短編⑤
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季節のうつろいなんざ、前はたいして興味もなかったもんだが。
見上げては舞い散る桜の花びらにこみあげてくるものを感じる。
悪くない。
周りを見れば楽しそうな仲間の顔。
より一層酒が美味くなるってもんだ。
花見見物、と理由にかこつけてのどんちゃん騒ぎ。
「おいおいいいのか、そろそろ帰らなくて」
「ん?」
「可愛い嫁さん置いてきてんだろ」
「ああ、そうだな」
そういえば明日は結婚記念日だったな。
まだ宵の口ではあるが、仕方ない。
早々に帰るか。
アコの待っている家に帰ろう。
「悪いな、可愛い妻の待つ家に帰らせてもらうよ」
「おーおー惚気がすごいねえ」
「だっはっは!じゃあな」
良い気分で家に戻って、唖然とした。
「・・・・アコ?」
返事がない。
どころか、居る気配すら感じない。
どういうことだ?
買い物、って訳じゃなさそうだが。
部屋の中をくまなく探して見えたものは絶望だった。
「・・・・嘘、だろうアコ」
リビングの、テーブルの上に置かれた指輪と1枚の紙。
「離婚届、だと・・・?」
そして小さいメモ。
新しい彼女は大切にするように。
確かにそう書かれていた。
落ち着け、考えろ。
そう自分に必死に言い聞かせる。
新しい彼女?・・・誰のことだ。
そんな存在に心当たりはない。
今回の花見に関しても女は居なかった。
ならば、と自分のスマホを確認する。
何かヒントがないか、と手当たり次第に触り、
思わず叩きつけた。
そこにあったのは見覚えのない写真、メール。
明らかに加工されている俺と昔の恋人の。
そして送った覚えのない、
目を背けたくなるようなアコへの暴言の文面。
なるほど、そういうことか。
自分の甘さに吐き気がする。
叩きつけたスマホを再び手に取り、
仲間に連絡をとった。
アコを見かけたら連絡をして欲しい旨と、もう1つ。
そして俺は急いで外に出た。
『嫌なことがあるとここに来るの』
と寂しそうに笑いながら教えてくれたことがあった。
この町に存在する1番高いビルの屋上。
夜景の綺麗な場所。
そこにアコは、
「アコ!!」
・・・・居た。
震えてる背中を見ればわかる。
泣いているんだろう。
俺の声に反応したアコは驚きながら振り返り、
俺を確認すると涙目で逃げようとした。
慌てて腕を掴む。
「アコ、待ってくれ」
「離してシャンクス」
「離さない」
「・・・・いいじゃない、好きでもない女なんか放っておけば」
「俺が愛してるのはお前だけだ、アコ。信じてくれ」
「あんなに酷いことを言っておいて?」
あれは俺じゃない、と言って信じてもらえるだろうか。
「・・・・すまない」
「嘘」
「・・・いや、俺は本当に」
「あのメールシャンクスが書いたんじゃないのよね」
「・・・知ってた、のか」
「何となく。あの写真も加工かな」
「なら何故」
「どのみちあの女の人にシャンクスのスマホ触らせなかったら出来ないことでしょう」
つまり接触する機会があったのだと、
アコの言いたいことはわかる。
「・・・同窓会の、時に」
「そうでしょうね。嫌がらせが始まったのもその頃からだった」
「すまない、気づけなかった」
「言わなかったもの、私も」
でもね、と再びアコの瞳から大粒の涙が溢れた。
「でも・・・それでも疑っちゃうの。シャンクスも本当はこう思ってるのかもって」
ブスで気が利かなくて。
つまらない女、って。
そう言って泣き始めたアコを強く抱きしめた。
「そんなことを思ったことは1度もない。信じてはくれねェか」
「信じたい、けど」
「・・・・明日は、結婚記念日だな」
「・・・・そう、だったね」
