短編⑥
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エースが敵にやられた。
やられた、と言っても怪我したりとかはなくて。
無傷なんだけど。
・・・・あれからもう5日。
エースはまだ目を開けない。
「エースの様子はどうだい?アコ」
「変わりません、何も」
エースの部屋から出たらマルコさんが待ち受けていて、
ゆっくりと首を横に振った。
「・・・そうかい」
「お腹、空いてないんですかね」
「・・・・どう、だかねい」
「エースのこと、よろしくお願いします」
「・・・よい」
エースは敵の能力にあたり、
眠っている。
良い夢を見てるんだそうで、もう目が覚めることはないだろうと敵が宣言していた。
その敵さんはマルコさんにやられてもう海の藻屑なのだけど。
せめて悪夢じゃなくて良かった、とは思う。
でも目を開けて欲しい。
・・・・起き上がって、
おはようって言って欲しい。
私の作るご飯を美味しそうに食べながら寝てしまったエースの顔を見て。
隣でご飯食べて。
一緒に魚釣ったり、マルコさんに怒られたり。
マルコさんは一生目が覚めないことはないと思うけど、いつ目が覚めるかはわからないと診断した。
容体に変化がないか診てくれてはいるけど、
変わりはないそうだ。
私が何度声をかけても、目を開けることもない。
返事もない。
・・・本当に、いつか目が覚めるの?
そんな不安をずっと抱えてる。
でも不安になる度にエースの笑顔を思い出して、
エースがこのままな訳ないと自分自身に言い聞かせる。
大丈夫、きっと。
「アコちゃん、エースどうだった?」
「・・・反応は、ありませんでした」
「・・・そっか。飯の匂い嗅がせてもダメだったもんなァ」
「・・・・ですね」
エースの目を覚ませる為に出来ることは何でもやった。
もう、お手上げ。
毎日声をかけにいくぐらいしか出来ない。
「ま、まあほらエースだし?そのうち起きて来て飯まだ?とか言ってくるってきっと!な?」
サッチさんの励ましが本気じゃないことはわかるけど。
それでも、
「・・・はい。有難う御座います。今日の下ごしらえ、やっちゃいますね」
「怪我に気をつけてな。万が一やったら俺に報告して。部屋に強制送還だから」
「はい、気を付けます」
一生懸命作った料理。
どんなに待ってもエースは来ない。
・・・・わかってるけど私は今日も、エースがもし起きてきたらと、
その時熱々の料理を出してあげたいとぎりぎりまで待つ。
そして眠気の限界を迎えて、
エースの部屋に。
「・・・・どんないい夢を見てるの?」
ねえ、エース。
1日の終わりに最後にエースに話しかける。
「その夢に私は居ますか?」
その夢は現実より楽しい?幸せ?
「お腹空いてない?今日の料理はすごく美味しく出来たのに、エース勿体ないことしたね」
もう2度と作れないかもしれないよ?
「・・・・エースちょっと寝すぎだよ」
そろそろ起きて。
私は眠いけど。
もういっそここで寝てしまおうか。
こんなに気持ちよさそうに寝てるエースの側でなら私も眠れるんじゃない?
だってここ最近いつ起きてくるかわからないどっかの誰かさんのせいで、
まともに眠れてないんだもの。
「ねえ、エース」
エース。名前を呼んだらいつも元気に返事してくれるじゃん。
返事しろよバカ。
「・・・・エース、好きだよ」
どうせ聞いてないし告白くらいしてもいいよね、と呟いていい加減部屋に戻ろうとした瞬間。
ん、と声が聞こえて布の擦れる音がした。
「え」
「・・・・・・・んぁ」
「・・・・えー・・・・す」
ゆっくり振り返って見ればエースが起き上がって眠そうに目を擦っていた。
「朝か?」
「夜だよばか」
「夜?・・・俺朝飯食ったっけ?」
ああ、間違いなくエース。
「・・・・・っ何日食べてないと思ってんの」
目頭が熱くなって、涙が溢れた。
「おわっ!?アコ何で泣いてんだよ!?」
「オヤジとマルコさんに報告してくる!」
「はあ!?」
「エース絶対動かないで!」
「動かないでってお前・・・腹減って動けねェよ」
力なく座るエースに笑って足取り軽く部屋を出た。
「エースが目を覚ましましたー!!!!」
それからは大掛かりな検診が始まり、
宴が始まり、
大騒ぎだった。
良かった、本当に良かった。
心からそう思ってる。
でも1つ気になるのは。
・・・・・エース私の告白聞いてないよね?
ってことで。
せっかくエースの目が覚めたのに顔を合わせられなくなってしまった。
祝いの宴2日目の夜。
「アコちゃん、もう終わっていいよ」
翌朝の下ごしらえをしていたらサッチさんが声をかけてくれた、けど。
「いえ、大丈夫です」
「・・・あんなにエースのこと心配してたのに。まともに話してないんだろ、まだ」
「ですけど。いいんです」
「まさかあいつアコちゃんのキスで目覚めたの!?」
「んな訳ないです」
キスじゃなくて告白でした、とはさすがに言えない。
なんて言ってたら、
「さっちーアコ借りていいか?」
なんてエースの方からやって来た。
「おー今夜は返却不可だぞ。なんちって」
「・・・サッチさん」
「アコ、悪い。いいか?」
「あ・・・・・うん」
まさかの本人からのお誘いに嫌とは言えず頷いた。
「宴の主役がこんなとこにいていいの?」
歩きながら話しかけたら、
「皆飲みたいだけだろ。それよりアコに話しがあンだよ」
あー来た。怖いなこれ。
「・・・・何?」
「アコ、ずっと俺のこと心配してくれてたんだろ。皆言ってた」
「そりゃ・・・心配するよ」
「・・・ありがとな」
この感じなら告白は聞かれてない?セーフ?
「良かった、目が覚めて。元気そうで」
「元気は元気だけどよ」
「だけど・・・何?」
「あん時アコ、俺に」
あの時。その言葉を聞いて私は瞬時に悟り、走った。
要約すると逃げた。
「って逃がすか!!」
「ぎゃあ!!ちょっと急用思い出したから!!」
エースに服の首根っこを掴まれていとも簡単に捕まった。
「すぐ済む。俺、目覚める前ずっと肉食ってる夢見てたんだよ」
「よ、良かったね・・・」
「でも食っても食ってもずっと腹減ってて。美味くもねぇし」
楽しい夢じゃなかったの?
「だからずっと食ってたんだ。でもあん時アコが夢ん中で、
今日の料理はすごく美味く出来たからこっちに来いって呼んでくれて」
「え」
「振り返ったらお前が俺のこと好きだって言ってくれた。・・・なァ、あれは現実だよな?」
夢だよ、と言うことは容易い。
でも言いたくない。
・・・だって、好きなんだもん。
エースはじっと私を見つめて答えを待っている。
「・・・・好き、だよ。だから言った」
「・・・まじか」
「なのにエースってば敵にやられちゃうし寝てるし声かけても全然起きてくれないし」
「わ・・・悪い」
「エースのばか。好き」
思い切って口にすればエースが満面の笑みを浮かべた。
「俺も好き」
・・・・エースはやっぱりこの笑顔がなくちゃ、ね。