短編⑥
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そろそろお頭のことを男と見てやれよ、と言われた。
しかも1人じゃない。
何人かのクルーに、だ。
はあ、とだけしか答えられなかったけど。
別にお頭のこと女だとは思ってない。
なのになんであんなことを言われなきゃいけないのか。
男だから気をつけろってこと?
あんまり近寄るな、仲良くするなってことかしら。
男は皆狼って聞いたことあるし。
そういうことならこれからあんまりお頭と関わらないようにしよう。
そう決めて3日。
今度は皆に心配されている。
とうとうお頭に何かされたのか、何かあったのか、と。
「え、皆の忠告に従っただけですが」
「・・・お前何か勘違いしてんな」
ヤソップさんが呆れ顔。
「勘違い?」
「お頭今すげェピリピリしてんだぜ」
「アルコール切れですか?」
「・・・・心当たりないとは言わないよな」
「ないですけど」
「お前さん今お頭避けてんだろ」
「はい、まあ」
「だからだよ」
「え、怖っ」
「おっと、これがバレたら俺が大変だわ。じゃな!」
・・・ヤソップさんは風のように去って行った。
何だったんだろう今のは。
まあお頭の機嫌が悪いというのならなおのこと、
出来る限り避けようではないか。
それが身の安全の為。
・・・・とは言え、お頭を避けるのは至難の業。
部屋に閉じこもってるの限界あるし、
何より居ないふりずっとしてると扉壊されそうだし。
だからと言ってその辺ふらふらしていようもんなら間違いなくばったり出会う。
まあその時は適当な言い訳をして逃げるんだけど、
いつまでも逃げられるとも思えないし。
案の定、
「何処に行くんだ?アコ」
びくりと肩が震えた。
声のした方を振り返れば会いたくなかったお頭が笑顔で立っていて。
「あ、ごめんなさいお頭私今ベックさんに呼ばれてまして!」
「さっきベックと話してきたがそんなことは言ってなかったな」
「あれ間違えた、ルゥさんだったかな」
「ルゥならそこに居るが?」
「・・・・失礼しました。えっと、とりあえず空腹なのでコックさんに何かおやつ作ってもらいに行きますので!」
「じゃあ俺も行こう」
ぎゃふん!!
「・・・・さいですか」
駄目だこれはもう逃げられない。
覚悟を決めてお頭と厨房に行けば、
「あれ」
「・・・誰も居ない、みたいだな」
「ですね。何か食べたかったんですけど残念」
「何が食いたい?」
「え」
「俺が作れそうなら作ってやれるんだが」
「いやそんな」
「話したいこともある」
・・・私はないですぅ、とは言えなかった。
空気が少しだけ肌に痛い。
・・・でも、そう。
お頭はこんな風に優しい人だった。
なのに避けていたんだもの。
きっと傷ついたよね。
・・・それなら私も腹を括って謝るしかない。
「・・・私、何か作ります。お頭はどうぞ座ってお待ち下さい」
「いや、ここに居る」
「え、でも」
「また逃げられちゃ敵わねェからな」
あちゃあ、これだいぶ気にしてるわ。
鋭い視線に思わず苦笑して、
「小腹を満たすのは何よりも最優先なのでご心配なく」
「・・・・そう、か」
説得を試みればお頭は納得してくれたらしい。
小さく頷いて席に着いた。
さて、と。
「良かったらどうぞ、お酒はないですけど」
「これは?」
「チーズのおせんべいです」
薄いチーズをレンジで軽く温めるだけ。
パリパリのおせんべいになる。
「・・・美味いな」
「でしょ」
2人無言でおせんべいをぱりぱり。
先に無言を破ったのはお頭だった。
「単刀直入に聞くが」
「・・・はい」
「俺を避けてたな?」
ぐさっときた。
いやこう来るのはわかってたけど。
「・・・ました」
「理由を聞かせてくれ」
「皆が・・・お頭を男して見てやれって言うから、です」
お頭は私の答えを聞いて、手を顎に首を傾げた。
「それはつまり・・・意識してくれたってことであってるか?」
「男は皆狼だから気をつけろってことですよね・・・?」
「・・・・そっちにいったのか」
あれもしかして私勘違いしてた?
「ち、違いました・・・?」
「いや、アコらしいな」
と言いつつもくくっと笑ってるのを見るに勘違いしていたらしい。
「ご、ごめんなさい・・・」
「嫌われた訳じゃなかったみたいで安心した」
「ひぃ、本当にすみません・・・」
「だが・・・意識してくれた訳じゃなかったのは残念だな」
「狼ですか!?」
「アコ」
「はいっ」
そっと頬に手が当てられた。
「俺は男だ」
「存じ上げております!」
「だからまあ、狼ってのも間違いじゃないな」
「ですです」
「大人しく俺に喰われてくれるか?」
「え、怖いです」
「優しくする」
「優しくされても命だけは無理です!!」
「安心しろ、お前の命は俺が守る」
「・・・・じゃあ喰われる、とは?」
にっこり。
お頭が満面の笑みを浮かべた。
「部屋に行こう。教えてやるさ」
「・・・・・へ?」
そして私は見事にお頭に喰われ、
翌日からのお頭はとてもご機嫌でしたとさ。