「アコの行きたがってた店を予約してある」
「え・・・」
「実はサプライズでプレゼントも用意してあるんだ」
「それバラしちゃったらサプライズにならないやつ・・・」
「構うものか。アコの為ならまた別のサプライズを用意するさ」
「有難うシャンクス・・・っ」
2人で家に戻り、
アコの指に指輪を戻した。
「ごめんね、シャンクス。・・・本当に、私・・・・っ」
「こうして戻ってきてくれただけで十分だ。愛してる」
ちゅ、と軽いキスを送ればくすぐったそうに笑うアコが可愛くて。
そのまま抱き上げて寝室まで運んだ。
「・・・シャンクス?」
「嫌か?」
ふるふる、と首を横に振ったのを確認して、
アコに覆いかぶさった。
「俺が愛してるのはアコだけだ」
深い口づけを交わし、
安心させるように髪を撫で。
その手を下へ下へと移していく。
胸元、
腰、
足。
「・・・ん・・・っ」
「声、出してくれ。聞きたい」
「でも・・・ひ、ぁ」
「もっとだ」
「は・・・・ん」
「こんなに可愛いアコを俺が手放す訳ないだろう?」
「しゃん・・・っあっ」
「・・・・・もっと、聞かせてくれ」
「これを登録しておいてくれ」
「・・・・何これ?」
「俺の新しいスマホの連絡先だ」
「え!?」
万が一また乗っ取られたりでもしたら大変だからな。
「そこまでしなくても・・・」
「出来る限りのことはするさ」
「・・・あの人は」
「今頃何処かの無人島にでも飛ばされてるんじゃないか?」
「・・・・・シャンクスって本当に怖い人よね」
敵に回したくない。
と苦笑する彼女に、
「俺がアコの敵になることなどありえんよ」
と笑っておいた。
窓辺を見れば桜が散り始めたのが見える。
「今夜は美味い酒が飲めそうだ」
エースver
↓
↓
↓
↓
↓
「肉もっとねェの?」
「お前ほんっと花より団子だよな」
見ろよこの桜を。
とサッチに呆れられた。
確かに桜は綺麗だ。
昔なじみの仲間たちとの恒例の花見。
と言う名の宴会。
桜も綺麗だし酒も美味いし肉も美味い。
ここにアコが居りゃあなァ。
一緒に行かないかと誘ってはみたものの、
私はいいから行ってきなよ、と追い出されちまったんだよな。
「ほら酒追加」
「肉は」
「お前がほぼ食い尽くしたんだよ」
「そうだっけか」
「んなことよりお前それ飲んだら帰れよ」
「まだいいだろ」
宵の口なんだし。
まだ食い足りないし。
「んなこと言ってお前、明日があんだろ」
「明日?」
「アコちゃん怒るぞ」
「あーアコの作ったモン食いてぇな」
「バカ。そのアコちゃんとの結婚記念日だろ明日は」
「あ」
やっべェそうだった!
「わり、帰るわ!」
飲んでた酒のグラスを置いて急いで帰り支度を済ませ、
まだ飲んでる仲間を置いてその場を後にした。
結婚記念日かァ。
・・・・何かした方がいいよな。
アイツなんか欲しいモンとかあるかな。
今日の花見でほったらかしにしちまったぶん何かしねェとな。
何てそわそわしながら帰宅。
「ただいまァ」
普段ならここでおかえり、の一言もあるもんだが。
・・・・静かだな?
「アコー?」
暗い部屋。
物音1つしない静かな空間。
・・・・なんだ、これ。
リビングのテーブルに置かれていた紙。
離婚届ぇ!?
・・・・と、
「・・・・何だよ、これ」
指輪。
「新しい彼女はちゃんと大切にするんだよ!」
とのメモ書き。
新しい彼女?
「・・・・はァ!?新しい彼女ォ!?」
誰だよそいつ!
知らねェよ!!
慌ててアコに連絡をとろうとスマホを手にして、
間違えてアルバムを開いてしまった。
「あ、やべ間違え・・・・た・・・」
そこには俺の知らない写真が入っていた。
「あ?何だこれ・・・」
俺と、前の女との2ショット。
こんなの撮った覚えねェし、何なら日付も最近だな?
