短編⑥
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*シャンクスver
社長の奥様はいいわね、なんて言われるけど。
たいしていいものでもない。
だいたいその言葉自体が嫌味なことも多い。
苦労してないんでしょう?
身の回りはブランドで固めて当然でしょう?
そんな視線も付きまとう。
社長の奥様は絶対幸せでなきゃいけないの?
悲しいことがあるのはダメなの?
「・・・・ねえ、シャンクス。今日も無言電話に手紙も来てて」
シャンクスと結婚して1年半。
こんな嫌がらせしてくるのは心当たりは1人しか居ない。
シャンクスが昔付き合っていた人。
シャンクスは昔からモテる。
・・・・彼女はシャンクスに執着してる。
よほどシャンクスを愛しているのか。
社長の奥様という肩書が欲しいのか。
ただ単に私が憎いだけか。
もしくはすべて、なのか。
「犯人が彼女だと?」
「・・・しか考えられないもの」
「気にしすぎだろう、彼女はそんなことするような人間じゃない」
仕事も出来るし優秀だ。
私が何を言ってもシャンクスはいつもこう。
そんな人じゃない。
気にすることはない、そのうち治まるさ。
そればかり。
私の話しをまともに聞いてくれる気はないらしい。
ただでさえ社長業で忙しいのに、
帰ってから妻の愚痴になんか付き合ってられない。
そういうことなんだと思う。
今日届いた手紙には写真が入っていた。
私の顔だけが黒く塗り潰された写真が。
宛名の文字には見覚えがある。
けれどシャンクスはそれさえ見ようとしない。
・・・・私が何を言っても、無駄。
「・・・・そうね」
言葉にするだけ時間の無駄。
それでも胸の痛みは増していく。
何とかしないと苦しくて辛い。
誰でもいい、誰か。
お願い誰か。
私を助けて。
縋る思いでスマホの名前をタップした。
「アコ?」
暗い部屋に呼びかけてみるも返事はない。
今日出掛けるとかの話しは聞いてなかったはずだが。
電話をかけてみるも応答はなく留守番電話のメッセージに切り替わった。
・・・・そのうち帰ってくるだろう。
仕事の疲れもある、明日も朝が早い。
そう結論づけて俺は1人ベッドに入った。
「帰って、ねェな・・・・」
広い部屋に俺はいまだ1人。
朝になってもアコが帰ってきてる様子はなかった。
何かあったのか?と思いつつそれでも足は会社へ向かう。
いざ会社に着けば頭は仕事のことへ切り替わり、
夜まで何も思うことはなかった。
家に帰る度にアコのことを案じつつ、
会社を休むわけにもいかなかった。
そんな数日を繰り返し、
「何か知らないか?」
と友人のベックに連絡を入れたのはアコが居なくなって何日が過ぎていただろうか。
どうせ知らん、と返ってくる。
そんな予想とは裏腹にベックの答えは衝撃的なものだった。
『今は会わせられねぇな』
それが答えだった。
「会わせられない・・・ということはそこにアコが居るんだな?」
『だったら何だ?』
「何だというこたァねェだろう、俺の妻だぞ」
『その大事な奥さんが何日も居なくて平気だったんだろ』
「平気だった訳じゃねェ。・・・心配は、してたさ」
『とにかく今アンタに会わせることは出来ん』
「なら声だけでも聴かせてくれ」
『それも無理だ』
「ベック、そりゃあねェだろう」
『お前がそこまで阿呆だとは思わなかった。彼女は今声が出ない』
「・・・・・声が、出ない?」
ベックの説明によると彼女は精神的なストレスにより声を発することが出来なくなってると言う。
その原因は何者かによる嫌がらせ。
・・・そういやこの間も手紙がどうとか言ってなかったか?
