短編⑤
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「たっだいまァ」
「・・・・・おかえり。今何時かわかる?」
「2時半だな!」
「そうね、夜中の2時半ね。で、今日あなたはメールで何て言ってた?」
旦那のシャンクスがべろべろに酔っぱらって帰って来たのは夜中の2時半。
期待はしてなかったけど、今日の昼間のメールでシャンクスは私に、
「定時で帰れそうだ、と書いたな」
「ですよね!!」
そんで今夜中の2時半よしつこいようだけど!!
「いやーすまんすまん、後輩から相談があるって泣きつかれちまってなァ」
真っ赤な顔でへらへら笑って。
「とりあえず今日のお弁当箱とハンカチ出して」
「おう。・・・・・・・ん?」
「ちょい」
玄関で鞄をごそごそ探るシャンクス。
お弁当箱はすぐに出てきたのにハンカチは見つからない様子。
「確かこの辺に・・・いや、このあたりだったか?」
「・・・・またなくしたの?」
シャンクスがハンカチをなくしたのは今日が初めてじゃない。
「いや今日はちゃんと持って帰ってきた、ような・・・?」
おかしいな、と首を傾げるシャンクスに深くため息を吐いた。
「もういいわ。さっさと着替えて水飲んで寝て。明日は休み?」
「ああ、朝はゆっくりだ」
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
ネクタイをしゅるりと解くシャンクスを見ながら、
「お風呂入っちゃダメだからね!!」
と念を押してベッドに入った。
・・・・まったく、私の旦那様ときたら。
会社ではバリバリ、
人柄も良くて仕事も出来て、
上司からも部下からも信頼が厚い素敵な人なのに。
・・・・そんなシャンクスに憧れる女子も多かった。
実際私もそんな女性の1人だった。
だからそんなシャンクスと付き合えて、
プロポーズされたときは本当に嬉しかった。
付き合ってる時もシャンクスは優しくて、
いつだって私を大事にしてくれた。
・・・今だって大事にされてないとは思わないけど。
シャンクスは私に結婚した後も働きたいなら働いてもいいと言ってくれた。
勿論専業主婦の道を選んでもいい、と。
仕事は大変だったけど楽しかった。
でもいつでも戻っておいで、という優しい上司の言葉に甘えて1度は専業主婦というものを経験したいと選択。
・・・・したのが間違いだったかしら。
いやでも家でのシャンクスがこんななら私が支えないと。
最近は特に飲みだなんだといって帰りが遅くなることが増えた。
持たせたハンカチをなくすことも多いし。
休みの日はごろごろ。
料理も得意じゃないと言って何もやってくれないし。
・・・・・・まあ掃除とかは手伝ってくれるけど。
考えながらうとうとしていたらシャンクスが入ってきて、
ベッドにもぞもぞと潜り込む音が聞こえた。
「アコ、起きてるか?」
「・・・・寝てる」
「ははっ、すまん。明日は休みだ、久しぶりに何処か出掛けるか」
「シャンクス疲れてるでしょ」
「構わねェさ。俺には日ごろ頑張ってくれてる奥さんを癒す方法がこれしか思いつかないんだ」
・・・・ほんっと、もう。
こういうとこ好き。
「有難う。じゃあ駅前のショッピングモール」
「何か欲しいものが?」
「ハンカチ」
「・・・・俺の?」
「そう」
「・・・・・すまん」
思い切り落ち込んだ声音に思わず噴き出した。
「あははっ、大丈夫よ。怒ってないから」
「俺は・・・本当にダメだな、アコが居ないと」
「はいはい、明日楽しみにしてるから。おやすみ」
「・・・・ああ、おやすみ」
なんて、何だかんだいい気分で眠りにつけたのに。
「・・・・・ちょっと」
「・・・・すまん」
次の日シャンクスの目が覚めたのは昼前。
私は朝からウキウキで準備してたのに。
・・・まあいっか、今からでも。
お昼ご飯は外で食べて、
シャンクスのハンカチ買って。
それから夕飯の食材買って。
・・・・たまには自分の服でも見ようかしら。
「朝ごはん食べたら行ける?」
「いや今から行こう。車出すよ」
「ダメよ。ちゃんと食べて。水分も」
「・・・・助かる」
何だかんだで久しぶりのデート。
だけど。
・・・・シャンクスは昨日からずっと謝ってばかり。
昨日からじゃない。
最近ずっと私に対しては顔色を伺うようで。
口を開けばすまん、ばかり。
私が言わせてる、のよね。
シャンクスにも勿論悪いところはあるけれど。
浮気もせず、ちゃんと稼いで。
私の家事に文句も言わずたまに手伝ってくれて。
・・・・ちゃんと素敵な人、なのに。
私が怒るから。
「待たせた、行こう」
「・・・・・ええ」
車に乗り込んで、ちょっと反省。
「どうかしたか?」
「ううん、楽しみなだけ」
「そうか!久しぶりのデートだからなァ」
「シャンクスも疲れてるのに、有難う」
久しぶりのデート、と嬉しそうにしてくれるシャンクスを見て私も嬉しくなった。
私は間違いなく愛されているのだと。
「礼を言わなきゃならねェのはこっちだ。いつも有難う、助かってる」
「その言葉で十分よ」
「最近夜が遅くなることも。悪いと思ってる」
ちらりとシャンクスが横目で私を見た。
「大丈夫。浮気なんて疑ってないから」
「心配ならスマホを見てくれていい」
「後輩君の相談に乗ってるんでしょ?大ポカやらかしたから」
「・・・・知ってたのか」
「もともと同じ会社で働いてたってこと忘れてない?」
シャンクスが会社で浮気でもしようもんならすぐに私のもとに連絡が来る。
「ハンカチは泣いた後輩に渡したってとこかしら」
「・・・参ったな」
驚いている、というよりは苦笑してるシャンクスに私も苦笑する。
「私の旦那様は優しすぎるのよね、誰にでも」
「私以外には、と言われなくて安心したよ」
「大丈夫。ちゃんと私にも優しい」
シャンクスは珍しく照れているらしい。
耳が少し赤くて、可愛い。
「・・・・愛してる、くらいしか言えねェが」
「有難う。私も愛してる」
「仕事に戻りたかったら戻ってもいいんだぞ?」
「いいわ、今のままで。もっとあなたを支えたいから。シャンクスが許してくれるなら」
「・・・・行き先を変更しても?」
「どこへ?」
「愛しい奥さんを喜ばせたいんだ。デパートでも」
「じゃあおそろいのハンカチでも買ってもらおうかしら」
「・・・絶対なくせないな」
「よろしくね。私の素敵な旦那様」
(あなたのただいま、が聞けることが嬉しいから)