・・・・前にこいつと会ったのは1か月前で、
そん時確かスマホ交換して連絡先教え合ったくらいで。
おいおい、まさか。
メールの履歴を見れば案の定。
どうやったんだかは知らないが俺のスマホを使ってアコ宛に覚えのないメールが送られていた。
「っざけんな・・・・」
ふつふつと沸き上がるのは怒り。
何より誰よりも自分への怒りでしかない。
何で今まで気づかなかったんだ。
今日だって笑顔で送り出してくれたのに。
そのままサッチに電話をかけた。
「悪ィサッチ、緊急事態だ!」
とりあえず事情を軽く話して、
急いで外に出た。
試しにアコに電話をかけてみるも繋がらねェ。
こんな時アコなら何処に居る?
えーと、えーと。
考えろ。
「あそこしかねェな・・・・っ」
頼む、居てくれ。
必至に願いながら走って走って、
「アコ・・・!」
夜の、誰も居ない公園。
誰も居ない公園ってノスタルジックで癒されるんだよね、と笑っていた姿を思い出す。
そこのベンチにアコは座って泣いてた。
「あ・・・」
アコは俺に気が付くと立ち上がって背を向ける。
咄嗟に逃げられないように、
腕を引いて閉じ込めた。
「なんっでエースがここに居るの!?」
「何でってそりゃお前、アコが勘違いしてっから」
「意味わかんない!離して!新しい女のとこ行きゃいいじゃん!」
「行かねェよ。何処だよ新しい女のとこって。つーか誰だよ」
「写真の人」
「ありゃ加工だ」
「エースそんなことしてたの!?気持ち悪い!」
「バカ俺じゃねェよ!ついでにメール送ったのも俺じゃねぇ」
「嘘つきー!!」
「嘘じゃねェよ、考えてもみろ。俺あんな長文送ったことあったか?」
腕の中で泣きわめいていたアコがぴたりと大人しくなった。
「・・・・なか、った」
「だろ。あんな難しい漢字読めもしなきゃ書けねェよ」
「・・・・それもそう」
「な?俺じゃねェ」
「じゃあ誰が・・・写真の人?」
「ああ」
頷けばずるずるとへたり込んだ。
「私の覚悟返してよぉ・・・・」
「んな覚悟すんな。・・・しなくていい、もう2度と」
「私はエースに幸せでいて欲しいから!」
「じゃあ側に居ろ。ずっと」
「・・・・うん・・・ごめん・・・」
「俺も気づけなくてごめんな。愛してんのはお前だけだ」
落ち着いたアコと家に戻り、
「何か腹減ったな・・・」
ひと段落、となったら腹が減って来た。
「あ、じゃあ私騒がせたお詫びに何か作るよ」
と再び結婚指輪をはめたアコにむらっときた。
「飯もいいけどその前にまずアコが喰いたい」
「え、あ」
噛みつくようにキスをして、
そのままソファに押し倒した。
「な、いいだろ」
「・・・・んもう」
手に収めた胸の心地良さ。
「・・・またでかくなったか?」
「エースがいっぱいシたがるから・・・ぁ」
「たまんねー」
「や、ぁ、も・・・」
胸はけっこうあんのに腰は細いし。
「・・・脱がせていいか?全部」
「ヤダって言っても脱がすでしょ」
「・・・まァな?」
「は、ぁ・・ん・・・ぁあっ」
「俺が愛してんのはアコだけだからな」
「・・・ん」
もう2度とこんな目には遭わせねぇ。
写真の女は昔の女だと説明したらアコは憤慨していたけど、
結婚記念日だからと飯を作ったら喜んでくれた。
その日は一緒に過ごして、
次の日。
サッチに頼んであった、今回の犯人とご対面。
「ちょっとした出来心だったの。でももうしない。あんたの嫁には敵わないもん」
「当たり前だろ。あいつに敵うとこなんかあるもんか」
「・・・あんた、知ってる?」
「何が」
「私がアンタのフリして酷いこと書いた時、お前も俺のこと嫌いだろって送ったのよ」
「・・・あいつ、なんて?」
「私はエースのこと好きだよ、大好き、だって」
「・・・・ははっやっぱ俺にはアコしかいねェや」
「エースのことは私が幸せにしたいから、離れるから安心してねってさ」
「俺の嫁最強、だろ」
「バカ夫婦。・・・ごめんね、本当に」
「もうすんなよ!」
もうしないよ、と笑ったあいつを見て。
アコに会いたくなった。
そろそろ桜が散る頃だ。