・・・・思い出しながら探してみて見つけた手紙。
見覚えのある文字。
・・・昔付き合ってた、あの女の文字だ。
それに中には顔を背けたくなるような暴言の数々に、
酷い写真もあった。
これをアコは・・・毎日のように。
「・・・・何が、出掛けるなんて話し聞いてねェだ俺は」
アコの言うことなんて何1つ聞いてなかったじゃねェか。
今はベックのところで安静にしていると聞いて、
何処か安堵している。
本当なら今すぐにでも飛んで行って会いたい。
・・・・だが、アコがそうなった原因を作ったのは間違いなく俺だ。
もっとちゃんと真剣に話しを聞いてやっていれば。
対処していれば。
嫌がらせから守ってやることが出来ていたなら。
・・・・惚れた女1人守れねェで何が社長だ。
「この手紙、間違いないな?」
犯人のカノジョに直接問い詰めるも、
「わ・・・・私じゃない・・・」
「そうか。この書類の文字のこの跳ね具合とそっくりだが?」
「・・・・偶然でしょう」
「なら鑑定を頼もう」
「そこまでする!?」
「証拠が確定次第弁護士に動いてもらう予定だ」
ここまで言って初めて、顔を歪ませながら頷いた。
「むかついたから少しいじめただけよ」
「いじめ?いやあれは犯罪だ」
「そんなつもりじゃ・・・っ」
「アコは丁寧に証拠を残してくれてる。とりあえず明日から会社には来なくていい」
「そんな・・・っ私はシャンクスの為に!」
「俺の為を思うなら今すぐに消えてくれ、俺の前から」
そしてもう2度と現れるな。
アコが家に帰ってくる、と連絡があったのは数か月後だった。
随分と長い数か月だった。
もう何年もアコに会えていない、そんな感覚ですらある。
ようやく会える。
・・・・声が、聴ける。
その日は有給を取りアコが帰ってくるのを待った。
本当は迎えに行きたかったが、
ベックに止められたので仕方ねェ。
逸る気持ちを抑えながら待っていると、
ガチャリとドアが開いた音がした。
「・・・・アコ」
速足で玄関へと向かえば少し痩せたアコが立っていた。
勢いのままにアコを抱き寄せた瞬間、
「触らないで」
久しぶりに聞いたアコの声。
だというのに冷たい声と突き放された腕。
・・・・そうだな、俺はそれだけのことをした。
「・・・・何を言っても許されないことはわかってる。俺は酷いことをした」
アコから声を奪ったのは俺だ。
「私は・・・まだ、シャンクスのこと、許してない」
小さい声で、それでもしっかりと聞こえた。
今度はちゃんと耳を傾けよう。
どんな言葉でも。
「ああ、すまなかった。謝って許されることじゃねェが」
「私を助けてくれたのはベックさんだった」
それからアコはぽつりぽつりと話し出した。
ベックのところでホースセラピーという馬との触れ合いをしていたこと。
世話や管理をして過ごしていたと。
「俺は・・・・駄目だな」
「本当は・・・1番にシャンクスに助けて欲しかった・・・っ」
ぽろぽろと涙をこぼすアコを抱きしめたい。
「・・・ああ、今度こそ必ず俺が助ける」
信じてもらえないかもしれねェが。
「私は別にシャンクスが社長じゃなくっても好きだし社長の奥さんだからっていつもにこにこしてるのは嫌」
「そうだな、辛い思いをさせちまった。俺の所為だ」
「・・・私が弱いのが悪かったの」
「アコは弱くないし、悪いことなんかねェさ」
何よりここに帰ってきてきれた、それだけで十分だ。
そう伝えればアコが少しだけ微笑んだ。
「声が出るようになって、もう1度だけシャンクスに伝えてみようかと思ったの」
「何より嬉しい。・・・本当に、会いたかった」
心からの想い口にすれば今度はアコの方から寄ってきてくれた。
「私も・・・本当はずっと、会いたかった」
震えるアコの肩を抱きしめて、
「・・・嫌なら突き放してくれ」
と寝室に連れて行った。
「・・・・いい、か?」
こくりと頷くアコを見て唇を重ねた。
すぐに離して、服を脱がせる。
久しぶりだなあ、この感覚。
「声。たくさん聞かせてくれ」
「ん・・・・ぁ・・・っ」
柔らかな胸を揉みしだき、頂を転がす。
「可愛い声だ」
「ひぁ・・・っ」
もうこれ以上口は塞がない。声を聴きたいから。
「有難う、アコ」
帰ってきてくれて本当に良かった。
「ん、は・・・っぁ」
「もう何もにも傷付けさせやしねェ」
もう十分に濡れたソコに自身を宛がう。
「しゃん、くす・・・」
「最低な男で、すまん・・・」
「ぁあっ・・・・ん、それでも好きになった私の負け、かも、ぁっ」
「・・・愛してる、アコ」
ベックさんに言われたの、と服を着たアコが言う。
次からは離婚してやると脅してやれ、と。
言われたそうだ。
・・・・次はねェ。絶対にだ。
エースver
↓
↓
↓
「げ」
嘘でしょ、と声に出た。
明日使う会議の資料のデータがない。
昨日あんなに頑張ってやったのに!?
