短編⑤
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私の恋人は面倒くさい。
「行くってちゃんと言いましたけど」
「そうだったか?」
私の恋人・・・この船のお頭は嫉妬深い。
上陸した島での買い出しにヤソップさんと行っただけですごく怒っている。
面倒くさい。
更には、
「男物の香水の匂いがする」
とか言い出した。
「いやこの間あなたと一緒に出掛けた時に買ってもらったやつです」
「・・・・そんなことあったか?」
「男物だけどいい匂いで気に入って、でも迷ってたらお頭が買ってくれたんじゃないですか」
男物だからやめておいた方がいいですかね、と相談したら、
香水をひょいと取り上げたお頭はそのままお会計を済ませて戻って来た。
そしてそのまま私にプレゼントしてくれた。
それが、どんなに嬉しかったか。
気に入ったんならつければいいじゃねェか、と笑ってくれたことが。
「言われてみりゃああったようななかったような」
「ありました。気に入ってますけど捨てろとおっしゃるなら捨てますが!?」
流石にキレ気味の私にお頭は取り繕うように笑った。
「だっはっは、すまんすまん」
「・・・・・もう」
「しかしヤソップと買い出しに行くのは聞いてなかったと思うが」
「・・・わかりました。もうお酒飲んでる時のお頭に報告はやめます」
「そこまで飲んだ覚えはねェんだがなァ」
「そこまで酔ってるようには見えなかったんですけど」
「アコに酔ってたのかもしれねェな!」
「はいはい」
「で、何もされてないな?」
・・・本当に面倒臭い。
これでこの話は終わるかなと思ったのに。
「される訳ないじゃないですか、ヤソップさんですよ」
「わからないだろ、そんなの」
「わかりますよ。信じられないんですか、ヤソップさんのこと」
「あいつも男だぜ」
「知ってます。ていうかこの船の人だいたい男性ですよ」
「まさかあいつら俺のアコに・・・・」
「何もされてませんて!!」
「本当か?」
「本当です」
このやり取りももう何度目だろう。
はあ、と深いため息を吐く私の身体はお頭の腕に抱き寄せられて、
分厚い胸板に顔を押し付けられる。
「頼むから俺から離れようなんて思わないでくれよ?」
「・・・思いませんよ」
そんな怖いこと。
「よし、そしたら明日は俺とデートだ。船長命令」
「そんなの命令にしなくても・・・」
普通に誘ってくれれば受けるのに。
「船長命令なら他の誰にも邪魔は出来ねェだろう?」
「邪魔する人なんていないでしょう」
「念のためってこった」
「あ、そしたら行ってみたいレストランあって。美味しそうだったんですけど高そうだったから」
今日は入れなくて。
「おう任せとけ。何でも好きなモン食えばいいさ」
「お頭はお酒は程ほどにお願いしますね」
「せっかくのデートだ、少しくらいいいだろう?」
「勿論少しなら。私も飲もうかな」
「お、いいな。少しだけだぞ」
「私はお頭程飲みませんよ」
普段から皆の介抱しなきゃいけないんだから、と言うと、
「アコが構うのは俺だけで十分だろう」
と眉を顰めさせる。
「そんな訳にもいきませんよ」
「お前は誰の恋人だ?」
「あなたです」
「名前」
「・・・・シャンクス」
「お前が愛しているのは?」
「シャンクスだけです」
「よし」
「明日、楽しみにしてますね」
「ああ、俺もだ」
額にちゅ、と唇が落とされた。
ふと顔を見れば満足そうな顔のシャンクス。
・・・どうやらご機嫌は治った様子。
で、肝心のデート。
「えーっもっとお話し聞かせてぇ?」
「私も聞きたぁい」
「えーっ私と2人きりで飲みましょうよぉ、あっちに個室があるのぉ」
・・・お頭にはたくさんの女性が群がっている。
まあいつものことなんだけど。
お頭もお頭で満更でもなさそう。
反対の立場だったら絶対不機嫌になるくせに。
お頭の魂胆はわかってる。
私を妬かせたい、それだけ。
毎日のように愛を囁かれて妬かれてる私としては妬く必要はないとわかってるので、
平気なんだけど。
それが面白くないみたいで。
今日はどう対処しようか悩んでいたところに、
「良かったらこれどうぞ」
「あらどうも」
知らない男性から飲み物の差し入れ。
お頭が居るのに度胸あるなあこの人。
まあ飲まないけど。
「この後のご予定は?」
「もう少しここで食事を楽しんでから船に戻ろうかと」
「この島は初めて?良かったら俺が」
彼の言葉は続くことはなかった。
「悪いが今デート中なんだ。邪魔しないでくれないか」
お頭の圧のある声かけによって可哀想に、
真っ青な顔で彼はぺこりとお辞儀をして去って行った。
・・・・やれやれ。
この圧によってお頭側にいたお姉さん達も恐ろしくなったらしい。
数人が固まった笑顔のままあら用事思い出したわ、とか何とか行って消えて行った。
ただ1人、残った女性が居て。
「そのデートの続き、私としません?お頭さん」
「この人とデートをしたいなら私を気絶させてからにして下さる?」
「な・・・何言って、」
「勿論私に危害を加えるつもりならこの人が黙ってないけど」
「俺とアコとのデートを邪魔するつもりなら女でも容赦はしないが」
にっこり微笑む私たち。
でも本気。
「・・・・わかったわよ、邪魔者はいなくなるわ」
渋々女性が居なくなったのを見て、
「まったく、シャンクスは・・・」
呆れのため息。
「妬いてくれたか?」
「当たり前でしょう?私とシャンクスを邪魔する者には容赦しません」
だってシャンクスと離れるのが怖いのは私の方。
「面倒くさい男ですまないな」
「私も大概ですから」
お互いにお互いを思っている。