短編⑥
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私は背が高い方だ。
幼い頃から。
周りから飛びぬけて高いから、
可愛くないとか、
学年間違ってるんじゃないの?と言われることもしばしばあった。
大人になってからはだいぶ言われなくなったけど、
それでも露骨に顔に出す人もいる。
この間の合コンでなんか、
『うわ、でけェ女!』
と思いっきり口に出した男も居て。
思わず、
『うわあ、小さい男ー』
と言い返してしまって微妙な空気で合コンすることになってしまった。
・・・・身長も、性格も可愛くないのは自分が1番良く知ってる。
こんな私にも1度だけ恋人が出来たんだけど、
身長が私と同じくらいなので、
ヒールも履けないし気を遣うわで疲れて別れてしまった。
そんななので、私にはもう恋人とか結婚とか、そういうものに縁はないものだと思って来た。
「どうせ私には孤独死がお似合いなのよ」
「180ある女なんてザラに居ると思うけど」
「この辺にはいないのよ」
友人に愚痴るも、
「モデルとか出来そうなのに」
「面倒くさい」
「勿体ない」
「背が大きいだけでお洒落でもなんでもないのよ私は・・・」
「まあまあ、今日の合コンは期待しなさいよ」
小柄で可愛い友人には通じない。
こんな私の悩みを解決してくれる人なんてきっと一生現れることはないんだろう。
「・・・・このお店?」
今日の合コン会場はと言えば、まあまあこ洒落た酒屋さん。
「イイ感じでしょ?男性陣もう着いてるって」
「期待はしないでおく」
どうせ皆私の身長で引くんだから。
・・・どうせ私は、このコの引き立て役なんだから。
「アコちゃんでかいね!何センチ?」
まあ男性陣の反応は想像通りですよね!
「180くらいかな」
「またまたァ、本当はもっとあるんじゃないのぉ?」
隣に座った男は馴れ馴れしくて。
「おたくは160くらいです?成長期が楽しみですねえ」
なんていつも通りに嫌味の1つでも吐き出せば、
「勿論成長期はこれからだっての!なあシャンクス!?」
・・・あれ。
いつもと反応が違う。
いつもなら怒るか顔が引きつるか。
いずれにせよ私の隣から離れていくのに。
シャンクス、と呼ばれた彼は適当な相槌を打って立ち上がった。
「おい、何処行くんだよ」
「後輩からやっちまった、と連絡だ」
苦笑を浮かべながら立ち上がった彼を見て私は息を呑んだ。
・・・・この人、背が高い。
たぶん・・・・きっと私より。
「・・・今の方」
「シャンクス?あいつはいい奴だぜ、俺と違って」
「あなたも十分素敵な方だと思うわ」
私の嫌味で怒らなかったんだもの。
そう伝えたら彼は少し照れ臭そうに笑って、立ち上がった。
そうしてシャンクスさんの後を追うようにいなくなった彼もまた、
身長が高かったのだと思い知らされた。
・・・・あとで謝っておかないと。
そんなことを思いながら飲みなおしていたら、
赤い髪が見えた。
・・・シャンクスさんが戻ってきて、私の隣に座った。
「戻られるんですか?」
「ん?」
「お仕事」
お酒の入ったグラスに口をつけたので思い切ってそう話しかけた。
「ああ、問題はなかった」
「それは何より。・・・・あの、先ほどここにいらした方」
「あいつが何か?」
「謝りたいんですが、どちらに行かれたのでしょうか」
真剣にそう尋ねた途端、
彼は噴出した。
「だっはっは!!謝ることはねェさ、あいつは俺たちの中じゃ背は低い方だ」
「・・・・でも」
「それに先に背のことをちょっかいかけたのはあいつの方だろう」
「それはそう、ですが」
「あいつは恋人に今日のことがバレて今頃大目玉だ」
「・・・・彼女居たのに合コン来てたんですか・・・」
ああ、だから俺と違ってあいつはいいやつとか言ってたのかな。
「人数合わせで頼まれて断れなかったってことだろう。あいつは優しいからなァ」
狙ってたなら残念だったな、とグラスを目の前に突き出された。
「そういうつもりじゃないの大丈夫です。ご心配痛み入ります」
私もゆっくりとグラスを合わせて、
「んじゃあ改めて2人で乾杯」
「・・・・乾杯。皆さん背が高いんですね?」
「まあ、そうだな。言われてみればそうかもしれねェ」
男性は背が高くてもかっこいい、で終わるもんなあ。
羨ましい。
「アコ、と呼んでも?」
「どうぞ、お好きなように」
「アコは自分より背が高い男が好みか」
「背で恋をする訳ではありませんけど、そうですね。出来たら」
「ははっ、素直だなァ。可愛い」
シャンクスさんは恥ずかし気もなくそんなことを口にする。
「でも男性は背が低い女性の方がお好みでしょう」
今まで何度も言われて来た。
でかい女は可愛くねェんだよなァ、と。
見下ろすなよ、不愉快だ、と。
けれどシャンクスさんは不思議そうに眉を顰めて、
「今自分で言っただろう、背で恋をする訳じゃねェと。それは男も女も同じじゃないのか?」
「背の高い女は可愛くない、と今まで散々」
言われて来ましたが。
「そりゃあそいつらは勿体ないことしたな」
「実際背も性格も可愛くないんです。自分でも承知してます」
「俺は嘘はつけない性格なんだ」
「・・・・と、申しますと?」
「さっき俺は可愛いと言った。それは嘘でもなくお世辞でもねェつもりだ」
穏やかな笑みを浮かべたシャンクスさんが私を見つめる。
・・・その瞳が嘘か真実か、私には判断出来ない。
「・・・有難う御座います」
「ま、俺は身長が高過ぎてフられてきた性質だ」
「え、高すぎて?」
「威圧感がやばい、見下されてる気がして不愉快、怖い、などだな」
「うわあお」
私も似たようなこと言われて来たけど、男性でも言われるんだ・・・。
す、と彼の手が頭上に伸びて。
優しく髪を撫でられた。
とても気持ちが良い。
男性に頭を撫でられるなんて初めてかもしれない。
「こうすると大抵、殴られるのかと思った、と言われる」
あまりの言われっぷりに思わず吹き出しそうになった。
「私は・・・好きです、こういう風にされたことあまりないので」
「・・・嬉しいなァ」
「ちなみにシャンクスさんお仕事は何を?」
何気なく聞いてみたら、
「殺し屋だ」
なんてすんなり返ってくるからまた笑ってしまって、
「私もやってみようかしら」
私も冗談交じりに返してみる。
「俺たちお似合いだと思わないか?」
「ええ、とても」
生まれて初めてこの身長でも良かったと思えた。
身長だけに恋をした訳ではないけど、
やっぱり彼の立ち姿に目を奪われたのは間違いないから。
やっぱり私は彼の身長に恋をしたのかもしれない。
(そして彼も)
