短編⑤
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「クルーの偽物?」
「この間はサッチの偽物が出たんだってよ」
立ち寄った島でとある事件が起こった。
逗留して1週間ほどが過ぎた頃。
クルーの偽物が続々と現れているらしい。
エースがワクワクした顔で私に話しかけてくる。
「で、そのサッチさんの偽物は何したの?」
「女に手ェ出したんだってよ」
「それ本物じゃん」
「手ェっても怪我させた方」
「・・・・そりゃ偽物だわ」
サッチさんは絶対そんなことはしない。
「あとはハルタの偽物も出たって」
「ハルタ君は何したの」
「食い逃げ」
「それエースじゃん」
「違ェよ!!」
「じゃあエースの偽物も出るかもね」
「アコ騙されんなよ?」
「騙されないよぉ、私は」
胸を張った私にエースは怪訝な顔。
「やけに自信満々じゃねェか」
「自信あるからね」
「今の俺が偽物ってこともあるだろ?」
「ないね」
「何で」
「私の作ったお昼ご飯を美味しいと食べてる途中で寝たから」
そして先ほど目を覚ましてこの話題を口にしたから。
偽物ならまず食べてる途中で寝たりしないし。
「・・・町で会ったらわかんねェだろ」
「いーや、わかる」
自信満々な私にエースは何処か不服そうに眉を顰める。
何が不満なんだか。
「・・・わかるのは俺だけ、か?」
「え、どうだろ。たぶん皆わかると思うけど」
「・・・ふぅん」
「・・・・何?」
「アコは危なっかしいんだよなァ」
「つまり私の言うことが信じられないと?」
エースは私から目を逸らし、
「偽物に騙されて簡単に誘拐されそうじゃん」
「失礼だなエース」
「・・・だから、今度出る時は俺連れてけよ」
・・・つまりエースがさっきから言いたかったのはこのことかもしれない。
私が心配だから、
町に行く時は自分が一緒に行く、と。
でもエースの方が簡単に騙されそうな気もするんだけど。
そんなこと言ったら怒られちゃいそうだから黙っておこう。
「・・・うん、わかった」
「絶対1人出るなよ!?」
「エースもね」
「俺は平気だ」
「エースはあれだよ、お肉の匂いに騙されちゃうでしょ」
「騙されたとしても負けねェ」
騙されるとこは否定しないんだ!?
「はいはい。じゃあ明日ちょっと買い出し付き合ってくれる?」
「おう、任せとけ」
なんてことがあって、
エースと買い出しに来ている今。
「あとは?」
「だいたいのものは初日にサッチさんと行ってるからあとは大丈夫かなぁ」
「んじゃあ飯でも食いに行こうぜ」
「そうだね」
そうしよっか、とお昼ご飯に向かって歩いていた時だった。
「エース、今いいかい?」
「マルコ?何だよ。今からアコと昼飯食いに行くんだ」
邪魔すんなよな、と空腹を訴えるエースの前に現れたマルコさん。
「アコに用事があってよい、借りていっても?」
「え・・・マルコさんが私にご用事ですか?」
「じゃあ俺も行く」
「お前は腹減ってんだろい?飯くらい1人で行けるだろい」
「・・・・いや、でもよ」
エースがちらりと私を見る。
「本当に本物のマルコさんなら行きますけど」
「・・・・・俺は本物じゃないとでも?」
マルコさんの眉間にしわが寄った。
こういうとこはちゃんと本物っぽいんだけどな。
「本物なら不死鳥になってみてくださいよ」
「こんな街中で出来る訳ねェだろい」
この言い訳もそれっぽい。
「アコ、やっぱこいつマルコじゃねェよな」
エースも怪しいと思っていたらしい。
マルコさんの姿をしたものを睨みつける。
「うん、偽物だね」
私が頷くと同時にマルコさん(偽物)が逃げた。
「あ、待てこのやろ!!」
エースがそれを追いかける。
荷物を持ったまま。
・・・・ま、いっか。
取り残された私1人。
エースが帰ってくるのを待つしかない。
なんて思ってたらすぐにエースの姿が見えた。
「逃げられちまった」
逃げ足早いぜあいつ、なんて笑って。
「お疲れ様。ご飯行く?」
「飯もいいけど、俺アコが食いたい」
にっこり笑顔でエースが突然呟く。
「・・・・何言ってんの」
「なあ、ダメか?」
「ダメに決まってるでしょ気持ち悪い」
「ははっ、ひでェな!」
「ひどいのはそっちでしょ。マルコさんの次はエースに成りすますなんて」
厳しい口調で問い詰めれば、彼の顔から笑みが消えた。
「・・・へェ、俺が偽物だって?」
「違うって言うなら火出してみてよ」
「何でわかった?さっきも今も」
「わかるわよ。見くびらないで」
本物のエースは何処まで行ってしまったのか。
あんなに私のことが心配だと言ってくれたのに。
・・・・さてどうしよう。
私1人で勝てる相手なんだろうか。
「とは言え、この姿の俺に手なんて出せないだろう?」
「そう思う?」
「え?」
とりあえず思い切りグーパンチをかましてみた。
あ、意外とイケそう。
「いっつもいっつも盗み食いされてストレス溜まってんのよこっちは」
「いや俺じゃない!!」
「知ってるけど」
エース本人じゃ殴らせてくれないし。
「てめェふざけ、」
激昂した男が私に殴り返そうとした矢先、
男は再び殴り飛ばされた。
しかも今度は結構強く、遠くまで。
「あらあ」
「あいつ偽物だからなアコ!」
そう言って私の隣に立ったのは、本物のエース。
「うん、知ってる」
「俺が・・・本物だからな」
「知ってる」
「あんなのと一緒に飯なんか行くなよ!?」
「行かないって」
そしてエースはもうほぼ意識のない男に向かって、
「アコは俺んだから絶対手出させねェ」
と言い切った。
「・・・・・エース」
「・・・・・あ、いや今のはそういう意味じゃ、いや意味だけど!!」
それから顔を真っ赤にしてしどろもどろ。
「ありがとね、エース。助けてくれて」
「・・・・おう。でも何で俺ん時もマルコん時もわかったんだよ?」
エースが不思議そうに首を傾げる。
「わかるよ。だって匂いが違うもの」
「匂い?」
「マルコさんからは医薬品の匂いがする」
「俺は?」
「食べ物と汗の混じった匂い。あと太陽みたいなのも」
「・・・・へェ、そっか」
エースは少し照れたように笑った。
私は皆の匂いがわかるから。
だから絶対に騙されない自信がある。
「じゃ、ご飯行こっか」
「そ・・・その前に、言いたいこと、あんだよ」
「うん」
「・・・・好きだ、アコ」
「うん、私も好き」
あとから聞いた話では、
皆を装ってた偽物は、海賊なら悪いことしてもいいだろうと企んだ悪魔の実の能力者の仕業だったらしい。
主に女の子を襲おうとしたらしいけど。
私たち相手に騙そうなんて100年早いのよね。