短編⑥
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「動くな。騒いだら刺す」
私は今1人、慣れぬ島の街中で。
後ろから恐らく刃物を突き付けられている。
一瞬クルーの誰かの悪戯かとも思ったけど、
聞いたことのない声だったし、
僅かに感じる殺意は本物。
・・・・・ひとまず立ち止まって、自分の荷物を確認する。
今日買ったものは、茄子ときゅうりと大根と、
新鮮なお魚たち。
野菜はともかく時間がかかるとお魚たちがやばい。
特に今日は暑い。
「よし、そのまま前に歩け」
耳元で指示してくる声に、
「魚が腐った匂い嗅いだことある?」
「は?」
間抜けな声が出たところで、思い切り肘を後ろへ。
そのままの勢いで振り返れば、
「死にたいのか?」
今度は正面から。
首元にナイフを突きつけられた。
犯人の顔をまじまじと見つめるけど知らない男。
となると目的は何だろう?
誘拐?お金目当て?それか体目当て?
もしくは私が白ひげ海賊団のクルーと知ってる?
「・・・・魚が腐ると大変だと思って」
「こんな時に魚の心配か?」
「だって腐らせたら勿体ない」
小魚安かったからまとめ買いしたのに。
そしたらもっと安くしてくれたのに。
おばちゃんの気持ちを・・・魚の命を無駄になんてさせない。
何が目的であろうと、
「ふん、バカな女だ。まずは自分の命の心配を、」
ひゅ、と空気を切る音がした。
その瞬間目の前が景色に変わって。
「食いモン粗末にする野郎は処刑だバカ」
聞き慣れた声がした。
「エース!!」
「怪我、ねェか?」
「大丈夫」
さっきまで目の前に居た男を足蹴にしながらエースが立っていた。
「・・・・で、目的は何だ?」
エースが足元を見ながら問う。
「・・・知らない。俺は女を連れて来いと言われただけだ」
「私!?」
足元の男が地面に顔を押し付けながら答えたセリフに驚きを隠せない。
私!?誰に!?何で!?
「言われた?誰にだ」
「この島で1番の金持ちだよ。失敗したら金はもらえねえや、くそ・・・・」
「・・・依頼主に言っとけ、この女に手ェ出すなら白ひげが黙ってねェってよ」
「白ひげ!?聞いてねえぞそんなの!」
「おら、行け」
「う、うわああ・・・・・」
エースが足を避けた瞬間ものすごいスピードで逃げて行った。
「良かった、これでお魚冷蔵庫に入れられる。ありがとねエース」
「おう、美味い飯頼むな。・・・じゃねェよ、何でアコが狙われてんだよ知らないやつに」
「知らないよ私が聞きたいよ」
「とりあえずもう町出るの禁止な」
「えっやだだってまだ買い出ししかしてない!!」
「十分だろ」
「嫌ー!!」
まだ行きたいお店いっぱいあるのに!!
エースは呆れ顔で荷物を持ってくれて、
「んなこと言ってお前、また狙われたらどうすんだよ。四六時中俺と一緒って訳にもいかねェだろ」
眉を顰める。
「ダメなの?」
「・・・・いや、俺は別に。ダメじゃねェ、けど」
「有難う流石エース!!荷物置いたら付き合ってね!」
「いや今日くらい大人しくしとけよ!?」
出航までまだまだある、と思っていても、
結構あっという間なことが多いから。
時間は大切に使わないとね。
モビーに戻って行ったん荷物を整理して。
エースの部屋に向かいながらどうして私が狙われたのか考えてみる。
この島に上陸してから2週間くらい。
島1番のお金持ちに見初められるような機会なんてなかった。
・・・・はず。
だって買い出しとかカフェ巡りとかしかしてないし。
「流石にモビーにまでは入ってこれねェよな」
エースの部屋の前まで来たらエースが辺りを見回しながら出てきた。
「入ってきたところでただじゃすまないよ」
「金持ちの犯人の顔とかわかんねェ?」
「まったくわからない」
「なんにも思い出せないのかよ」
「なんっにも!!」
「狙われる心当たりも?」
「まったく御座いません!」
まあそんな訳なので目的もわからない。
「オヤジに報告するか?」
「したら100人くらい連れてけって言いそう」
「ははっ、言いそうだな!でも俺だけで十分だろ。な!?」
「そりゃそうでしょ」
頷けばエースが満足そうな笑みを浮かべた。
「まあ・・・俺から離れんなよ?」
「エースこそ食べ物の匂いにつられて私から目離したりしないでよ!?」
これでも怖いんだから。
「つられねェよ!・・・ほら、もう行くんだろ?」
言いながらエースが私の目の前に手を差し出した。
「へ」
手・・・・繋ぐの!?
「これで離れられねェだろ?お互い」
「そ・・・・そだね」
・・・恥ずかしい気持ち半分、嬉しい気持ち半分。
エースの顔を見れば真っ赤で。
つられて私の顔も熱くなった。
そんなこんなで2人で町へ繰り出すと、
「早速つけられてんな」
とエースがぽつり。
「え、ほんと?」
「お前マジで何したんだよ」
「えー・・・・・・・・何したんだろ私・・・・」
このままじゃエースも危険かもしれない、と必死に頭を巡らせる。
思い出せ私。
買い出し中に何かあったような気がする。
「あ」
「あ?・・・何か思い出したか?」
「あー・・・・・・あれ、かな?」
「何だよ」
「何日か前にちゃらちゃらした馬鹿がナンパしてきたから一蹴してやった」
「どう考えてもそれだろ」
呆れが顔のエースに苦笑するしかない私。
「・・・・ですよねえ」
「気が強いってのも考えモンだなァ」
「・・・やっぱ大人しい女の方がいいよね」
「俺は別に・・・強ェ女の方が好みだけど」
「え」
驚いたのと同時にエースが立ち止まった。
「え、エースここ行き止まり・・・」
「アコは俺じゃ・・・嫌か?」
「い、嫌じゃない・・・好き・・・です」
答えた瞬間唇が奪われた。
「・・・・っつー訳で、人の恋路を邪魔するやつは、わかってるよな?」
「ほえ」
エースはいつの間にか正面に居た男数人を睨みつけて火を見せつける。
「俺は白ひげ海賊団2番隊隊長、火拳のエースってもんだ。こいつに手ェ出したいやつは俺を倒す気で来いよ」
「わお」
「それと同じこと依頼主にも伝えておけ」
所詮金目当てのチンピラ。
悪魔の実の能力者だ、白ひげを敵にまわせるか、と逃げて行った。
「・・・・さすがエース」
「・・・・やべ」
「ど、どしたの!?」
真っ赤な顔でエースが顔を手で覆うから具合でも悪いのかと思いきや、
「・・・・・幸せ過ぎてやべェ」
さっきあんな怖い顔で睨みつけてた人とは思えない顔で笑った。
可愛い、と言ったら怒られそうだから言わないけど。
「・・・私も幸せ」
後日モビーに謝罪の手紙が届いた。