短編⑤
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それはマルコさんと上陸したばかりの島でデートをしていた時のことだった。
バーで食事中にマルコさんが少し席を外したところ、
「お姉さんさあ、美人なのになんであんな男と付き合ってんの?」
知らない男にそう声をかけられた。
「そこ気になっちゃいますぅ!?」
「え?」
「まず背が高いとこ。抱きしめられるとすっぽり包んでくれるんですよ!!」
「え、あ・・・・そう、なの?」
「あとバランスの良い筋肉!!たまりませんよ!!」
「・・・・そ、そう」
「厚ぼったい唇もセクシーだし!!」
「せくしー?」
「語尾も可愛いよい!!」
「よい?」
「あの個性的な髪形も勿論素敵ですけど!!」
「あれが!?」
「顎のお鬚がたまらんのですよ!!」
「え、君大丈夫・・・・?」
「それからさり気なくお洒落なところとか」
「お洒落?」
「眼鏡かけると色気が増すんですよ知ってます!?」
「いら知らんけど!!」
もういい、と男の人は去って行った。
もっと聞いて欲しかったのに残念。
「アコ」
「あ、おかえりなさいマルコさん」
「また変なのに絡まれてたみたいだねい」
席に戻って来たマルコさんは呆れ顔で私を見る。
「マルコさんの魅力を聞かれたのでばっちり答えておきました!!」
「聞いてたよい」
「聞いてたんですか?」
「最初から全部、ねい」
マルコさんは最初から全部聞いていたらしい。
そう考えると少し恥ずかしい。
「違うんですよマルコさんっあれが全部じゃないんですよ!!もっとあります!!」
あれだけが私のマルコさんへの思いだと勘違いして欲しくない。
マルコさんは私の必死な訴えにくくっ、と笑い声を漏らした。
「俺は幸せモンだよい」
「私も幸せです」
「可愛い恋人にこんなに思われてるんだ、俺の方が間違いなく幸せだよい」
「私だってこんな素敵なマルコさんが恋人なんですもん!!」
「俺にアコは勿体ないくらいだい」
「私にだって・・・・!!」
私は料理しか出来ない。
くわえて弱い。
体力もないし。
何で今モビーもとい海賊船に居られるのか不思議なくらい。
比べてマルコさんは強いし優しいしかっこいいし。
医学の知識まである。
こんな素敵な人が私の恋人だなんて今でも信じられない。
「そんな可愛い俺の自慢の恋人にも欠点があるよい」
「え、むしろ欠点まみれだと自負しておりますが」
「アコは自己評価が低すぎる」
「そう、ですかね・・・・?」
妥当だと思うんだけどな。
「気にならないかい?アコの欠点」
「とりあえず可愛くない、体力ない、弱い、ドジ、頭が悪い、我儘」
まだまだある。
「ははっ、すごいねい」
「まだまだありますよ」
「残念だがどれも不正解だい」
「えーそうですか!?」
「正解は欲がない、自分のことをよくわかってないとこの2つだ」
マルコさんは楽しそうに笑いながら正解を口にした。
「欲・・・・はありますけど」
「その割に恋人に何も買わせちゃくれねェだろい?」
「それは欲しいものがないからですよ」
「俺は可愛くて愛しい恋人をもっと甘やかしてェ」
残ったお酒を一気に煽ったマルコさんは少し寂しそうに呟く。
「もう十分甘やかされてますけどね・・・」
マルコさんがそういうなら考えてみよう。
「我儘なんて言われた覚えもねェんだよい」
「うーん・・・・・」
一生懸命考えていたら、
静かなバーがいきなり騒がしくなった。
ふと入り口を見ればもう相当飲んでいるんだろうな、という若い男性が2人入店したところ。
男性2人はこちらを見るなり、
「お姉さん可愛いじゃーん」
「そんなパイナップルのおっさんより俺らと飲もうよぉ」
声をかけてきた。
この島の人はマルコさんのこと知らないのかな。
「めっちゃ可愛くないですか私の恋人!?」
「は?」
「パイナップルのおっさんとか可愛すぎません!?最早チートですよね!!」
これはマルコさんの魅力を聞いてもらうチャンスね!!
「アコ、もういいよい」
「いいえダメです!!もし私からマルコさんを奪おうとするなら許しませんし」
そこではっと気づいた。
「・・・・たぶんマルコさんも許しませんよ、ね?」
ここで甘えを発動!!
「当たり前だろい?」
ちろりと横目で見ればマルコさんはニヤリと笑みを浮かべて2人の男性の腕を掴んだ。
「いでっ、いでぇ!!」
「確かに俺のアコは可愛い。俺には勿体ないくらいだが、お前らみたいなのにやるつもりはねェ」
「離せよ!!」
「まあ聞いて行けよい。アコの作る飯は美味いし疲れた時には珈琲を入れてくれるくらい気が利くんだよい」
「おい、聞かねぇよそんなの!離せって!!」
「座ったまま寝ちまった時はそっと毛布をかけてくれんだ、優しいだろい?」
「わ、わかったから!」
「いいやまだわかってねェ」
「もう俺たちが悪かったよ!!」
「俺のことを理解しようといつも努力してくれる姿勢はたまらなく愛おしいよい」
「ま・・・・マルコさん流石にそろそろ私が恥ずかしいです・・・!!」
「いつものお返しだよい」
「いや私そんな大層なものじゃ」
「言ったろい?自分のことをよくわかってないのが欠点だって」
「マルコさん・・・・!」
見つめ合った瞬間マルコさんの力が緩んだのか、
それともわざと緩めたのか。
「このバカップル!!そこで一生見つめ合ってろ!!」
という捨て台詞を吐いて男性2人は逃げて行った。
「バカップルですって。何か照れますね!」
「一生見つめ合ってる気はないけどねい」
「私は楽しいと思いますが」
「それじゃキスもそれ以上も出来ねェだろい?」
「あ、そうでした」
2人で顔を見合せて、笑い合って。
・・・私たちはバカップル。
幸せです。