぇことはわかってても、少しはアピールしたい。
「じゃあお姐さん私のこと好きになってくれるかなぁ・・・」
・・・・ダメだこりゃ。
いやいや肩を落としてる場合じゃねェ。
今夜は何としてでもアコから離れる訳にいかねェ。
昨日の酔っぱらいがまた店に押しかけてこないとも限らない。
そん時こそ俺の出番だ。
「別に邪魔したりしねェよ、昨日美味そうなツマミがあったけど食い損ねたから行くだけだ」
「そうなの?それなら・・・まあいっか」
よし、とりあえず側にいる約束は取り付けた。
・・・まあ邪魔はするけど。
「いやもう告白しちまえよ」
昼のことをサッチに相談したら身も蓋もないことを言われた。
「・・・今言ったところで無理だろ」
私にはお姐さんしか見えない!ごめん!とか言われそうだ。
想像したら何か悲しくなってきた。
「そうやっていつまでもうだうだしてっから取られるんじゃないの?」
「・・・・・わかってんだよそんなことは」
わかってるけどいざってなるとなかなか出てこないんだよ。
あー情けねェ。
「てかそのお姉さんそんなイイ女なら俺も行こうかなー」
「だいぶ気強いらしいぜ?」
「いいじゃん。それにそのおねーさんが俺に夢中になってくれたらアコちゃんもエース見てくれるかもよ?」
「それじゃアコが悲しむだろ」
「ひゅー泣かせるぅ」
「うるせェ」
「でも邪魔はする、と」
「・・・それは別」
ちょっと怒られるくらいなら全然いい。
「ほんっとーに邪魔しないでね」
「へぇへぇ」
2人で昨日の店に行く。
道中アコはずっと嬉しそうだった。
・・・・そして何度も俺に、邪魔をするなと忠告してくる。
あーやってらんねェ。
やっぱこのまま告白してモビーに連れ戻すか?
いやでもなァ・・・。
「あ、お姐さーん!!」
例の女が1人飲んでる姿を見つけて真っ先に隣に座りに行くアコに内心舌打ち。
今日も一緒に呑んでいいですか?やった、とはしゃぐ姿は可愛い。
すげェ可愛い。
・・・・俺の隣じゃないことだけが、問題だ。
俺は端の席に座ってその様子を見るだけ。
そもそもあの女とアコが両想いになれたとして、俺たちはいつかは出航しなきゃならねェんだし。
あの女がモビーの一員になれる訳もない。
・・・まあ今日くらいは邪魔しないでやってもいいか?
なんて酒飲みながらうだうだ考えてアコの方を見れば幸せそうに笑ってる。
・・・・ちくしょー。
その時入り口のドアが開いた。
新しい客か、と視線をそちらに向ければ男が1人。
男はそのまま真っ直ぐに例の女の隣に座った。
・・・・ナンパか?
注意深く見ていると、アコの顔が突然曇った。
・・・・なんだ?
それから数秒、女と男が店を出て行った。
残されたアコは今にも泣きそうで。
え、今何もされてなかったよな?
2、3言話して店出ただけだったよな?
「アコ!?」
慌てて隣に座れば、
「お姐さん旦那居た・・・・」
と弱々しく呟いた。
「・・・・あーそういうこと、か」
ほっと安堵のため息を吐くと同時に沸き上がる希望。
・・・・これなら諦めるだろ。
「これって失恋!?」
「まあ・・・・かもな」
「・・・・・っエース朝まで付き合って!」
「任せとけ」
好きだったのにな、と言いながらアコは酒を煽る。
「俺だって、お前・・・・」
思わず本音が口から出たのを聞き逃さなかったらしいアコは俺を睨みつけた。
「やっぱりエースもお姐さんのこと狙ってたんでしょ」
「馬鹿、違ェよ。俺が狙ってたのはお前だ、アコ」
もう潮時か。
「え・・・・え、私!?エースが!?」
「悪ィか。お前より先に俺の方が失恋してたっつーことだよ」
「失恋して・・・・なかったら?」
「・・・・・え?」
「ごめん何でもない忘れて!!」
・・・・顔が真っ赤なのは酒のせいか、
それとも。
「・・・・忘れられっか、こうなりゃ朝まで問い詰めてやる」
長い夜になりそうだ。
(結局両想いにはなれた)