やられた。
絶対誰かが故意に消したんだ。
・・・・まあその誰か、っていうのに心当たりはあるんだけど。
とにかく今はデータを何とかしないといけない。
「エースごめん今日残業になっちゃった!」
「マジか。今日夕飯担当アコだろ」
同期兼旦那のエースに声をかけるとあからさまに残念そうな顔。
「ほんっとごめん!今度埋め合わせするから!」
「何かトラブルか?」
「そんなとこ。詳しくは帰ったら話すわ」
「りょーかい。先帰ってるぜ?」
「ん。気を付けてね」
「アコもな。遅くなるなら連絡しろよ」
「ありがとー」
エースを見送ってパソコンとにらめっこ。
・・・・いい加減こんな嫌がらせはやめて欲しいとこだけど。
「嫌がらせ?」
「データが書き換えられてたり消されてたり」
「アコのうっかりじゃねェの?」
仕事を終えて帰宅後エースに相談してみるも、
まともに取り合ってくれない。
「買ったお茶午後に開けて飲んだらめんつゆだった」
「ははっ、笑えるな」
「笑わないでよ。あのお茶が私のって知ってるの私とあのコだけなんだよ?」
エースの、元カノさん。
「あいつはそんなことしねェよ。大人しくていいやつだぜ」
「・・・・でも」
「それに証拠もねェんだろ」
「それはそう」
「それより今日の埋め合わせ頼むぜ?」
「・・・・・ん」
それより、なんだ。
エースにとって私がいじめられてることは。
たいしたこと、ないんだ。
ふんだ、何よ。
エースのばーか!!
「アコさんミーティング出ないの?」
「え!?ミーティング!?聞いてませんが!?」
「皆に回ってるはずだけど?」
「すみませんすぐ行きます!」
日々のくだらない嫌がらせ。
お弁当箱開けてすぐ呼ばれて戻ったら唐辛子まみれになってたり。
まあこれはエースのお弁当と取り換えてもらったけど。
ねえもう本当にいつ終わるのコレ。
みたいな仕事を帰る間際に渡されたり。
・・・・・何で、私ばっかり。
証拠は掴めないし。
エースはまともに取り合ってくれないし。
「駅前に出来たラーメン屋美味いらしいぜ!」
って私に声かけてくれたのに、
「えーあたし行きたーい」
なんて元カノの声に行こうぜ、なんて答えてるし。
「サボ君聞いてよ本当エース最悪!!」
エースはアテにならないので共通の友人のサボ君に電話で相談。
『あー大変だなあ』
「エースはもう・・・・・っぁ?」
『・・・・どうかしたか?』
声が、出ない。
あれ、なんで。
『声が出ないのか?もしそうなら・・・』
ただ真剣に聞いてくれるサボ君の声に耳を傾けた。
「ただいまー・・・・っていねェし」
アコと結婚して1年半。
共働きで家事も分けてちゃんとやってる。・・・つもりだ。
そんでも最近アコの機嫌が悪い。
今日アコは休みだったから夕飯担当なのに。
俺腹減ってんだけどな。
・・・ま、カップ麺でいっか。
「ねえエース君アコさんしばらく休みって男の人から連絡あったけどどうしたの!?」
衝撃の報告を受けたのは翌日。
「・・・・は!?休み!?アコが!?」
「電話エース君じゃなかったって言ってるけど」
「・・・・知らねェ」
男!?誰だよ!?
俺は部屋を飛び出して、
「マルコ!アコ知らねェ?」
上司のマルコに聞いてみる。
「むしろ何でお前が知らないんだよい。嫁さんから何か聞いてねェのかい」
「・・・・アコから?いや別に、何も・・・」
何か最近大変そーだなとは思ってたけど。
あれ、そーいや何で大変そうなんだっけ。
何か色々されてるとか言ってたよな。
「相手の親に共通の友人。心当たりは?」
「当たってみる!有難うな!」
マルコの助言を得てすぐに電話をかけた。
親なら母親が電話するはずだから実家じゃねェ。
となるとまずはサボ。
「サボか?アコが居なくなっちまったんだよ、何か知らねェ?」
『今は会わせられねぇよ』
「何でだよ。つーか何か知ってんだな?」
『会社に連絡したの俺だからな』
「はぁ?何でサボが・・・アコに代われよ」
『無理』
「・・・どういうつもりだよサボ」
『今彼女は声が出ない。しばらくうちで預かる。以上だ』
「何処だよ、場所」
『言える訳ねェだろエース。原因はお前だ』
「・・・・・・は?」
ショックだった。
アコへの嫌がらせを何で放置した?
