短編⑥
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「エースの隣は安心する」
いつだったか、割と最近エースにそう伝えたことがある。
他意はない。
本当にそう思っただけ。
エースはその時一瞬嬉しそうに目を輝かせた後少しだけ複雑そうな顔をした。
エースのあの顔の意味を、私は今でも考えている。
「エースに直接聞けばいいじゃん」
とサッチさんは言うけど、
「聞いたけど教えてくれなかったんですよ」
別に何でもねェ、って。
絶対何でもない顔じゃなかったのに。
絶対何か隠してるのに。
「・・・・まあ、本人が言いたくないなら仕方なくない?」
「気になるんですよ」
「何で?」
「何で、ってそりゃあ傷つけたのかもしれないし」
「でも怒ってもなかったろ?エース」
「・・・そう、ですけど」
「じゃあいいじゃん」
「・・・・良くないです」
私の反論にサッチさんは顎に手をやり難しい顔で、
「エース自身わかってないって可能性もあると思うんだよな」
と首を傾げた。
「え、そんなことあります?」
自分のことなのに?
「人なんてそんなもんよ」
「はあ・・・」
そんなもんか。
「まあだから、ほっとくのが1番。何か言われたら謝ればいいんじゃない?」
「そう・・・・ですね」
エースにもわからないなら聞いても仕方ないし。
「はい、ラストスパート。怪我しないようにね」
「・・・はーい」
怒涛のお昼ご飯ラッシュも終わり、私もようやくひと段落。
いつも通りに寝ているエースの隣に座った。
「・・・・ふぅ」
もうお腹ぺこぺこだ。
今日のお昼はハンバーグ、と付け合わせにポテトフライと人参のグラッセ。
「もーらい」
「あっこらエース!」
楽しみにしていたポテトフライの1つを、
いつの間にか起きていたエースにぱくりと食べられてしまった。
「お疲れアコ」
「ありがと。・・・じゃなくて」
「んめェ、これ」
「どうせなら人参の方食べてよ」
「苦手なんだよな」
「そう」
頷いた私を見てエースが口を開けた。
「あ」
「・・・は?」
「あ」
エースが口を指さす。
食べてやる、と言うことか。
都合良くそう解釈して人参をエースの口に放り込んだ。
「これもんまい」
「・・・・有難う」
ホントに食べ物の好き嫌いがほとんどないエースは尊敬する。
「ハンバーグは?」
「あげません」
「ケチ」
「さっき食べたでしょ」
「食った。美味かったぜ」
「私もお腹空いてるの。・・・うん、美味しい」
ハンバーグをぱくり。
ああ、肉汁が口の中であふれて幸せ。
私が食べるところをじーっと見つめてくるエース。
「そんなに見てもあげないよ」
私のハンバーグだもの。
「ははっ、もう狙ってねェよ。それよりもうすぐ島着くだろ」
「そうみたいだね。珍しい食材いっぱいあるかなあ」
「楽しみだよな」
「うん、楽しみ」
「・・・・なあアコ」
エースは頬杖をついて少しだけ照れ臭そうに、
「うん?」
「俺と一緒に見て回ろうぜ」
ぽつりと私にそう告げた。
珍しい。
私はいつも買い出しのことが多いし、
エースはエースで食い逃げやらで忙しそうだから基本島を一緒に見て回ることはない。
たまたま偶然会って荷物持ちしてくれたり、
そのまま見て回ることはあったけれども。
「私と?」
「おう。・・・嫌か?」
駄目か、じゃなくて嫌か、なところがエースらしい気もする。
「ううん、行こう。でも珍しいね」
「そりゃ、あれだ」
「あれとは」
「・・・・俺と一緒だと、安心すんだろ」
「・・・・うん、そう」
「だからだよ」
「・・・・どうも有難う」
あれ。
何か今きゅんとした。
そして数日後無事にモビーは島に上陸。
エースと待ち合わせて、なんて少しドキドキ。
でも、
「準備出来たか?」
エースの顔を見るとほっとする。
「出来てる。エースもいい?」
「ああ、まず飯だな!」
「はいはい」
こんなノリも、エースらしくて。
そう思ってたのに、
島に出て歩いている時不意にエースに腕を引かれた。
「え、どしたの」
「今前から来たやつお前にぶつかる気だったぜ」
「やだ、怖っ」
「気をつけろよ」
「ん、ありがと」
エースの力強さとか、心配してくれる真面目な顔とか。
エースがやけにカッコ良く見えてしまった。
あれおかしいな!?
「・・・エース?」
「この方が落ち着くだろ?」
気が付けば私の腕を掴んでいたエースの手がするりと私の手と絡んだ。
「お、落ち着く・・・・・・かなあ!?」
落ち着くって何だっけ!?
大きくて、ごつごつして、あったかい手。
「落ち着かねェ?」
いやでも言われてみれば落ち着くような気も?
忘れてた、エースも男の人だって。
・・・・でも、それでもエースはエースで。
「・・・ううん、落ち着く」
やっぱり、落ち着く。におさまった。
「俺は落ち着かないけどな」
「え!?何で!?」
「好きな女と手繋いで平気な男が居るかよ」
「え・・・・・え!?」
少しだけ顔を赤くしたエースに私の鼓動も再び動き出した。
「一応言っておく。俺は落ち着かない」
「・・・・・やっぱ私も落ち着かない」
落ち着かないけど、傍に居て欲しい。
この気持ちは恋なのだろうか。
確信をもつまであと数分。
