短編⑥
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「金平糖!!」
「・・・・こんぺいとう?」
「です」
「あの甘いやつか?」
「です」
「でこぼこしたやつだな?」
「です」
「・・・・次の島で売ってたらな?」
「嫌です食べたいです」
困り顔のお頭に私はびしっと言い切る。
「ってもなァ・・・・作れるもんなのか?」
「わかりませんけど」
お頭の我儘(添い寝)を叶えてあげる代わりに、
私の望みを叶えてくれるというので、
どうしようかなと考えていて。
真っ先に思いついたのが金平糖だった。
あの可愛い形。
食感。
口に広がる甘さ。
ああ、食べたい。
出来れば今すぐにでも。
「他にねェのか」
「ないです。金平糖が食べたいです」
夜にベッドの中男女が2人で甘い(物の)話。
私たちは甘い関係ではないけど。
「明日コックに聞いてみよう」
「・・・不安でしかないんですが」
お酒大好き!な人たちだし、
甘いもの・・・しかも金平糖だなんてものの作り方を知ってるとは思えない。
だって私も知らないし。
「心配するな、うちの奴らなら何とかするさ。特にお前の為ならな」
「・・・・はあ」
「んな心配してっといい夢見られねェぞ。ほら」
もっとこっちに来い、なんて片腕に抱き寄せられる。
「・・・お酒くさい」
「酒飲んだからな」
「変な夢見そう」
「魘されてたらキスで起こしてやるさ」
「普通に起こして下さい、普通に」
「はははっ遠慮するな!」
「してませんて」
お頭の匂いは汗とかお酒とか、太陽とか海とか色々入り混じった匂い。
嫌いじゃないけど。
金平糖を思い出してしまったからには口の中は甘いものを欲している。
すぐに食べれないとわかっているからなおのこと。
「甘いキスでもしてやろうか?」
「ただのお酒臭いキスになるのわかってるんでお断りします」
「冷てェなァ」
「ほら、もう寝るんでしょう?」
もう面倒くさいのでいい加減に寝ようかと思っていたら、
「よし、甘い夜にするか」
「はぁ?」
お頭が訳のわからないことを言い出した。
「実を言えばまだ眠くねェのさ」
「はあ!?」
お前が添い寝してくれたら眠れる、と散々我儘いってこの状態なのに!?
「キッチンに行けばまだ誰か残ってるんじゃないか?」
「え・・・いいですよ明日で」
「次の島で手に入る確証がない以上、確かめておいた方がいいと思わないか?」
食いたいんだろう?とお頭が挑戦的に笑いかけてくる。
「それは・・・・そう、です・・・けど」
「見たところアコもまだ眠くはなさそうだ」
「・・・・それもそうですけども」
「よし、行くぞ」
「・・・・はいっ!」
食べたいけど食べられるかわからない不安を抱えたままより、いいか。
「こんぺいとう?」
「ああ、うちで作れそうか?」
まだキッチンに残ってたコックさんを捕まえて聞いてみれば、
難しい顔で首を捻った。
「ありゃあ難しいですよ・・・少なくとも1日2日じゃあ無理だ」
「えっそんなにかかるんですか!?」
「まともに作ろうと思えば2週間は必要だよ」
「2週間!?そんなに!?」
驚く私にお頭は私を見て、
「待てそうかアコ?」
と聞いてくる。
「食べられるなら待てますけど、そんなに手間がかかるものを作らせる訳には・・・」
しかも私の我儘で。
「材料が揃えば数日で作れないこともないが・・・」
「買ってきます!!島で!!」
「材料があったら頼めるか?」
「勿論、クルーの食べたいに応えるのが我々の仕事ですから」
「よろしくお願いします・・・!!」
「これで一安心だな」
「はいっ」
その日はお頭と添い寝して。
3日後。
船は無事に島に上陸した。
「必要なのはグラニュー糖とケシの実」
「意外と簡単に手に入りそうだな」
「ですね」
「ケシの実はあんぱんの上とかに乗ってるやつらしい」
「あーあれですか!へーあんなの使うんだ・・・」
そこまで広い島ではなかったけど、
必要な材料は無事に手に入れることが出来た。
「よろしくお願いしますっ」
「あいよっ任された!!」
あとはコックさんにお任せ、なんだけど。
気になるので私も調理工程を見学。
作業自体はそんなに難しくなさそう。
・・・・けど。
「・・・・さっきから同じこと繰り返してますよね?」
「これを繰り返すのさ。明日からも50回以上」
「・・・うっわぁ・・・・」
「なんせ初めてのことだ、うまく出来る保証ははないがね」
「わ・・・・私も何かお手伝い、」
「期待して待っててくれ・・・というかアコ」
「というか?」
「お頭を構ってやってくれよ、俺らが睨まれちまう」
「・・・・はぁい」
背後から視線が痛い理由はそれか。
「出来たのか?」
「まだまだですよ、お頭」
「まさか出来るまでここに居る、とか」
「あと何日かかると思ってるんですか」
「よし、じゃあ俺の部屋で甘い時間を過ごそう」
「それには大変な時間と労力が居るんですよ」
まさか金平糖食べるのにこんな苦労するなんて。
「・・・あと何日かかる?」
お頭はコックさんにそう尋ねると、
「あと3日は欲しいっすね」
「わかった。よしアコ、部屋に戻るぞ」
「え」
「あと3日。こんぺいとうが出来るまでに俺はお前を口説き落とす」
「は!?」
「そんで一緒に食うぞ」
「はえええ!?」
金平糖が完成するまでの3日間で私はがっつりお頭に口説かれて。
落ちました。
金平糖は美味しかったです。