短編⑥
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「結婚しようアコ」
「無理」
「・・・・容赦ないな」
「そりゃそうでしょ」
こんな居酒屋でのプロポーズ。
しかも私と、今結婚しようと言い放ったシャンクスは交際してすらいない。
ただの幼馴染。
何ならシャンクスは今年3人の女性にフられている。
そのあとでプロポーズされても困惑しかないのは当然だよね。
「何か誤解があるようだが」
「あら何かしら」
「俺は前からお前のことが好きだった」
「へー初耳」
「初めて言ったからな」
「シャンクス、フられたからって自棄にならなくていいのよ」
「自棄になってる訳じゃない」
「でもフられたんでしょ」
「ああ、フられた」
付き合う度、フられる度にシャンクスに呼び出されて報告を受けている。
最後の女性にフられた報告を受けて1か月後くらいからこうしてシャンクスは私にアピールし始めた。
「大丈夫よシャンクス女性なら他にも居る」
「俺にはアコしか居ない」
・・・真剣な瞳に思わず絆されそうになるけど、
「落ち着いてシャンクス。あなたがフられた原因はわかってる?」
「わかってるさ」
落ち着け私。
信用出来ない。
信用してはいけない。
何故ならば、
「女と酒、でしょ」
「・・・だろうなァ」
シャンクスは女と酒にだらしがない。
これは本人も自覚してる。
「そこさえ直せばフられることはないと思う。私からのアドバイスは以上よ」
シャンクスはぐびりとビールを飲み干して、
「おかわり頼むが、飲むだろう?」
と聞いてくる。
「・・・言ってる側から何してんだか」
「女はともかく酒はやめられねェ。これは譲れないな」
「あんたもう一生独身でいたら?」
我ながら辛辣だとは思うけど、これも幼馴染故の優しさ。
「こうでもしねェと言えねェのさ。情けないのは百も承知だ」
「まあ愚痴を吐きたいのはわかるけど」
「・・・伝わらねェなァ」
苦笑を浮かべるシャンクスに首を捻る。
「紹介出来る女の子ならもういないけど?」
「必要ない」
「じゃあお水頼んであげる」
「それも必要ない」
「・・・まったく、もう」
シャンクスは勝手にお酒を私の分まで注文した。
このへんでお店出ようと思ってたのに。
「飲むなら何か食べて。何頼む?」
「卵焼き」
「はいはい、卵焼きね」
「店のじゃねェ」
「はあ?」
「お前の作ったやつがいい。昔作ってくれたことあったろ」
「・・・・あったかしら」
記憶にない、生憎と。
「なあ、結婚してくれアコ」
「卵焼きが食べたいだけならそのうち作ってあげるから」
酔っぱらいはしつこい。
と言いながらもそれに付き合ってる私もそこそこ酔っているのだけど。
「よし、同棲しよう」
「却下で」
「ちっ」
即却下したところでお酒が届いた。
今度は日本酒のようだ。
「ほら、これで終わりだからねシャンクス」
「・・・俺は別に女癖が悪い訳じゃないぞ」
「じゃあ酒癖が悪いだけでフられたの?」
まあシャンクスが認めたくないならそれでいいけど。
シャンクスはモテる。
「本当は惚れた女が居たから、だ」
「好きでもない女と付き合えばそりゃ破局もするわ」
「気にならないか?その女のこと」
「まったく興味ないわ残念ながら」
「可愛い幼馴染なんだ、脈はなさそうなんだが」
「とりあえずから揚げと卵焼き頼んでおいた」
「甲斐甲斐しくて優しくて最高なんだ」
かみ合わない会話も気にならないくらいにはお互いに酔っている。
もうずっと前からこんな感じの関係。
私がシャンクスのストッパー。
「そういえば私好きな人居るのよ」
「俺より顔がいいのかそいつ」
「シャンクスよりイケメンなんてざらにいるでしょ」
「何処がいいんだ、そいつの」
「傍に居てくれると安心するの。離れちゃうと不安で仕方ない」
「・・・いつから?」
「物心ついた時くらいから」
「そりゃ俺のことだな?」
「違いますぅ」
「・・・そうか」
不意にシャンクスが真面目な顔をした。
幼馴染の勘。
嫌な予感がする。
と思ったら手首を掴まれて、そのままの勢いで、
ちゅ。
子供同士がするみたいな、キス。
「・・・・ちょっと」
嫌な予感は当たったけど、
この行動はさすがに想定外で、咎める言葉は思ってた以上に小さい声になった。
「ならそいつに取られる前に俺が奪う」
「・・・・彼の名前教えて欲しい?」
「何ならそいつの会社まで行って話をつけよう」
「福沢諭吉っていうの」
「福沢・・・・・・・」
「老若男女構わずいろんなとこに行っては喜ばれるんだけど結局手放されるのよね」
「・・・・俺ならそいつを掌握出来る」
はあ、とため息を吐いて座ったかと思えばシャンクスは顔を片手で覆って黙り込んだ。
「・・・大丈夫?」
「大丈夫、ではねェな」
「卵焼きとから揚げきたから、先に食べていいわよ」
「食わせてくれ」
「・・・甘えんぼ」
食わせろというのなら顔くらいあげなさい、と言ったらゆっくりとシャンクスが顔をあげた。
その顔は何処か少し泣きそうに見えて。
「・・・ほんとに、どうしたの」
「俺は情けない。自分が不甲斐ない」
「そこまで自分を責めなくてもほら、世の中に女の子はたっくさんいるんだから!ね!?」
まさかここまで落ち込んでいたとは思わず慌てて励ますも、
「ははっ、参った・・・」
とシャンクスが両手を上げて降参のポーズ。
「はい、あーん」
仕方ないので少しだけ冷めたであろう卵焼きを口に入れてあげた。
「・・・・不味くはないが美味くもないな」
とシャンクスが言うので私も食べてみるけど、
「そ?美味しいよ」
「・・・お前は俺の幼馴染だな」
「そうね」
「その関係が壊れるのが怖くてずっと言えなかった。・・・好きだ」
小さく、けれどはっきりと聞こえた。
「・・・それがこんなに酔ってまで言いたかったことなの?」
「ああ・・・そうだ。笑ってくれていいぞ」
「・・・まあこんな酒癖が悪いシャンクスと付き合えるの私くいらいな気もするけど」
「女癖はない。お前を泣かせるようなことはしないと約束する」
「じゃあから揚げ最後の1個私にちょうだい」
「何個でもやるさ。何なら俺が揚げたてを作ってやろう」
「仕方ないからそれで譲歩してあげる」
「結婚してくれるのか・・・!?」
「まずは健全なお付き合いから」
「・・・健全な?」
「何」
「これはすでに健全と言えるのか・・・?」
言われてみれば確かにお互い酔ってるし、
さっきなんかキスもしたし。
「・・・・まあ、じゃあ結婚でいいわ」
たくさんの福沢諭吉を従えてよね!!
私もこれでもう、幼馴染の破局を祈る日々はなくなるから一安心だわ。