とサボに詰められた。
何の確証もなく誰かを犯人扱いするようなアコじゃないだろ。とも。
・・・そうだよな。
何で俺アコを助けてやらなかったんだ。
確かに元カノのあいつは大人しいしそんなことするようには見えねェけど。
今俺が1番に信じるべきはアコだったのにな。
「・・・マルコ!助けてくれ!」
まずは証拠がねェとな。
でもアコでも掴めなかったものを俺が掴むのは難しい。
「ああ、任せろよい」
「SNSの履歴、マルコが見つけてくれた」
「え・・・エース君、なんで」
「こっちが聞きてェよ。すっかり騙された」
アコのお茶の中身めんつゆに取り換えてやったらすっごい顔してた、マジうける。
データ消してやったら顔真っ青になってたの最高だった!
などなど。
出てくる出てくる、女って怖ェ。
「だ、だってあの女エース君に相応しくないのに」
「はぁ?」
「エース君だってまだ私のこと好きでいてくれてるでしょう?」
「好きじゃねェからアコと結婚したんだよ」
「わ、私と一緒にラーメン食べに・・・!」
「行かねェよ。不味くなる」
「そんなぁ・・・」
この会話も録音済み。
証拠もあるしオヤジに提出すればただじゃ済まない。
・・・・あとは、どうすれば俺がアコに許してもらえるか。
アコが俺に会いたいと言ってくれるまで待つしかねェよな。
本当は今すぐにでも迎えに行きたいけど。
助けてやれなかった俺が会いたいなんて言う資格ねェし。
・・・・今は、待つしか。
アコの作った飯、食いてぇなァ。
アコの笑った顔見ながら食う飯が1番美味いんだと、
今更ながらに思い知った。
1か月が過ぎた頃サボからアコが戻ってくると連絡があった。
声も出るようになり、
仕事も気がかりだから、と。
俺のことは?と聞いたら本人に聞けと言われちまった。
迎えに行くって言ったら大人しく待ってろ、とも。
・・・言われたけど待ちきれなくて外でうろうろ。
「あ」
なんてしてたら荷物持ったアコが苦笑して歩いてきた。
ど、どんな顔すりゃいいんだ。
「大人しく待ってろって言われなかった?」
「・・・言われた」
「まったくもう」
言いながら中に入るアコを慌てて追いかけた。
「・・・・アコ、その・・・謝ってすむことじゃねェけど、ごめん、な」
「・・・いいよ。もう怒ってない」
「・・・・何で、だよ。俺アコのこと守れなかった、いや守らなかったのに」
離婚されるか、とか。
色々考えて。怖くて。
「エースは単純だからね。女の子は好きな人には可愛いとこだけ
見せたいものだから」
「ああ、裏見たらすげェ怖かった」
「私も怖いよ?」
「それは知ってる」
「・・・・こら」
「誰よりも優しいことも、全部俺だけが知ってる」
「・・・エース」
「抱きしめてェって言ったら怒るか?」
次会えたら思い切り抱きしめてェと思ってた。
でもこれ以上傷つけたくないし嫌われたくもない。
そんな思いから恐る恐る腕を伸ばすと、アコが俺に身体を預けてきてくれた。
「エースは馬みたいだね」
「は?・・・馬ァ?」
「私今までサボ君の紹介でホースセラピーに通ってて。皆すごく可愛かった」
「俺も可愛いって?」
「可愛い。好き」
可愛いと言われたことよりも嫌われてなかった安心感で思い切り抱きしめた。
そのままの勢いで唇を重ねる。
「・・・・ん」
「・・・・久しぶりに、シてぇ」
「仕方ないなあ」
「アコが嫌がることは絶対しねェから」
「・・・はいはい」
ベッドに押し倒してアコの匂いがするのが滅茶苦茶嬉しい。
「匂いかがないでよ」
「・・・わり、つい」
額に頬に唇にキスして、胸元に痕を残した。
「・・・・んっ」
「・・・ちっと痩せたか?」
「デリカシー・・・」
「・・・ごめん」
「ん、あ・・・っ」
誤魔化すために身体をまさぐる。
あーやーらけェ。
「声、戻って良かった。・・・もう2度と失わせねェから」
「・・・・ん。は、ぁ」
昂った俺のそれをあてるとうるんだ瞳にキスをして、
中に入れた。
翌朝、
「今日まで仕事休もうかなぁ・・・」
「俺が連絡しとく」
「よろしく・・・」
今度はちゃんと旦那からの連絡だったな、と俺が周りに笑われるのは数時間後。